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治具の「設計製作一式」依頼が、調達・生産技術担当者を救う3つの理由

治具
開発、設計
2025.12.08

◆見えない負担と戦う皆様へ

日々、製造現場の最前線で品質と納期の両立に奔走されている生産技術担当者様、そしてコストとサプライヤー管理の狭間で調整を続けられている調達担当者様。日々の業務、誠にお疲れ様です。

生産ラインの生産性や、製品の品質を決定づける重要な要素である「治具」。
その調達プロセスにおいて、皆様はどのようなフローを採用されているでしょうか。

もし、現在の手法が「社内で設計し、図面を書いてから加工業者へ依頼する」あるいは「設計専門の会社に図面を依頼し、そのデータを加工業者へ渡す」という分離発注のスタイルであるならば、知らず知らずのうちに、本来払う必要のない「見えないコスト」や「精神的な負担」を背負い込んでいる可能性があります。

本記事では、治具の調達において「設計」と「製作」を分けずに一括で依頼する「設計製作一式」というアプローチが、なぜ現場の負担を劇的に減らし、結果として企業の利益に貢献するのかについて、製造業の現状と課題を深く掘り下げながら、論理的かつ具体的に解説していきます。


 

 

◆設計と製作を分けることで生じる「構造的な欠陥」

まず、多くの企業で慣習的に行われている「設計と製作の分離」について考えてみましょう。一見すると、設計は設計のプロに、加工は加工のプロに任せることで、それぞれの専門性を活かしているように思えます。しかし、治具という特殊な製品においては、この分業が「情報の断絶」を生み出し、様々なトラブルの温床となるケースが後を絶ちません。

 

責任の所在が「グレーゾーン」に消えるリスク

治具調達において最も恐れるべき事態は、完成した治具が「使えない」あるいは「精度が出ない」というトラブルです。

設計と製作が別会社、あるいは別部署である場合、不具合が発生した際に必ずと言っていいほど発生するのが責任の押し付け合いです。
加工業者は「図面の指示通りに作った。公差も範囲内だ」と主張します。
一方、設計者は「加工の現場で何かが起きているはずだ。あるいは組み立ての調整不足だ」と主張します。

この板挟みになり、原因の切り分けと調整に奔走するのは誰でしょうか。それは発注者である皆様です。原因特定のための測定、追加工の手配、修正費用の負担交渉。これらに費やす時間は、皆様が本来行うべき「生産工程の改善」や「新規ラインの立ち上げ」という付加価値の高い業務時間を奪い取っていきます。

 

「加工の現実」を知らない設計によるコスト高

設計図面は、あくまで理想の状態を描いたものです。しかし、現実の加工現場には「刃物の入りやすさ」「クランプのしやすさ」「材料の規格サイズ」といった物理的な制約が存在します。

加工現場の事情に精通していない設計者が図面を描くと、次のような現象が頻発します。

機能上必要のない箇所に、過剰に厳しい公差(寸法許容差)を設定してしまう。
標準的な工具では加工できないような、複雑な隅R(コーナー半径)を指定してしまう。
規格材から削り出す際に、大量の材料ロスが出るような寸法設定にしてしまう。

これらはすべて、機能には寄与しない「無駄なコスト」として加工費に跳ね返ってきます。設計図を受け取った加工業者は、図面通りに作る義務があるため、たとえ非効率だと分かっていても、その通りに加工し、その分のコストを見積もりに上乗せせざるを得ないのです。

 

図面修正という「時間の浪費」

加工の段階で「この形状では加工できない」「ここを少し変更すれば安くなる」ということに気づいたとしても、分離発注の場合は一度設計者に連絡し、承認を得て、図面を修正し、再発行するというフローが必要です。

このコミュニケーションの往復に数日、場合によっては一週間以上かかることもあります。納期が迫る中でこのタイムロスは致命的です。結果として、高いと分かっていても修正せずに強行するか、納期遅延を受け入れるかという苦渋の決断を迫られることになります。


 

 

◆解決策としての「設計製作一式」

これらの構造的な問題を根本から解決するのが、設計から材料手配、加工、組立、調整、そして検査までを一貫して引き受ける「設計製作一式(ワンストップサービス)」という発注スタイルです。

単に一社にまとめるということではありません。これは「図面を買う」のではなく、「機能(ソリューション)を買う」という発想の転換です。

 

メリット1:意図を汲み取った「生きた設計」とVA/VE提案

一貫対応の最大の強みは、設計の初期段階から「作り手」の視点が入ることです。
熟練の設計者は、加工現場と常に情報共有を行っています。そのため、図面を描く段階で以下のようなVA(価値分析)・VE(価値工学)が自然と行われます。

「ここは精度が必要だが、こちらの面は逃がしても機能に影響しないため、公差を緩めてコストを下げよう」
「この形状は一体物で削り出すよりも、2つの部品に分けてボルト締結にした方が、材料費も加工費も安くなる」
「在庫している端材を活用できるサイズに設計を変更しよう」

このように、機能と品質を維持したまま、製造コストとリードタイムを最小化する設計(DFM:Design For Manufacturing)が適用されます。これは、設計と製造が分断されている環境では決して生まれない付加価値です。

 

