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図面はどの形式で渡せばよいか|精密部品を新しい加工先へ移管するときの2D図面・3Dデータの渡し方

開発、設計
2026.10.12

加工先を新しくするとき、最初に送るのが図面です。ところが「どの形式で送ればよいか」を確認しないまま送ってしまい、後から作り直しになることがあります。

結論から言うと、2D図面と3Dデータの両方をお送りいただくのが、いちばん早く正確です。どちらか一方しかない場合は、公差(寸法の許容できるずれ)が書き込まれている2D図面を優先してください。3Dデータだけでは、どこをどこまで厳しく仕上げるべきかが分かりません。

この記事では、2D図面と3Dデータの役割の違い、データ形式ごとの向き不向き、紙の図面しかない場合の進め方、そして渡すときに一緒に伝えていただきたいことを整理します。神奈川県横浜市都筑区で精密機械加工を行う加工メーカーとして、実際に図面を受け取る側の立場から書きました。

CAD画面に表示された部品の3Dモデル。確認箇所が赤と緑で囲われている
3Dデータ上で形状を確認しているところ。赤で囲った箇所は、工具が届くかどうかを見ています

2D図面と3Dデータは、役割がまったく違う

どちらか一方があればよい、と思われがちですが、加工先が見ている中身は別物です。

項目 2D図面(紙・PDF・DXFなど) 3Dデータ(STEP・IGESなど)
分かること 寸法、公差、表面粗さ、材質、熱処理、表面処理の指示 形そのもの。曲面やすき間の関係
分からないこと 複雑な曲面の形が読み取りにくい 公差が入っていない。どこを厳しく仕上げるべきか分からない
加工先での使い道 見積もり、検査基準づくり、仕上げの判断 CAMでの工具の経路づくり、干渉(工具がぶつからないか)の確認
これだけで加工できるか 形が単純なら可能 原則できない(公差が分からないため)

要するに、3Dデータは「形」を、2D図面は「どこまで正確に作るか」を伝えるものです。どちらが欠けても、加工先はどこかを推定で埋めることになります。その推定が前の加工先と違ったときに、「図面どおりなのに前と違う」が起きます。

データ形式ごとの向き不向き

形式の名前は分かりにくいので、用途別に整理します。

形式 種類 特徴
STEP(.stp / .step) 3D 3Dでは最も無難。CADの種類を問わず受け渡しできる。迷ったらこれ
IGES(.igs / .iges) 3D 古くからある形式。面がばらけて渡ることがある
Parasolid(.x_t) 3D 形が崩れにくい。ただし受け手のCADを選ぶ
STL(.stl) 3D 切削加工には向かない。曲面が細かい三角形の集合になり、正確な形が失われる。3Dプリンター向け
DXF / DWG 2D 寸法線ごと渡せる。板金やワイヤーカットの輪郭指示にも使う
PDF 2D 見るぶんには十分。ただし寸法を拾い直す手間がかかる
紙・紙をスキャンした画像 2D 受け取れるが、文字がつぶれていると読み違いのもとになる

STLだけは注意してください

3Dプリンターで使う形式なので「3Dデータならこれでよい」と思われがちですが、STLは曲面を細かな三角形の集まりに置き換えたデータです。元の滑らかな形は失われています。

この状態から切削加工をすると、面に細かな段差が出ます。見た目で分かるほどではなくても、はめ合い(部品どうしを差し込む部分)や摺動面(こすれ合う面)では効いてきます。切削でお願いする場合は、STEPなど元の形を保った形式をご用意ください。

紙の図面しかない場合

長く作り続けてきた部品ほど、手元にあるのは紙の図面だけ、ということがあります。これでも進められます。

まずはスキャンして送っていただければ十分です

寸法の文字がはっきり読めれば、見積もりと加工に進めます。スキャナーがなければ、スマートフォンで撮った写真でも構いません。ただし、斜めから撮ると寸法線がゆがんで読みにくくなるので、真上から撮ってください。

図面そのものが無い場合

現物しか残っていない場合は、現物から寸法を測って図面を起こすことになります。これをリバースエンジニアリングと呼びます。詳しくは図面が残っていない部品を作り直すにはで詳しく扱っています。

紙の図面を、この機会にデータに直しておくかどうか

移管は、図面をデータ化する良い機会でもあります。とはいえ費用と手間がかかるので、次の場合だけで十分だと考えています。

  • これから何度も作る部品…毎回スキャンを送るより、一度データにしたほうが早い
  • 形が複雑で、2D図面だけでは伝わりにくい部品
  • 図面の原本が傷んできている部品…読めなくなる前に残す

