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5軸加工が治具製作にもたらす革新とは?複雑形状・高精度への挑戦

治具
2025.06.24

 近年、製造業の現場で「5軸加工」という言葉を耳にする機会が増えてきました。主に複雑な形状の製品を高精度に加工するための技術として知られていますが、実はこの5軸加工、製品そのものを作るだけでなく、その製品を作るための「治具」の製作においても大きな革新をもたらしています。今回は、5軸加工技術が治具製作にどのようなメリットをもたらすのか、その可能性に迫ります。

 

そもそも5軸加工とは?簡単に解説
従来の3軸加工機がX軸(横)・Y軸(奥行)・Z軸(高さ)の3つの直線軸で工具を動かすのに対し、5軸加工機はこれに加えて回転軸と傾斜軸の2つの軸が加わり、合計5つの軸を同時に制御して加工を行います 10。これにより、工具を様々な角度からワークにアプローチさせることが可能になり、より複雑な形状の加工が実現できます。

 

治具製作における5軸加工のメリット
1. 複雑な形状の治具も一体加工
5軸加工の最大の特長は、アンダーカットや傾斜面、自由曲面といった複雑な形状を持つ治具部品を、一度の段取り(ワンチャッキング)で高精度に加工できることです 7。例えば、鋳造品や鍛造品のような複雑な自由曲面を持つワークを確実に保持するための、ワーク形状にぴったりと合う受け治具(ネスト)などを、治具に直接精密に削り出すことが可能です。

 

2. 段取り替え削減で高精度と短納期を実現
従来の加工方法では、複雑な形状の治具を作るために何度も段取り替えが必要でした。その度に誤差が蓄積するリスクがありましたが、5軸加工では一度のセッティングで多面加工を行えるため、こうした累積誤差を最小限に抑えられます 11。結果として、治具部品の位置決め精度や幾何公差(平面度、平行度など)が飛躍的に向上します。また、段取り替えの回数が減ることは、治具製作全体のリードタイム短縮とコスト削減にも繋がります。

 

3. 設計の自由度が向上し、より最適な治具へ
5軸加工の高い加工能力を前提とすることで、従来は製作が困難だったり、非常に高コストだったりしたような、より機能的で洗練された治具設計のアイデアを実現しやすくなります。これにより、ワークの加工品質向上だけでなく、作業性の改善や自動化への対応など、より広範な課題解決に貢献する治具を提供できるようになります。

 

どんな場合に5軸加工による治具製作が有効か?
特に、航空宇宙部品や医療機器部品のような複雑な形状で高精度が要求される製品の加工治具や、少量多品種生産で頻繁な段取り替えが必要となる場合のフレキシブルな治具システムなどに、5軸加工による治具製作は大きな威力を発揮します。

 

まとめ:5軸加工で治具製作の可能性を広げる
5軸加工技術は、単に複雑な製品を作るためだけでなく、その製品をより良く作るための「より優れた治具」を生み出すための強力な手段です。この技術を活用することで、治具製作の可能性は大きく広がり、製造現場全体のレベルアップに貢献することが期待されます。