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治具の材質選び、間違っていませんか?性能を最大限に引き出す材料選定ガイド

治具
2025.06.27

 加工治具の性能を左右する重要な要素の一つに、「材質選び」があります。どんなに優れた設計の治具でも、使用する材質が不適切であれば、期待する精度や耐久性を得ることはできません。今回は、治具の性能を最大限に引き出すための、適切な材料選定のポイントと代表的な材質について解説します。

 

材質選定で考慮すべき基本要素
治具の材質を選ぶ際には、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
 • ワークの材質と加工内容: ワークと治具が接触することによる摩耗、化学反応の有無、加工時に発生する熱や切削抵抗などを考慮します。
 • 求められる精度と耐久性: 高い精度を長期間維持するためには、耐摩耗性や耐変形性に優れた材質が必要です。
 • 使用環境: 温度変化、湿度、薬品雰囲気など、治具が使用される環境への耐性も重要です。
 • コストと入手性: 材質自体の価格や加工の難易度が、治具の製作コストと納期に影響します。

 

代表的な治具用材料とその特徴
治具には様々な材質が用いられますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
• 金属系材料:
 ☆炭素鋼(S45C、S50Cなど): 入手しやすく加工性も良いため、一般的な治具本体や部品に広く使用されます。必要に応じて焼入れ処理を施し、硬度や耐摩耗性を向上させます。
 ☆合金工具鋼(SKD11、SKS3など): 高い硬度と耐摩耗性を持ち、治具のロケーターピンやクランプ部品など、長寿命が求められる箇所に使用されます。
 ☆アルミニウム合金(A5052、A7075など): 軽量で加工性に優れ、錆びにくい特徴があります。試作治具や、頻繁に持ち運びが必要な治具に適しています。
 ☆ステンレス鋼(SUS304、SUS316など): 耐食性に優れており、湿度の高い環境や薬品を使用する工程での治具に適していますす。
• 樹脂系材料:
 ☆ POM(ポリアセタール)、MCナイロンなど: ワークに傷をつけたくない場合、軽量化したい場合、電気絶縁性が必要な場合などに選定されます 2。摺動性や耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックも多用されます。
 ☆PEEK(ポリエーテルエーテルケトン): 高温特性、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、過酷な条件下で使用される治具に適しています。
• その他:
 ☆セラミックス: 高硬度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れており、特殊な環境下や高精度が要求される治具部品に使用されることがあります。

 

表面処理という選択肢:さらなる性能向上のために
 材質そのものの特性に加え、表面処理(窒化処理、硬質クロムめっき、DLCコーティングなど)を施すことで、耐摩耗性、耐食性、摺動性などの特性をさらに向上させることが可能です 5。例えば、金属治具の摺動部にコーティングを施して滑りを良くしたり、耐摩耗性を高めて寿命を延したりすることができます。

 

まとめ:最適な材質選びで治具のポテンシャルを引き出す
 治具の材質選定は、その治具が持つべき性能を最大限に引き出し、長期間安定して使用するための非常に重要なプロセスです。上記のポイントを参考に、ワークの種類、加工内容、使用環境、そしてコストとのバランスを考慮しながら、最適な材質を選びましょう。専門知識を持つサプライヤーに相談することも有効な手段です。