破損・摩耗した部品でも復元できる?現物から高精度に再製作するためのリバースエンジニアリング実践ノウハウ
目次

破損していても“まだ手はある”
・「部品が壊れてしまったが、図面も在庫もない」
・「もうメーカーが対応していない」
・「複雑な形状で寸法も分からない」
こういった状況に直面する製造業の現場は少なくありません。特に、古い設備や生産終了した装置を使い続けている企業では、破損や摩耗によって部品が使えなくなることで、ライン停止など重大な影響が生じます。
そんな中注目されているのが、【現物から部品を復元する“リバースエンジニアリング”】です。
本記事では、「破損品や摩耗品をもとに、いかに精度よく復元し、再製作するか?」に焦点をあて、
・測定技術の使い分け
・摩耗補正の考え方
・公差や材質の再設計ノウハウ
など、実践的なノウハウを詳しく解説していきます。
破損・摩耗した現物をもとにした再製作の流れ
リバースエンジニアリングの基本ステップは以下の通りです:
1. 現物受領・状態評価
2. 測定・スキャン・材質分析
3. CADモデリングと摩耗補正
4. 加工方法の選定と実製作
5. 検査・再現精度評価
ここで重要なのは、単なるスキャンでは“精度再現できない”という点です。特に、破損・摩耗している場合は、【測定値をそのまま使ってはいけない】という前提で進める必要があります。
破損部品の「どこを見るか?」と評価基準
◆摩耗・欠損部位の把握
・肉眼、マイクロスコープで摩耗の傾向を可視化
・回転軸・摺動面など、使用環境を考慮して変形要因を推測
◆リファレンス面(基準面)の確保
・全体が摩耗している場合でも、形状を保っている部分を「基準面」として抽出
・対称形状であれば、未破損側から逆投影して補正
◆応力履歴の推測
・溝や変形の偏りなどから、繰り返し荷重や偏荷重を受けていた可能性を評価
※これらの「痕跡」をもとに、【使用前の状態を“想像して再構築”する力】が必要です。
測定方法の選び方と組み合わせ
1. 3Dスキャン(光学・レーザー)
・複雑形状や曲面に有効
・寸法再現性は±0.02〜0.05mm(機種により異なる)
・欠けている部分は自動補間されてしまうリスクがあるため、補助測定が必要
2. 接触式測定(CMM、マイクロメータ、ダイヤルゲージ)
・高精度で平面・軸・穴などの測定に向く
・ポイント測定なので、スキャンと併用することで精度補完が可能
3. 材質分析(蛍光X線、硬度試験)
・材料名不明でも代替材提案が可能
・使用用途・応力履歴から、必要強度と熱処理の再設計を実施
摩耗補正と再設計の考え方
スキャンや測定値は「現時点の形状」でしかありません。
以下のような補正作業が、再製作成功のカギになります。
補正作業の具体例:
・軸の摩耗部:直径0.3mm減っていた→元寸法へ補正
・穴の拡がり:片側摩耗→中心位置補正
・偏摩耗:回転方向の偏りを考慮して対称化
・スプリングなど:ヘタリや疲労も加味して補強設計
重要なのは「寸法の平均値をとる」ではなく、【機能再現を前提とした“意図的補正”】を行うことです。
CADモデリング時の注意点:
・寸法補正前・補正後の2種類をモデリングし比較
・公差は加工方法に応じて最適化(例:H7/h6→h7に緩和)
・不要な複雑形状はコストダウンのため簡略化も検討
再製作と精度確認のポイント
製作には以下の要素が影響します:
・材料調達:同等材または代替材の選定
・加工方法:旋盤/マシニング/放電加工/研削など
・表面処理:焼入れ/メッキ/アルマイト等も必要か確認
・検査工程:三次元測定、寸法表作成、実機組付けテスト
→ 再製作の完了=「単に作った」ではなく、「機能が復元されたか」まで確認する必要があります。
実際のリバース事例と成功要因
【事例1】食品機械のスクリュー軸(図面なし・偏摩耗)
・問題:直径10mm、長さ400mmの軸の一部が偏摩耗
・対応:スキャン+接触測定→対称補正→SUS316で製作
・成果:再現精度±0.01mm、稼働再開まで3週間
【事例2】金型部品(割れ/摩耗)
・問題:肉盛り溶接で補修していたが限界に
・対応:3Dスキャン→公差最適化→SKD11焼入れ後研削
・成果:再現率99%以上、納期4週間
おわりに:壊れていても、図面がなくても「再現できる時代」
以前なら、部品が破損していた時点で「もう無理」と言われていた案件も、
いまは【リバースエンジニアリングの技術進化】により、多くが再製作可能になっています。
大事なのは、早期の相談と、技術を持ったパートナーとの連携です。
・図面がない
・部品が壊れている
・材料が不明
こういった状態でも、正しく進めれば『高精度で再製作できる時代』になりました。
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