研削加工の品質は“図面”で決まる?前工程で起きる“平面研削の落とし穴”と未然防止の視点
「研削でうまく平面が出ない」「焼けやビビリが出る」
こうしたトラブル、実は“研削加工そのもの”に原因がないことも多くあります。
本記事では、平面研削の品質に影響を及ぼす設計図面・加工前工程・測定指示に潜む“見えないリスク”に注目し、未然に防ぐための視点を整理します。
目次
■ 平面研削=「仕上げ」ではなく「調整工程」である
よくある誤解が、「研削=最後に綺麗にすれば整う」という設計者や購買担当者の認識です。
しかし実際には、研削加工は、
精度を“整える”というより、残った“狂い”を“調整する”
前加工の残留応力や歪みを“受け止める”加工
という意味合いが強く、前段の不備を完全にリカバーできるものではありません。
■ 設計図面に潜む研削トラブルの種
① 公差がきつすぎるのに“基準面”が不明確
例:±0.01mmの公差を要求しているが、どの面基準かが図面上で不明確
→ 現場では「とりあえずこの面でやるか…」と判断がバラつき、段取りの再現性が失われます。
② 面粗度と寸法公差が相反している
例:Ra0.2指定+t0.005mmの公差だが、ワークが薄板
→ 面粗度を優先して削ると、寸法が狂い、寸法を優先すると焼けやビビリが出る
③ 研削対象の厚みが薄い・偏肉・大型である
→ 図面上では1枚板のように見えても、実際の形状や固定方法によって歪みやすさが急上昇
→ 図面に「変形注意」や「仕上げ後測定条件」などが明記されていないと、再現性が確保しにくい
■ 加工前工程に潜む問題:旋削・フライス・溶接などの影響
平面研削の不具合の多くは、研削前工程の“ひずみの残し方”に由来しています。
前工程 研削不良につながる原因
旋盤加工 両端の芯ズレ → 平面の片削りに
フライス加工 ビビり痕 → 研削時に焼けやムラ
溶接後の加工 残留応力 → 冷間変形が研削時に発現
ワイヤーカット後 熱がないが応力開放されていない → 板材が反る
研削工程は“ごまかしが効かない”ため、前工程での管理・応力除去の設計的配慮が極めて重要になります。
■ 測定指示と工程設計のミスマッチも要注意
測定での「基準面・測定方向・タイミング」が明示されていないと、下記のような問題が発生します
定盤で測ると真っすぐなのに、相手部品に当てると“浮く”
温度環境が異なる測定室と現場で、数μmの差が出る
薄物部品では、手の圧や測定器の位置で測定値が変わる
設計段階で「どう測るか」まで設計図面や仕様に盛り込むことが重要です。
■ 未然に防ぐための「図面+段取り+研削」連携のコツ
図面上に基準面を明記し、測定方法の指示を添える
前工程(旋削・溶接など)の応力や歪みを可視化(治具設計・余肉設計)
平面度は“削る量”よりも“押さえ方”が影響する → 治具や吸着パッドも設計段階から検討
■ まとめ:研削加工の品質は「前」で決まっている
「平面研削でうまくいかなかった」というとき、
本当に原因が“研削そのもの”にあるケースは、実は少数派です。
設計で「測定方法と基準面の明示」
加工前工程で「歪みや応力の排除」
加工現場で「再現性ある段取りと測定」
この3つを意識するだけで、研削品質は安定し、品質トラブルの再発率も格段に下がります。