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平面研削加工における表面粗さ:理想の仕上げ面を得るためのポイント
平面研削加工
2025.06.05
平面研削加工の大きな目的の一つは、部品の表面を滑らかにし、要求される「表面粗さ」を実現することです。表面粗さは、部品の摺動性、シール性、耐摩耗性、疲労強度、そして外観品質などに大きく影響するため、そのコントロールは極めて重要です。理想の仕上げ面を得るためには、いくつかの重要なポイントを理解し、適切に管理する必要があります。
表面粗さとは?
表面粗さとは、加工された部品表面の微細な凹凸の度合いを示す指標です。JIS規格などで規定されており、代表的な評価パラメータには算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz、Ry)、十点平均粗さ(旧Rz)などがあります。図面では、これらの記号と数値で表面粗さが指示されます。数値が小さいほど、表面は滑らかであることを意味します。
【表面粗さを良好にするための主要ポイント】
- 砥石の選定:
- ・砥粒の種類: 被削材の材質に合わせて、アルミナ(A)、炭化ケイ素(C)、CBN(立方晶窒化ホウ素)、ダイヤモンド(SD)などを選びます。
- ・粒度: 粒度番号が大きいほど砥粒は細かくなり、より滑らかな仕上げ面が得られます。仕上げ研削では、#80~#2000以上の微細な粒度が使用されることもあります。
- ・結合度: 砥石の硬さを示し、砥粒の保持力に関係します。柔らかい砥石(結合度が低い)は自生作用(摩耗した砥粒が脱落し新しい切れ刃が出る)が働きやすく、目詰まりしにくいですが、形状維持性は劣ります。
- ・組織(気孔の割合): 気孔が多い砥石は切りくずの排出性が良く、研削熱を抑える効果がありますが、仕上げ面には影響します。
- ドレッシング・ツルーイングの質: 砥石の切れ味を維持し、砥石の作業面を正しい形状に整えるドレッシング(目直し・目立て)とツルーイング(真円出し・形状修正)は、表面粗さに直接影響します。ドレッサーの切れ味、送り速度、切り込み量などを適切に管理することで、砥石の切れ刃の状態を最適化します。
- ・研削条件の最適化:
- 砥石周速度: 一般的に、周速度を上げると仕上げ面は向上する傾向にあります(研削焼けに注意)。
- ワーク送り速度(テーブル速度): 送り速度を遅くするほど、砥石の切れ刃が工作物表面を通過する回数が増え、より滑らかになります。
- ・切り込み量: 仕上げ段階では、ごく微量(数μm以下)の切り込み量に設定します。
- スパークアウト: 最終仕上げ段階で切り込みをゼロにし、砥石を数回空送りさせる「スパークアウト」を行うことで、残留応力の低減と表面粗さの向上が期待できます。
- ・クーラント(研削液)の役割: 適切な研削液を選定し、十分な量を加工点に供給することで、冷却効果による研削焼け防止、潤滑効果による加工面のかじり防止、そして切りくずの洗い流し効果が得られ、良好な表面粗さに貢献します。
- ・機械の剛性と振動: 研削盤本体や主軸の剛性が低い場合、あるいは加工中にびびり振動が発生すると、加工面に周期的な模様(びびりマーク)が生じ、表面粗さが著しく悪化します。高剛性な機械を選定し、振動の原因(機械内部、外部からの振動、砥石のアンバランスなど)を取り除くことが重要です。
表面粗さの測定と管理
加工された部品の表面粗さは、表面粗さ測定機を用いて定量的に評価します。測定結果を加工条件にフィードバックし、常に目標とする表面粗さが得られるように工程を管理することが、品質保証の観点から不可欠です。
例えば、精密な摺動面ではRa0.1μm以下の鏡面に近い仕上げが求められることもあり、そのためには上記各要素の高度な組み合わせと管理が要求されます。平面研削加工を依頼する際には、必要な表面粗さを明確に伝え、それに対応できる技術力と設備を持つ業者を選定することが肝要です。