公差はどこまで厳しく書けばよいか|必要以上に厳しい公差が費用と納期を押し上げる理由
図面に公差(寸法の許される誤差の幅)を書くとき、「念のため厳しめに」と考える方は少なくありません。ところが加工する側から見ると、公差の数字は「どの機械で、何回に分けて削り、何で測るか」を決める指示そのものです。数字が一桁厳しくなるだけで、作り方がまるごと変わることがあります。
結論から言うと、公差を厳しく書くのは「相手部品とはまり合う」「位置を決める」「漏れを止める」「すべり合う」といった、機能を左右する寸法だけで十分です。それ以外は一般公差(図面に個別の指示がない寸法に当てはめる標準の許容差)に任せるほうが、品質を落とさずに費用と納期を抑えられます。
この記事では、部品を外注する発注担当者・設計者の方に向けて、厳しい公差がなぜ費用と納期を押し上げるのか、どこまで厳しく書けばよいかを決める考え方、図面への書き方のコツを整理します。神奈川県横浜市都筑区で精密機械加工を行う加工メーカーとして、検査治具やゲージを作ってきた経験と、実際にあったご相談をもとにお伝えします。

目次
そもそも公差とは何か
どんな機械でも、図面の数字ぴったりに削ることはできません。必ず少しずれます。そのずれをどこまで許すかを決めるのが公差です。たとえば「20±0.1」と書けば、19.9mmから20.1mmまでが合格になります。
寸法公差と幾何公差の違い
公差には大きく2つの種類があります。
| 種類 | 何を決めるか | 図面での書き方の例 |
|---|---|---|
| 寸法公差 | 長さ・直径・穴の大きさなど、数字のずれ | 20±0.1、φ20H7 |
| 幾何公差 | 形・向き・位置のずれ(平らさ、平行、直角、同じ軸に乗っているか など) | 平面度、平行度、直角度、同軸度、円筒度、位置度 |
寸法が公差に入っていても、面が反っていたり穴が傾いていたりすれば、部品は組み付きません。一方で、幾何公差を細かく指示するほど、それを満たす加工と、それを確かめる測定が必要になります。寸法公差も幾何公差も、厳しく書くほど手間が増える点は同じです。
一般公差——個別に書かない寸法の受け皿
すべての寸法に公差を書くのは大変です。そこで日本では、JIS B 0405(普通公差)で、個別の指示がない長さ寸法の許容差が等級ごとに決められています。表題欄に「JIS B 0405-m」のように等級を書いておけば、公差を書いていない寸法にはその等級が当てはまります。
| 寸法の区分 | 精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) |
|---|---|---|---|
| 0.5mm以上 3mm以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.2 |
| 3mmを超え 6mm以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.3 |
| 6mmを超え 30mm以下 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.5 |
| 30mmを超え 120mm以下 | ±0.15 | ±0.3 | ±0.8 |
| 120mmを超え 400mm以下 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.2 |
| 400mmを超え 1000mm以下 | ±0.3 | ±0.8 | ±2 |
※単位はmm。JIS B 0405 の長さ寸法の普通公差(面取り部分を除く)から抜き出したものです。0.5mm未満の寸法は個別に指示します。形や位置のずれについては、JIS B 0419 に普通幾何公差の等級があります。
同じ中級でも、長い寸法ほど許容差は大きくなります。大事なのは、等級を図面に書いておくことです。等級の記載がないと、加工先によって解釈が分かれます。当社では、等級が書かれていない図面をお預かりしたときは、発注前に確認させていただいています。
なぜ厳しい公差は費用と納期を押し上げるのか
公差を厳しくすると、加工する側では次の5つが変わります。どれも、機械の時間か人の時間に直結します。
| 変わること | 加工の現場で起きること |
|---|---|
| 加工方法 | 切削(刃物で削る加工)だけでは届かず、研削(砥石で削る加工)やワイヤーカット(細い電線で切る放電加工)での仕上げが加わる |
