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真円は「描く」ものではない、「回す」ものだ。マシニング全盛の時代に、あえて旋削加工にこだわる絶対的な理由と、その真価

NC旋盤加工
2026.02.20

▼ こんな方に読んでほしい

・ Oリングのシール面からの微小な液漏れやガス漏れに悩まされており、面粗度や真円度の限界を感じている設計エンジニア
・ ベアリングの圧入や勘合において、マシニング加工の穴ではどうしてもしっくりこず、同軸度の確保に苦労している生産技術者
・ すべての部品をマシニングセンタで加工しようとして見積もりが高騰しており、適切な工法転換(旋削化)によるコストダウンを探っている調達担当者

 

 

 序論:マシニングセンタは万能か? 丸い部品に潜む落とし穴

現代のモノづくりにおいて、マシニングセンタはまさに主役です。複雑な形状も、3Dデータさえあればプログラム一つで削り出してしまう魔法の機械です。そのため、「丸い穴も、丸い外径も、すべてマシニングで削ってしまえば早いし、工程も集約できる」と考える設計者や加工業者が増えています。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。
たしかにマシニングセンタは丸い形状を「作ること」はできます。ですが、それは本当に「真円」なのでしょうか。

真空装置のシール面。高速回転するモーターのシャフト。ミクロン単位のクリアランスが求められる油圧バルブのプランジャー。これらの部品に求められるのは、「丸く見えること」ではなく、数学的な意味での「真の円」です。結論から言えば、真円を作り出すにおいて、旋盤による「旋削加工」の右に出るものはありません。

本記事では、切削加工の原点である旋削加工が、なぜ現代においても絶対的な優位性を持つのか、その物理的な理由と技術の深淵について徹底的に解説します。

 

 補間と回転の違い。「描かれた円」と「削り出された円」

円を作るというアプローチにおいて、マシニングセンタと旋盤では、その根本的なメカニズムが全く異なります。

 

マシニングセンタが描く「デジタルの円」(円弧補間)

マシニングセンタで円を削る時、機械は工具を回転させながら、テーブル(または主軸)をX軸方向とY軸方向に同時に動かしています。これを「円弧補間」と呼びます。
極端に言えば、デジタルの細かい階段をギザギザと上り下りしながら、円の軌道を描いているのです。

 

象限突起(バックラッシュ)という宿命

機械の精度が上がったとはいえ、マシニングセンタには構造上の弱点があります。円を描く際、時計の12時、3時、6時、9時の位置で、X軸とY軸のモーターは「前進」から「後退」へと進行方向を反転させます。
この切り替わりの瞬間に生じる微小なガタつきやサーボモーターの遅れが、「象限突起」と呼ばれる数ミクロンの段差を生み出します。マシニングで作った円には、必ずこの「4つのコブ」が潜んでいるリスクがあるのです。

 

旋盤が生み出す「物理的な真円」

一方、旋盤加工はどうでしょうか。
材料そのものを主軸で回転させ、刃物を一方向に当てるだけです。そこにはXとYの複雑な同調はありません。ただ一つの強靭なベアリングに支えられた主軸が、真ん中で回り続けているだけです。
マシニングが「プログラムで描いた円」であるなら、旋盤は「物理法則が生み出した円」です。この生まれ性の違いが、測定器にかけたときの「真円度」の数値として、決定的な差となって現れます。

 

 

 同軸度を極める。動かさないことの強さ

回転する部品において、真円度と同じくらい重要なのが幾何公差の一つである「同軸度」です。

 

「掴み変え」が精度を破壊する

例えば、シャフトの両端にあるベアリングの勘合部。この二つの円の中心がズレていれば、回転させた時に激しい振動が発生し、製品の寿命を縮めます。
マシニングセンタで表と裏から円を加工した場合、ワークを手でひっくり返してバイスで掴み直す際のズレが、そのまま同軸度のズレになります。どれほど熟練の職人がダイヤルゲージで芯出しを行っても、着脱による数ミクロンの誤差は避けられません。

