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旋盤加工と他加工法の連携:ハイブリッドアプローチによる製造可能性の拡大

NC旋盤加工
2025.07.23

 部品の形状が複雑化し、多機能化が進む現代において、単一の加工方法だけでは対応が難しいケースが増えています。旋盤加工を主軸としつつ、マシニング加工、研削加工、放電加工、熱処理、表面処理といった他の加工方法や処理技術と効果的に組み合わせる「ハイブリッドアプローチ(複合加工)」は、部品の製造可能性を大きく広げ、品質向上やコスト最適化にも貢献します。

 

旋盤加工と組み合わせられる代表的な加工法・処理技術
  1. 旋盤加工 + マシニング加工:
   o 概要: 円筒形状の基本部分を旋盤で加工した後、キー溝、タップ穴、平面部、側面ポケットなどをマシニングセンタで追加  工する、あるいはその逆のパターン。最も一般的な組み合わせの一つです。
   o メリット: それぞれの加工方法の得意分野を活かし、効率的かつ高精度に複雑形状部品を製作できます。複合加工機(ターニングセンタ)では、これらの工程を1台で完結することも可能です。

 

  2. 旋盤加工 + 研削加工:
   o 概要: 旋盤で大まかな形状と寸法に加工(荒加工・中仕上げ)した後、特に高い寸法精度、形状精度(真円度、円筒度など)、または極めて滑らかな表面粗さが要求される部分を研削盤(円筒研削盤、内面研削盤など)で精密に仕上げます。
   o メリット: 熱処理後の高硬度部品の仕上げや、ミクロンオーダーの超精密仕上げに対応できます。

 

  3. 旋盤加工 + 歯切り加工:
   o 概要: シャフトや円盤状の部品に旋盤加工を施した後、歯車形状を創成するためにホブ盤やギヤシェーパーなどの専用機で歯切り加工を行います。
   o メリット: モーター軸やギア部品など、回転伝達部品の製作に不可欠な組み合わせです。

 

  4. 旋盤加工 + 放電加工・レーザー加工:
   o 概要: 旋盤では加工が困難な微細な穴、複雑な内部形状、特殊な溝などを、ワイヤ放電加工や形彫り放電加工、あるいはレーザー加工で追加工します。
   o メリット: 硬すぎて切削できない材料や、工具が物理的に届かない箇所の加工が可能になります。

 

  5. 旋盤加工 + 熱処理(焼入れ、焼戻し、窒化など):
   o 概要: 部品の機械的性質(硬度、強度、耐摩耗性など)を向上させるために、旋盤加工の前または中間、あるいは後工程として熱処理を施します。熱処理による変形を見越した加工や、熱処理後の仕上げ加工が必要になる場合もあります。
   o メリット: 部品の耐久性や寿命を大幅に向上させることができます。

 

  6. 旋盤加工 + 表面処理(めっき、アルマイト、塗装、コーティングなど):
   o 概要: 耐食性の向上、耐摩耗性の付与、電気絶縁性、外観の美装などを目的に、旋盤加工後の部品表面に各種処理を施します。
   o メリット: 部品の機能性を高め、使用環境への適合性を広げます。

 

ハイブリッドアプローチを成功させるポイント

これらの組み合わせ加工を効果的に行うためには、以下の点が重要です。

• 工程設計能力: 各加工方法の特性を熟知し、最適な加工順序、中間公差、取り代などを設定できる高度な工程設計能力。
• 一貫管理体制: 複数の加工工程をスムーズに連携させ、品質と納期を一元管理できる体制。自社内で多くの工程をカバーできるか、信頼性の高い協力工場ネットワークを持っているか。
• 技術的なコミュニケーション: 設計者、各工程の技術者が密に情報を共有し、問題点を早期に発見・解決できるコミュニケーション能力。

 

旋盤加工と他の加工法を組み合わせることで、従来は製作が困難だったり、複数の業者に依頼する必要があったりした部品も、より効率的かつ高品質に、そして一貫して製作できるようになります。部品設計の初期段階から、こうしたハイブリッドアプローチの可能性を視野に入れ、多様な加工技術に精通した専門業者に相談することが、革新的な製品開発への近道となるでしょう。