| 工程と段取り | 荒削りと仕上げを分け、途中で測りながら追い込む。部品のつかみ直しも増える |
| 温度の扱い | 材料や測定機の温度がそろうのを待ってから、仕上げ・測定をする |
| 測定と検査 | ノギスでは足りず、三次元測定機などで測る。測る箇所も時間も増える |
| 外注の工程 | 自社で仕上げきれない精度は、治具研削(高精度な穴や外形を砥石で仕上げる加工)などの協力工場へ。行き来の日数が加わる |
加工方法が変わる
刃物で削る切削加工は、形を速く作るのが得意です。一方で、μm(1000分の1mm)単位の寸法や平らさを安定して出すには、研削のような仕上げの工程を足すのが確実です。マシニングセンター(工具を自動で替えながら削る機械)だけで終わっていた部品に、研削盤やワイヤーカットの工程が加わる。これが、費用と日数が増えるいちばん大きな理由です。
工程と段取りが増える
厳しい寸法は、一度で削り切らずに、荒削り・中仕上げ・仕上げと分けて追い込みます。削ると材料の内部にたまっていた力が抜けて形が動くため、いったん荒削りして落ち着かせてから仕上げることもあります。また、部品をつかみ直すたびにわずかな位置ずれが生まれるので、基準の取り直しにも時間を使います。
温度の影響を無視できなくなる
金属は温度で伸び縮みします。アルミの線膨張係数(温度1℃あたりの伸びの割合)はおよそ23×10⁻⁶/℃で、長さ100mmなら、1℃変わるだけで約2μm伸び縮みします。鋼でもその半分ほどです。±0.001mm(±1μm)のような公差になると、加工直後の熱や手の温度だけで合否が変わりかねません。そのため、材料と測定機の温度がそろうまで待ってから測る、といった時間が必要になります。

測定と検査に時間がかかる
公差は、測れて初めて保証できます。±0.1mmならノギスで確かめられる寸法も、±0.005mmになると、測定機と測り方を選ばなければなりません。円筒度(円筒の形のくるい)のような幾何公差は、どの高さの断面を何点測るかで結果が変わることもあります。測る箇所が増えれば、検査成績表(測定結果を数値でまとめた書類)を作る時間もそれだけ増えます。
外れたときの作り直しを見込む
公差の幅が狭いほど、外れる可能性は上がります。加工する側は、外れたときの作り直しの材料と時間も考えて見積もります。図面から読み取れない部分が多いほど、この「念のため」の上乗せは大きくなります。見積がふくらむ仕組みについては、その見積依頼、加工先に正しく伝わっていますかや切削加工の費用相場と見積書の読み方でも扱っています。
公差はどこまで厳しく書けばよいのか——3つの問いで決める
では、どの寸法を厳しくし、どれを一般公差に任せればよいのか。迷ったときは、寸法ごとに次の3つを問いかけてみてください。
問い1:その寸法は、何と接するか
相手部品とはまり合う穴や軸、位置を決めるピン穴、基準になる面、Oリングが当たるシール面、すべり合う面。こうした「相手がいる寸法」は機能に直結します。逆に、外形の大きさ、ボルトを通すだけの逃げ穴、軽くするための肉抜きなど、何とも接しない寸法は、一般公差で足りることがほとんどです。
問い2:ずれたら、何が起きるか
組み付かないのか、がたつくのか、漏れるのか、見た目が少し違うだけなのか。起きることが重いほど、公差を厳しくする意味があります。「ずれても困らない」寸法に厳しい公差を付けると、費用だけが増えます。
問い3:その公差を、誰がどうやって測るか
受け入れのときに自社でどう確かめるか。加工先はどう測るか。測る手段のない公差は、書いても確かめようがありません。厳しくする寸法を決めたら、測り方と、どの寸法を検査成績表に載せるかもいっしょに決めておくと、加工先との食い違いが起きにくくなります。
| 寸法の種類 | 公差の考え方 |
|---|---|
| はめあい部(軸と穴、ベアリングが入る穴など) | 相手部品と合わせて、公差記号で指示する |
| 位置決めの穴・ピン穴 | 基準からの位置を厳しく。ほかの穴は一般公差でよいことが多い |
| 基準面・取付面 | 平面度・直角度などの幾何公差で指示する |
| シール面・すべり面 | 面粗さと平面度をあわせて指示する |
| 外形・逃げ穴・肉抜き・面取り | 一般公差に任せる |
はめあいの寸法は、なぜ公差記号で書くとよいのか
軸と穴がはまり合う寸法は、「φ20H7」「φ20h6」のように公差記号で書く方法があります(JIS B 0401)。記号で書くと、すき間ができるのか、きつくはまるのかという設計の意図が、加工先にそのまま伝わります。