一度きりの部品であれば、紙のままで問題ありません。

中央に大きな穴、周囲に6つの穴が並ぶ円盤状のフランジ部品
穴の位置と径がそろっていることが求められる部品。こうした形は2D図面のほうが早く正確に伝わります

図面と一緒に伝えていただきたいこと

データの形式がそろっていても、次の情報が抜けていると、加工先は確認の連絡を入れることになります。最初にまとめてお送りいただけると、そのぶん見積もりが早く出ます。

伝える項目 なぜ必要か
数量と、今後の見込み 1個だけか、繰り返すのかで段取りの組み方が変わるため
材質と、材料の支給・手配のどちら希望か 着手日と見積もりの出し方が変わるため
希望納期と、その理由 「いつまでに何が必要か」が分かると、工程の組み方を提案できるため
2D図面と3Dデータで食い違いがある場合、どちらが正か 食い違いは実際によくある。勝手に判断されないため
図面のどの版(リビジョン)が最新か 古い版で作ってしまう事故を防ぐため
検査成績表が必要かどうか 測定の段取りを最初から組み込むため
表面処理・熱処理の有無と、その手配は誰がするか 工程全体の日程を組むため

材料の支給・手配については材料は支給すべきか、任せるべきかで、見積依頼の出し方全般についてはその見積依頼、加工先に正しく伝わっていますかで扱っています。

データを送る前に、決めておきたい3つのこと

1. 2D図面と3Dデータが食い違っていないか

設計変更のときに、片方だけ直して片方が古いまま、ということが起こります。加工先はどちらかを正として進めるしかありません。送る前に、両方が同じ版かを確認してください。不安があれば「2D図面を正とします」とひと言添えていただければ、それで決まります。

2. 図面を外に出してよいか

図面は設計そのものです。新しい加工先に渡す前に、秘密保持契約(NDA)の要否を社内で確認してください。図面と現物の預け方については、図面と現物を安心して預けるためににまとめています。

3. データの送り方

3Dデータは容量が大きくなることがあります。メールに添付できない大きさであれば、ファイル送信サービスをお使いください。送ったあとに「送りました」と一報いただけると確実です。迷惑メールに振り分けられて気づかない、という行き違いが防げます。

加工先は、データを受け取ってから何をしているのか

「図面を送ったのに、見積もりが出てくるまで時間がかかる」と感じられることがあると思います。受け取った側で何が起きているかをお伝えしておくと、どこで待たされているのかが見えてきます。

1. まず読めるかどうかを確かめる

データが開けるか、寸法の文字がつぶれていないか、2D図面と3Dデータで形が合っているか。ここで食い違いが見つかると、確認の連絡を入れることになり、その往復のぶん見積もりが遅れます。

2. どうやってつかむかを考える

部品を機械にどう固定するかを決めます。ここが加工先ごとにいちばん違うところです。同じ図面でも、つかみ方が変われば必要な材料の寸法も、工程の数も変わります。専用の治具が必要になるかどうかも、この段階で判断します。

3. 工具が届くかを確認する

3Dデータがあると、この確認が速く正確になります。深い溝の底、内側の隅の丸み、斜めの穴。図面上は成立していても、工具が物理的に入らない形はあります。入らなければ、工程を分けるか、形状の変更をご相談することになります。

4. 測り方を決める

公差の厳しい寸法をどう測るかを決めます。三次元測定機で測るのか、専用のゲージが要るのか。検査成績表が必要な場合は、この段取りも工程に組み込みます。

見積もりが早く出るかどうかは、1と2でつまずかないかでほぼ決まります。データがそろっていて、食い違いがなく、数量と納期の希望が書かれていれば、そのぶん確認の往復が要りません。

2D図面で、加工先が判断に迷いやすいところ

形式の話とは別に、図面の中身で「書かれていないので推定するしかない」箇所があります。移管のときは、ここが前の加工先と食い違う原因になります。

迷いやすい箇所 書かれていないと何が起きるか
一般公差の等級 個別指示のない寸法の許容範囲が、加工先の標準で決まってしまう
指示のない面の表面粗さ 削り跡の細かさが前の品と変わる。見た目と手触りで気づかれる
角の面取りやバリ取りの程度 組み付けの感触が変わる。指示がないほど差が出やすい
どの面を基準に測るか 同じ部品でも、測る向きを変えると数値が変わることがある
ねじの下穴の深さやざぐりの指示 相手部品とのはめ合いが変わる
熱処理の前後どちらで仕上げるか 熱処理による変形を見込むかどうかで、加工の順番が変わる

全部を書き込む必要はありません。「前の加工先ではこうしてもらっていた」という情報をひと言添えていただくだけで、推定の幅がぐっと狭まります。この点は、加工先を切り替えた直後の品質トラブル全般とつながる話です。詳しくは加工先を切り替えた直後に起きる品質トラブルで整理しています。

部品の移管先として選ばれる5つの理由

図面をどう渡すかは、結局のところ「読み取ってもらえるか」「分からないときに聞いてもらえるか」の話でもあります。株式会社関東精密がお客様から部品の移管先として選んでいただいている理由を、5つに整理しました。

