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現場の「困った」を未然に防ぐ 治工具開発設計で組立・加工の効率を最大化する方法

治具
開発、設計
2025.09.05
  • 「製品は完成しているのに、なぜか量産ラインが立ち上がらない」

「組立作業者によって出来栄えにムラが出る」
「毎回“職人頼み”で、作業の再現性が担保できない…」

そんな現場の“あるある”に心当たりはありませんか?

ある製造企業では、ある部品の量産立ち上げ直前に、組立工程でネジ穴のズレが発覚。原因は部品保持具がなく、手作業で無理な力を加えていたことでした。急遽、簡易治具を作成し対処しましたが、初期ロット数十台は全数再検査と調整に追われ、納期が1週間遅延する結果となりました。

このような“後手の対応”は、製造現場では珍しくありません。
しかし実際には「製品設計時点で治工具をセットで検討する」だけで、多くのトラブルは防げます。

本記事では、開発設計・組立・加工の効率を支える「治工具設計」の考え方について、設計者・現場の両視点から解説します。

 

 

◆ 治工具の本来の役割とは

治工具とは、作業の効率化・品質の安定・精度の再現性を実現する“仕組み”です。
中でも重要なのは以下の3つ:

  • 位置決め治具:±0.005mmレベルの精度保持

  • ・組立冶具:手作業による圧入・ねじ締めの再現性向上

  • ・検査冶具:ゲージやテンプレートで合否判定を即時化

製品が複雑になるほど、工程数・部品点数・公差管理の難易度が上がり、人の感覚だけでは精度と効率を両立できません。

 

◆ なぜ治具検討が後回しになるのか

設計段階ではどうしても「製品そのものの仕様や性能」に注力してしまい、治具は「できれば後で」となりがちです。
よくある原因は:

  • ・治具の経験が設計者側に不足している

  • ・生産側と設計側の連携が薄い

  • ・治具が“コスト増要因”として捉えられている

しかし、実際は逆です。
治具を早期に検討・導入することで、後工程の手戻り、再加工、検査時間といった【“見えないコスト”】を大幅に削減できるのです。

 

解決アプローチ(実務ベースの考え方)

◆ ステップ①:図面化前に“仮治具設計”の意識を持つ

製品の形がまだ曖昧な段階でも、「この部品は固定が必要そう」「加工方向が制限されそう」といった仮設計の視点を持つことが重要です。

例えば:

工程 仮設計すべき治具の例
マシニング ストッパー付きバイスプレート、角度治具
放電加工 絶縁材ベースの位置決め治具
組立・圧入 軸合わせ冶具、圧入ガイド
検査 ゲージ一体型検査ブロック

図面化後に「やっぱり冶具が必要だった」となれば、設計変更や納期の見直しに繋がります。
治工具の検討は、製品設計と並走させることが鉄則です。

 

 

◆ ステップ②:工法に合わせた治具構造を選定

部品の加工にはさまざまな工法が組み合わさります。
治具設計では、それぞれの工法に適した構造を意識する必要があります。

工法 治具設計で考慮すべき点
マシニング 切削時の振動吸収、ワーク変形対策、切り粉の逃げ
放電加工 絶縁材による固定、火花ギャップの均一性
平面研削 ワーク反りの防止、磁力保持・脱着性
研削+放電 工程間での“位置ずれゼロ”を前提とした基準面共通化

例えば、放電加工で「硬質材(HRC60以上)」を扱う場合、母材の焼きが抜けないようなクランプ圧調整治具を用意しなければ、変形やクラックのリスクが生じます。

 

◆ ステップ③:トータルでの段取り効率を見据える

治具は「一工程用」にとどまらず、「加工→検査→組立」までを一気通貫で設計することで、段取り回数を削減できます。

ある事例では、複雑な三面加工を伴う部品に対し、ワンタッチで基準面を切り替えられる“回転式冶具”を設計。
治具交換時間を従来の3分→30秒に短縮し、1日の生産数が2割向上しました。

設計者視点でのアドバイス

◆ 公差設計は“治具で成立するか?”で判断

公差に悩んだら、JIS B 0401(幾何公差)に照らして「治具を使えば実現可能か?」という視点を持ちましょう。

例:±0.005mmの平行度が求められるパーツ
→平面研削機+吸着冶具+一方向止めピン設計により再現性確保

◆ “加工しやすさ”と“意図通りの機能”の両立

治具でできる=何でもできる、ではありません。
加工工数や保持安定性を見越し、「穴の向き」「部品の割り構造」「厚みの取り方」を調整できる設計者は、現場との信頼が築けます。

◆ 材質ごとの治具対応の違いを理解する

  • アルミ削り出し:熱変形に弱く、加工中の歪み吸収治具が必要

  • SUS304系:硬化が早く、刃物摩耗対策や焼き入れ後の歪み取り工程も想定

  • 樹脂(POM・PEEK等):クランプ力過多で割れのリスク → 低圧かつ大面積で保持設計

 

次にすべきこと

もしあなたが今、以下のような状態であれば・・・

  • ・図面はまだ完成していないが、量産を視野に入れた設計を進めている

  • ・試作で再現性のある作業が難しい

  • ・製品精度のバラツキを抑えたいが、検査工程にコストがかかる

 

その段階こそ、治工具の出番です。

 

治具は“作業の精度保証装置”です。
図面完成前に「どこで冶具を入れるべきか」を一緒に設計検討することで、
後戻りのない“正しい段取り”が見えてきます。

 

補足:よくある例

某精密機器メーカーより、複数部品の組立精度±0.01mm以内を要求された案件。
圧入部に微妙なテーパがあり、わずかなズレで機能不良が生じる設計でした。
当社では、スライド式位置決め冶具+油圧圧入ガイドの設計により、作業者の経験に依存しない高再現性を実現。
その後のシリーズ製品にも転用され、累計出荷は1万台を超えました。

 

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