| 表記 | φ20のときに許される範囲 | 幅 |
|---|---|---|
| φ20H7(穴) | 20.000〜20.021mm | 0.021mm |
| φ20h6(軸) | 19.987〜20.000mm | 0.013mm |
| φ20h9(軸) | 19.948〜20.000mm | 0.052mm |
同じφ20の軸でも、h6とh9では許される幅が4倍ほど違います。h9で足りる軸をh6で指示すると、旋盤で削ったあとに研削が要るかどうかの分かれ目になりえます。
もう一つの方法は、相手部品の実物を測ってから、それに合わせて仕上げることです。相手が手元にあれば、図面の数字だけで追い込むより、確実に組み付けられる場合があります。相手部品を加工先に貸し出す意味については、加工先を切り替えた直後に起きる品質トラブルでも書いています。
必要以上に厳しい公差は、どんなときに図面に残るのか
設計者の方が意図して厳しくしているとは限りません。次のような場面で、必要以上の公差が図面に残ることがあります。
- 前の図面を流用した…別の用途で必要だった公差が、そのまま残っている
- 全寸法に同じ公差を一律に付けた…「念のため」が全体に広がり、本当に効かせたい寸法が分からなくなる
- 3Dモデルから寸法を書き出しただけ…どこを厳しくするかの判断が抜けている
- 小数点以下の桁数で公差を表す社内ルール…社内では通じても、社外の加工先には伝わらないことがある
- 面粗さや幾何公差も全面に同じ指示…機能に関係のない面まで、細かい面粗さを求めている
面粗さ(表面の細かな凹凸の大きさ)の指示も、公差と同じく工程と検査に響きます。考え方は表面粗さRa・Rzとは何か?にまとめています。
図面に書くときの5つのコツ
1. 表題欄に一般公差の等級を書く
「JIS B 0405-m」のように等級を明記するだけで、個別に書いていない寸法の解釈がそろいます。形や位置のずれも普通公差で済ませたいなら、JIS B 0419 の等級をあわせて書きます。
2. 厳しくする寸法に、理由を一言添える
「相手部品とはめあい」「この穴で位置決め」と添えるだけで、加工先は基準の取り方と段取りを決めやすくなります。どの面を基準にすればよいかが分かれば、つかみ直しの回数を減らせることもあります。
3. 緩めてよい箇所は、図面か文書で伝える
打ち合わせで「ここは緩くていい」と決まったら、図面に書き込むか、メールなどの文書に残してください。口頭だけでは、担当者が代わったときや次の発注のときに伝わりません。決めたことの残し方は、発注の担当者が代わると、なぜ部品の品質が揺れるのかでも扱いました。
4. 「狙いの値」と「合否の基準」を分けて考える
試作や開発の段階では、「できるだけこの値に近づけたいが、外れても使える」という寸法があります。その場合は、図面の公差を検査の合否の基準にするのか、狙いの値として扱うのかを、発注のときに決めておくと話が早く進みます。
5. ミクロン単位の寸法は、測る条件まで決めておく
μm単位の公差は、測るときの室温、材料を置いてなじませる時間、測定機の種類で値が変わります。「どの条件で測った値を合格とするか」を先に決めておくと、受け入れ検査で数値が合わないという食い違いを防げます。
公差のご相談先として選ばれる5つの理由
厳しい公差の部品を任せるとき、加工先に何があると安心できるか。株式会社関東精密がお客様から選んでいただいている理由を、5つに整理しました。
理由1:三次元測定機などによる測定と検査成績表
ハンディプローブ式三次元測定機と画像寸法測定機 IM-8000(いずれもキーエンス製)で、μm(1000分の1mm)単位の測定を行います。平面度・平行度・傾斜度・同軸度・同芯度といった幾何公差はダイヤルゲージで測り、必要に応じてノギスやシリンダーゲージでの手作業の検査も行います。お客様の検査基準をもとに検査成績表を作成し、図面に添付して納品することも可能です。詳しくは品質管理のページをご覧ください。
理由2:図面1枚・1個からの試作
図面1枚・1個からお受けします。厳しい公差の部品も、まず1個作って測定結果を見てから次を決める、という進め方ができます。数量は1000点以上まで対応可能です。
理由3:検査治具・ゲージづくりで培った、積算誤差を抑える加工
