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見過ごし厳禁!治具の『切り屑処理』と『工具干渉』対策が品質を左右する

治具
2025.07.15

 高精度な加工治具を設計する際、ワークの位置決めやクランプの強固さ、治具本体の剛性などに注目が集まりがちです。しかし、それらと同じくらい、いや、時にはそれ以上に重要なのが、「切り屑の処理」と「工具との干渉回避」です。これらは一見地味な要素に思えるかもしれませんが、実は製品の品質や生産効率、さらには安全性にまで大きな影響を与える、見過ごせないポイントなのです。

 

なぜ切り屑処理が重要なのか?
金属や樹脂などを加工する際には、必ず切り屑(チップ)が発生します。この切り屑が適切に処理されないと、様々な問題を引き起こします。
• 加工精度への影響: 切り屑がワークと治具の基準面の間や、位置決めピンの周辺に噛み込むと、ワークが正しい位置にセットされず、加工精度が著しく低下します。
• 工具寿命への影響: 切り屑が加工点に再侵入したり、工具に絡みついたりすると、工具の刃先が欠けたり摩耗が早まったりする原因となり、工具寿命を縮めてしまいます。
• 作業環境への影響: 大量の切り屑が飛散したり堆積したりすると、作業者の視界を妨げたり、清掃に手間取ったりするなど、作業環境の悪化にも繋がります。

 

切り屑を考慮した治具設計の工夫
治具設計の段階から、切り屑が自然に排出されやすい構造を意識することが重要です。

例えば、治具の底面に傾斜を設けたり、切り屑が溜まりにくいように開口部を設けたりするなどの工夫が考えられます。

また、圧縮空気(エアブロー)やクーラントで切り屑を効果的に除去できるような流路を確保することも有効です。

清掃しやすいように、治具の各部へのアクセス性を高めることも忘れてはいけません。

 

工具干渉を防ぐためのチェックポイント
治具を設計する際には、加工に使用する全ての工具(エンドミル、ドリル、バイトなど)、工具ホルダー、さらには工作機械の主軸やタレットなどが、ワークの加工箇所へスムーズにアクセスできる空間を確保しなければなりません。
• 3D CADでのシミュレーションの活用: 設計段階で3D CADを用いて、工具の動きや治具との干渉をシミュレーションすることは非常に有効です。これにより、事前に問題を発見し、設計変更を行うことができます。
• クランプ部品の配置と形状: クランプ部品が工具の経路を妨げないように、配置や形状を慎重に検討する必要があります。必要以上に大きなクランプ部品を使用したり、工具のアクセスを妨げる位置に配置したりしないように注意しましょう。

 

まとめ:細やかな配慮が安定した生産ラインを作る
「切り屑処理」と「工具干渉回避」は、治具設計における細やかな配慮が求められる部分です。しかし、これらの点をおろそかにすると、後々大きなトラブルに繋がりかねません。安定した品質と効率的な生産ラインを実現するためにも、設計の初期段階からこれらの要素を十分に考慮することが不可欠です。