焼入れ後の加工に強い!ワイヤーカット加工が“最後の切り札”と呼ばれる理由
目次
はじめに:焼入れ後の加工、どう対応していますか?
多くの製造業の現場で、【焼入れ後の仕上げ加工は難易度の高い工程】として扱われます。
硬くなった素材に工具を当てると「刃が欠ける」「寸法が狂う」「加工できない」といった問題に直面しやすく、【加工費も時間も跳ね上がる】ことが一般的です。
そんな中、ワイヤーカット加工は「焼入れ後の加工」において非常に有効な手段です。
現場では「最後の切り札」とまで呼ばれることもあるこの技術について、なぜ強いのか、どのような使い方があるのかを解説します。
焼入れ材がなぜ難しいのか?
焼入れ処理とは、素材(金属)を高温に熱してから急冷することで硬度を高める処理です。
たとえば、SKD11やSUS420J2といった材料は、【HRC60以上になることもあり、通常の切削加工では工具がすぐ摩耗してしまいます。】
さらに、硬度だけでなく応力変化や熱影響によって、
※切削中にビビリ(振動)が発生
※寸法誤差や面粗さが悪化
※熱による変質やクラック発生
といったリスクもあるため、焼入れ後の加工は“できるだけ避けたい工程”とされることが多いのです。
ワイヤーカット加工が“最後の加工”に選ばれる理由
✅ 1. 工具を使わない=“摩耗しない”
ワイヤーカット加工は、電気的な放電で金属を溶かしていく加工です。
つまり、刃物を使わないため「工具摩耗」や「切削熱」の影響がありません。
焼入れ後の硬化した金属も、まるでバターを切るように形を整えることができます。
✅ 2. 熱影響が局所的=“焼戻りが起きにくい”
切削加工では、摩擦によって部品全体が高温になることがあります。
これが焼戻りを引き起こし、せっかくの硬度が下がってしまうことも。
一方でワイヤーカットは、【放電による局所的な加熱のみ】で加工が行われるため、【熱の侵入がごくわずかで済む】のです。
✅ 3. 高精度・高再現性
焼入れ後の仕上げ加工で重要なのは、「寸法が出るかどうか」です。
ワイヤーカットは、
・±1μm〜±5μmレベルの寸法精度
・再現性の高い平行・直角の維持
・鋭角・微細な形状も安定的に加工
が可能で、最終工程にふさわしい仕上がりを実現します。
具体的な使い方:こんな場面で活躍しています
✅ 金型のトリミング加工
・焼入れ後の金型部品の「逃げ加工」「抜き形状」などに
・鏡面研磨前の下地整形としても活用
✅ 精密部品のスリット・穴あけ
・0.1〜0.3mm幅のスリットを焼入れ材に加工
・再研磨後の寸法微調整にも対応
✅ 超硬材やインコネルの最終カット
・他の方法では不可能な難削材でも切断可能
・部品の「使う寸前」での最終調整にも
注意点:誰にでも扱える加工法ではない
焼入れ材をワイヤーカットする際は、【いくつかの高度なノウハウ】が必要です。
・放電条件の最適化(電流・パルス制御など)
・応力による変形を避けるための順序設計
・精密な治具・保持方法
つまり、「ワイヤーカットならどこでもOK」というわけではなく、【焼入れ材への加工実績が豊富な業者を選ぶことが成功の鍵】となります。
まとめ:ワイヤーカットは“最終工程の信頼装置”
焼入れ材の加工は、コストもリスクも高い工程です。
しかし、ワイヤーカットという選択肢をうまく使えば、次のような効果が期待できます。
・工具破損リスクの回避
・寸法・形状の高再現性
・焼戻りのリスクを抑えた仕上げ
焼入れ後に「あとちょっとだけ仕上げたい」「一部だけ加工を加えたい」と感じたとき、
【その困りごとにこそ、ワイヤーカット加工は真価を発揮します。】