理由1:三次元測定機による測定と検査成績表

ハンディプローブ式三次元測定機と画像寸法測定機 IM-8000(いずれもキーエンス製)で、μm(1000分の1mm)単位の測定を行います。お客様の検査基準をもとに検査成績表を作成し、図面に添付して納品することも可能です。詳しくは品質管理のページをご覧ください。

理由2:図面1枚・1個からの試作

図面1枚・1個からお受けします。「まず1個だけ作って、様子を見てから本格的に移管したい」という段階的な進め方に対応できます。数量は1000点以上まで対応可能です。

理由3:設計・治具製作から加工までの一貫対応

創業時から検査治具やゲージを製作してきた経験があります。部品一つ一つの精度を高く仕上げ、組立時の積算誤差(誤差の積み重なり)を少なく抑える加工を得意としています。加工に必要な治具から自社で作れます。

理由4:同時5軸加工による設備力と、約100社の提携ネットワーク

同時5軸マシニングセンター マザック VARIAXIS C-600をはじめ、5軸・4軸・3軸マシニングセンター、NC旋盤、平面研削盤、ワイヤーカット放電加工機を備えています。対応寸法は角物が最小10mmから最大X1000×Y500×Z500mm、丸物がφ400まで、重量20kgまで。材質はアルミ、ステンレス、各種鋼材、チタン、インコネル、超硬、樹脂に対応します。自社で完結しない工程は、治具研削・熱処理・メッキ・板金・大物加工など約100社の提携先とともに一貫してお引き受けします。

理由5:横浜・神奈川の立地による小回り

神奈川県横浜市都筑区に工場があります。横浜市・川崎市・相模原市から東京都近郊のお客様を中心にお取引をいただいており、現物の受け渡しや急ぎの打ち合わせに直接うかがえる距離です。

よくあるご質問とまとめ

図面やデータの渡し方について、設計や購買のご担当者からよくいただくご質問をまとめました。

Q. 3Dデータしかありません。加工してもらえますか

A. 形が単純であれば進められますが、公差をどう見るかをご相談させてください。3Dデータには「どこをどこまで厳しく仕上げるか」の情報が入っていません。一般公差(図面に個別の指示がない寸法に適用される許容範囲)のどの等級で見るかだけでも決めていただけると、判断が揃います。

Q. 2D図面しかありません。3Dデータは必要ですか

A. 必須ではありません。形が単純な部品であれば2D図面だけで十分です。曲面が多い部品や、はめ合う相手がある部品では、3Dデータがあると確認の往復が減ります。

Q. どの形式で送るのが無難ですか

A. 3DはSTEP(.stp)、2DはPDFかDXFが扱いやすい形式です。迷われたら、お手元にある形式のままお送りいただいて構いません。開けない場合はこちらからご連絡します。

Q. STLではだめですか

A. 切削加工にはおすすめしません。STLは曲面を細かな三角形に置き換えたデータで、元の滑らかな形が失われています。そのまま削ると面に細かな段差が出ます。元のCADからSTEPで出力できないか、ご確認ください。

Q. 図面が紙しかなく、しかも古くて読みにくいのですが

A. まずはスキャンか写真をお送りください。読み取れない箇所があれば、こちらから具体的に「この寸法が読めません」とご連絡します。現物をお借りできれば、実測で補うこともできます。

Q. 2D図面と3Dデータが食い違っていました。どうなりますか

A. 勝手に判断せず、必ずご相談します。どちらを正とするかをご指示いただければ、その通りに進めます。ご希望があれば、食い違っている箇所を一覧にしてお返しします。

Q. 図面を渡す前に秘密保持契約を結べますか

A. 承ります。図面をお送りいただく前にご相談ください。

Q. 送ったデータは、加工が終わったらどうなりますか

A. 継続してご発注いただく可能性を考え、通常はお預かりしたままにしています。削除をご希望の場合はお申し付けください。

まとめ——形式より、食い違いのほうが問題になる

データの形式は、迷ったら3DはSTEP、2DはPDFかDXFで間違いありません。開けなければ加工先から連絡が来ますので、そこまで神経質になる必要はありません。

むしろ実務で問題になるのは、2D図面と3Dデータの食い違いと、図面の版が古いまま渡ってしまうことです。どちらも、渡す前のひと言で防げます。「2D図面を正とします」「この版が最新です」。この2つが添えてあるだけで、加工先は推定で埋める場面がなくなります。

株式会社関東精密は、2D図面でも3Dデータでも、紙のスキャンでもお受けしています。開けない形式や読み取れない箇所があれば、こちらから具体的にお尋ねします。加工先の切り替えをご検討中でしたら、お手元にある形のままお送りいただければ、まず何を確認すべきかのご提案から始められます。まずは可否のご相談だけでも構いません。

企業名: 株式会社関東精密
住所: 神奈川県横浜市都筑区池辺町4826-2
電話: 045-534-5427
公式サイト: (https://kanto-seimitsu.jp/)

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