材料がわからない?大丈夫。材質不明の部品でも再製作できる理由とその方法
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図面も、材料も不明。それでも再製作したいあなたへ
「この部品、どんな材料か分からないんです」
「メーカーが廃業していて材質表記も残っていない」
「使っていた人ももう退職していて、情報が一切ない」
これは、リバースエンジニアリングの現場でよくある相談です。
結論から言うと、材料が不明でも部品の再製作は可能です。
なぜなら、現物から分析する技術や、使用環境に応じた代替材の選定ノウハウが確立されているからです。
本記事では、材料不明の部品でも再製作が可能な理由を、技術・実務の両面からわかりやすく解説します。
なぜ「材質不明問題」は起こるのか?
まずは、なぜ多くの企業が「材料が分からない」という状況に直面するのかを整理しましょう。
・図面・仕様書の喪失
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設備導入から20年以上経過している
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メーカーが廃業 or 統合して連絡が取れない
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納入図面や材質表記がファイリングされていない
・設計担当者の退職・不在
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担当者が異動または退職
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口頭伝承や現場の経験則だけで運用されていた
・製造元が海外・中小企業だった場合
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海外からの輸入機械や装置
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小規模な製造業者が個別設計していた
→つまり、図面も履歴もなく、材料の「手がかりゼロ」という状況が頻発しているのです。
それでも再製作が可能な理由
ここで気になるのが「なぜ材料不明でも再製作できるのか?」という点。
結論としては、『材質分析技術の進化 + 適切な代替材の選定』が組み合わさることで、
ほとんどの部品が再製作可能になります。
現物から材料を推定・特定する方法
リバースエンジニアリングでは、必要であれば以下の方法を組み合わせて材質を推定します。
蛍光X線分析(XRF)
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表面の元素組成(Fe, Cr, Ni, Mo, Cuなど)を定量分析
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鉄鋼/ステンレス/銅合金/アルミなどの大まかな分類が可能
例えば、ステンレスSUS304とSUS316の違いはMo(モリブデン)含有量で判断
硬度試験(HRB, HRC, HV)
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ブリネル硬さ/ロックウェル硬さなどから、熱処理の有無や強度を把握
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焼入れ材か、調質材か、一般材かを推定
※測定結果がHRC30前後 → 焼戻し調質鋼の可能性
比重測定・火花試験・磁性チェック
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特殊な合金や非鉄金属の場合に補助的に使用
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特に見た目が類似する銅合金/アルミ/ステンレスの判別に有効
「完全一致」ではなく「同等以上性能」を目指す
材質分析の結果、完全に元と同じ材料を特定できない場合もあります。
しかし、多くのケースでは同等以上の材料で十分に代替可能です。
例:
元の部品(材質不明) | 分析結果と代替提案 |
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黒皮の軸部品 | 炭素鋼 S45C(熱処理なし) |
銀白色の回転部品 | SUS304(非磁性) |
焼き入れシャフト | SKD11 or SUJ2(HRC58) |
※過剰設計にならない範囲で、コスト・加工性・入手性も加味して提案される
再設計する際のチェックポイント
単に同じ形状で作るのではなく、以下の観点から最適化設計することもできます:
・材料調達のしやすさ
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JIS材を使用することでコスト・納期が安定
・加工性の良さ
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不要に硬い材料を避け、切削しやすい材に変更
・耐久性と安全性のバランス
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応力解析を加味した設計見直し
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熱処理や表面処理で強度を補完
※材質特定=ゴールではなく、製品としてどう機能させるか?が本質
実際の事例と成果
【事例1】搬送装置の歯車(材質不明)
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状況:輸入設備の部品、図面なし、磁性あり
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分析:XRFでCr, Niを検出 → SUS420相当
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結果:SUS420J2で焼入れ加工、同等精度・強度で再製作
【事例2】レール部品(軟鋼か合金か不明)
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分析:硬度試験でHRC25、XRFでC, Mn, Si
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対応:S45C+高周波焼入れで再製作 → 組付けテスト合格
まとめ
「材料が不明だから、部品再製作はできない」と思い込んでいませんか?
実際は、
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・蛍光X線による元素分析
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・硬度試験による処理推定
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・使用環境からの材料選定
これらの技術を活用することで、高精度かつ高機能な代替製品の再製作が可能です。
・材料名が不明
・図面がなく情報ゼロ
・海外製機械で問い合わせ先がない
そんなときこそ、リバースエンジニアリングの出番です。