 

旋削の奥義「ワンチャッキング」の絶対性

旋削加工の最大の武器は「ワンチャッキング」です。
材料をチャックで一度掴んだら、外径を削り、そのまま内径を削り、端面を仕上げます。材料は一度も機械から外されていません。
つまり、外径の中心と内径の中心は、機械の主軸という「一つの絶対的な中心」を共有していることになります。これを私たちは「芯が出ている」と表現します。同軸度0.005ミリといった厳しい幾何公差をクリアするためには、この「掴んだまま全てを削り切る」旋削のアプローチが最も確実かつ合理的なのです。

 

 

 シール面を制する。「刃物の跡」の方向性

Oリングなどのゴムパッキンを密着させ、気体や液体の漏れを防ぐ「シール面」。ここでも、旋削加工は圧倒的な強さを発揮します。

 

クロスハッチが生む「見えない抜け道」

金属の削り出し表面を顕微鏡で見ると、必ず刃物が通った跡(ツールマーク)が残っています。
マシニング加工の面は、工具が回転しながら進むため、ツールマークが交差するような複雑な模様(クロスハッチ)になります。これが微小な隙間となり、高圧のガスや液体が漏れ出す「抜け道」になりやすいのです。

 

旋盤が描く「完璧な防波堤」

旋削加工の場合、ツールマークはレコード盤の溝のように、きれいな一本の同心円状(あるいは螺旋状)になります。
Oリングを押し当てた時、この同心円の溝はパッキンと完全に平行になるため、流体が逃げるための抜け道を作りません。「面粗度(Ra)の数値は同じでも、マシニングで削った面は漏れるが、旋盤で削った面は漏れない」。
これは、真空機器や流体制御機器を扱う技術者にとっては常識であり、図面に「旋削仕上げのこと」とわざわざ指示が入る最大の理由です。

 

 

 ハードターニングへの進化:研削レスの実現

さらに現代の旋削加工は、「硬いものは削れない」という過去の常識をも打ち破っています。

 

焼入れ材をそのまま削る技術

通常、HRC50を超えるような焼入れ部品は、旋盤で削ることができず、後工程で「円筒研削盤(研磨)」にかける必要がありました。しかし、株式会社関東精密では、CBN(立方晶窒化ホウ素)などの超硬質工具と、極めて剛性の高い旋盤を組み合わせることで、焼入れ後の部品をそのまま旋削仕上げする「ハードターニング」を確立しています。

 

工程集約による大幅なコストダウン

これにより、旋盤から研削盤への「工程間の移動」がなくなり、リードタイムが劇的に短縮されます。同時に、研削盤への掴み変えによる芯ズレのリスクも消滅するため、コストダウンと品質向上を同時に達成できるのです。

 

 結論:適材適所を見極めるのが、真の加工屋

私たちは、マシニングセンタの能力を否定しているわけではありません。株式会社関東精密にも、最新鋭の5軸マシニングセンタが並んでおり、複雑なハウジングや多面体部品を日々削り出しています。

しかし、「丸いもの」の真理は、常に旋盤の中にあります。

図面を見た時、私たちはその部品が「どう使われるのか」を想像します。
もしそれが、高速で回転する部品であれば。
もしそれが、高い気密性を求められる部品であれば。
私たちは、あえてマシニングセンタでの加工を避け、旋盤職人の腕に委ねるという選択をします。「最新の設備で削る」ことよりも、「最も理にかなった工法で削る」こと。それが、確かな品質をお約束するための、私たちの基本姿勢です。

他社で加工して漏れが止まらないフランジ部品。組み立てると回転が渋くなるシャフト部品。その原因は、工法そのものにあるかもしれません。
ぜひ一度、株式会社関東精密にご相談ください。金属を「回して削る」ことの本当の威力を、製品という形でお見せいたします。

 

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