当社は創業時から、さまざまなゲージや検査治具を製作してきました。組み立てたときに精度が保てるよう、部品一つ一つの精度を高く仕上げ、積算誤差(部品ごとの誤差が積み重なったずれ)を少なく抑える加工を長年続けています。どの寸法が組み立ての精度を決めるのかを、部品単体ではなく組み付いた姿から考えられるのが強みです。
理由4:同時5軸加工・研削・ワイヤーカットの設備と、約100社の提携ネットワーク
同時5軸マシニングセンター マザック VARIAXIS C-600をはじめ、5軸・4軸・3軸マシニングセンター、NC旋盤、平面研削盤、成形研削盤、ワイヤーカット放電加工機を備えています。対応寸法は角物が最小10mmから最大X1000×Y500×Z500mm、丸物がφ400まで、重量20kgまで。材質はアルミ、ステンレス、各種鋼材、チタン、インコネル、超硬、樹脂に対応します。自社で仕上げきれない精度や工程は、治具研削・熱処理・メッキ・板金・大物加工など約100社の提携先とともにお引き受けします。設備の一覧は設備のページにあります。
理由5:横浜・神奈川の立地による小回り
神奈川県横浜市都筑区に工場があります。横浜市・川崎市・相模原市から東京都近郊のお客様を中心にお取引をいただいており、図面を前にした公差の打ち合わせや、相手部品の受け渡しにも直接うかがえる距離です。
よくあるご質問とまとめ
公差の書き方について、よくいただくご質問をまとめました。
Q. 図面に公差を書いていない寸法は、どう仕上がりますか
A. 表題欄に書かれた一般公差の等級に従って仕上げます。等級の記載がない場合は、発注前に確認させていただきます。
Q. どの寸法を厳しくすればよいか、自分では判断がつきません
A. 部品が装置のどこで、何と組み付くかを教えていただければ、効かせるべき寸法をいっしょに整理します。図面が固まる前のご相談でも構いません。
Q. 公差を緩めると、品質が下がりませんか
A. 機能に関係する寸法を厳しいまま残し、関係しない寸法だけを一般公差に戻すのであれば、部品としての働きは変わりません。変わるのは、加工と検査の手間です。
Q. 厳しい公差が付いた図面のままでも、見積もりしてもらえますか
A. はい。図面どおりに仕上げる前提でお見積もりします。価格や納期がご希望に合わない場合は、公差の見直しをご提案することがあります。採否はお客様のご判断です。
Q. ±0.001mmのような公差にも対応できますか
A. 1/1000mmの精度のご要望にも、全力でお応えします。ただし材質・形状・大きさによっては、測定の条件を決めたり、1個目をテスト加工としたり、公差の考え方をご相談したりすることがあります。
Q. 平面度や同軸度などの幾何公差も測ってもらえますか
A. はい。平面度・平行度・傾斜度・同軸度・同芯度はダイヤルゲージで、形状や位置は三次元測定機で測定します。
Q. 検査成績表は付けてもらえますか
A. お客様の検査基準をもとに作成し、図面に添付して納品できます。どの寸法を載せるかは、発注のときにご指定ください。
Q. 打ち合わせで「ここは緩くてよい」と決めました。どう残せばよいですか
A. 図面に書き込むか、メールなどの文書でお知らせください。口頭だけだと、次の発注や担当者の交代のときに伝わらなくなります。
Q. 樹脂の部品でも、考え方は同じですか
A. 考え方は同じです。ただ、樹脂は温度や湿気で寸法が動きやすいため、金属と同じ桁の公差が合わない場合があります。使う温度や環境を伺ったうえで、公差の見直しをご相談します。
まとめ——公差は「機能に効く寸法」だけ厳しく
公差の数字は、加工の方法、工程、測定、検査の手間をそのまま決めます。厳しくするほど研削などの工程が加わり、温度をなじませる時間や測る時間が増え、外れたときの作り直しも見込むことになります。
どこまで厳しく書くかは、何と接するか、ずれたら何が起きるか、誰がどう測るかの3つで決められます。はめ合う寸法は公差記号で書き、相手部品が手元にあるなら実物に合わせる方法もあります。それ以外は、表題欄に一般公差の等級を書いて任せる。それだけで、品質を落とさずに費用と納期を抑えられます。
株式会社関東精密は、三次元測定機による数値での確認と検査成績表のお渡し、図面1枚・1個からの試作、約100社の提携先を使った一貫対応で、厳しい公差の部品にもお応えしています。「この公差は本当に必要か」と迷っている段階でも、まずは図面を見ながらのご相談だけでも構いません。
企業名: 株式会社関東精密
住所: 神奈川県横浜市都筑区池辺町4826-2
電話: 045-534-5427
公式サイト: (https://kanto-seimitsu.jp/)