メリット2:仕様が未確定でもプロジェクトが進行する

詳細な図面がなければ見積もりも発注もできない、という常識は、設計製作一式においては当てはまりません。

「ワーク(製品)そのもの」
「手書きのポンチ絵やメモ」
「やりたいことのイメージ(例:ここで90度回転させて固定したい)」

これらの情報さえあれば、プロフェッショナルが構想図を作成し、提案することができます。
皆様は、忙しい中でCADに向かって図面を作成したり、詳細な仕様書を作成したりする必要はありません。「何を実現したいか」という目的を伝えるだけで、最適な手段を提案してもらえるのです。これにより、発注までの準備工数が劇的に削減されます。

 

メリット3:責任の一元化による「完全な品質保証」

設計製作一式で発注した場合、納品されるのは「部品の集合体」ではなく、調整済みの「機能する装置」です。

社内で加工し、そのまま社内で組み立てを行うため、もし部品同士の干渉や勘合の不具合があっても、その場ですぐに修正対応が行われます。お客様の手元に届く段階では、すべての調整が完了し、箱を開ければすぐに生産ラインで使える状態になっています。

万が一、納品後に不具合が見つかった場合も、連絡先は一つです。「図面が悪い」のか「加工が悪い」のかをお客様が調査する必要はありません。一貫受託した企業がすべての責任を負い、速やかに原因究明と対策を行います。この安心感こそが、設計製作一式の最大の価値と言えるかもしれません。


 

 

◆トータルコストで考える「安さ」の正体

ここで、コストについての誤解を解いておく必要があります。
見積もりの表面上の金額だけを見れば、設計費と加工費がセットになった見積もりは、安価な加工業者に直接発注するよりも高く見えることがあるかもしれません。

しかし、企業活動におけるコストとは、請求書の金額だけではありません。以下のような「隠れたコスト」を含めたトータルコスト(TCO)で比較検討することが重要です。

自社の技術者が図面を作成・修正するために使った人件費(残業代など)
複数の業者とやり取りするための通信費や管理工数
不具合発生時の対応コストや、ライン停止による機会損失
輸送コスト(設計会社から加工会社、加工会社から自社への複数回の輸送)

設計製作一式による発注は、これらの見えないコストを大幅に圧縮します。
また、適切な材料選定や加工手順に即した設計により、無駄な加工費が削ぎ落とされるため、結果としてトータルコストは低減されるケースが大半です。
「目先の加工費」ではなく「プロジェクト全体の完遂コスト」で評価することで、その真価が見えてきます。


 

 

◆このようなケースこそ、ご相談ください

具体的に、どのような状況で「設計製作一式」の依頼が効果を発揮するのか、いくつかのシナリオをご紹介します。

 

ケース1:図面のない古い治具の更新・複製

「昔から使っている治具が摩耗して壊れてしまった。同じものが欲しいが、図面は紛失しているか、そもそも存在しない」
このような場合、現物を測定し、そこから図面を起こして(リバースエンジニアリング)、製作まで行うことができます。その際、使い勝手の悪かった部分をヒアリングし、改良を加えた「Ver.2.0」として納品することも可能です。

 

ケース2:社内リソースの不足

「新製品の立ち上げで、生産技術部員は工程設計や設備導入に手一杯。治具の図面まで描いている時間がない」
このような繁忙期こそ、アウトソーシングの出番です。構想段階から丸投げしていただくことで、社内リソースをコア業務に集中させることができます。

 

ケース3:アイデアはあるが具体化できない

「製品の形状が複雑で、どうやって固定すればいいか分からない」
「手動で行っている作業を自動化したいが、どのような機構にすればいいか知恵を貸してほしい」
このような技術的な相談も、設計機能を持つ企業ならではの対応領域です。豊富な実績に基づいた提案により、お客様が思いつかなかった解決策が見つかることも少なくありません。


 

 

◆信頼できるパートナーを見極めるために

設計製作一式を依頼することは、ある意味で「技術的な丸投げ」です。しかし、これは決して無責任なことではありません。信頼できるパートナーを選定し、適切な権限委譲を行うことは、高度なマネジメントスキルの一つです。

良いパートナー企業を見極めるポイントは以下の通りです。

1.【ヒアリング力】
こちらの要望をただ聞くだけでなく、「なぜその精度が必要なのか」「どのような環境で使用するのか」といった背景まで深く質問してくれるか。

 

2. 【提案力】
言われた通りに見積もるだけでなく、「こうした方が安くなる」「この材質の方が長持ちする」といった代替案を提示してくれるか。

 

3.【組立・調整の環境】
単に部品を加工する機械だけでなく、定盤や測定器など、組み立てと品質保証を行うための環境が整っているか。


 

 

◆むすびに

治具は、主役である製品を生み出すための「名脇役」です。
しかし、その脇役の出来栄え次第で、主役の品質も、生産の効率も大きく変わります。

設計と製作を分断することによる非効率やストレスから解放され、より創造的で生産性の高い業務に集中するために。「設計製作一式」という選択肢を、ぜひ検討してみてください。

私たち関東精密は、単なる加工業者ではありません。お客様が直面している課題を、技術と経験で解決する「解決策の提供者」でありたいと考えています。

図面がなくても構いません。仕様が決まっていなくても大丈夫です。
「こんなことで困っている」「こんな治具が欲しい」という現場の生の声を、そのまま私たちにぶつけてください。
その曖昧なイメージを、確かな形あるものへと具現化し、皆様の生産ラインを支える力強い道具としてお届けすることをお約束いたします。

まずは、お手元の案件や、長年温めていた改善アイデアについて、お気軽にお話をお聞かせいただければ幸いです。

 

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