押出成形金型における「スパイラル流路」の超高精度5軸加工:流体解析に基づく形状再現と表面品位の極致

製造業、特に医療用チューブや光ファイバー、多層フィルムなどの高度な押出成形(Extrusion Molding)の現場において、金型の「精度」は製品の品質を決定づける最重要因子です。
中でも、樹脂の合流や整流を司る「スパイラルマンドレル」や「スパイラルダイ」と呼ばれる部品の加工は、幾何学的な複雑さと求められる表面粗さの厳しさから、切削加工における「難所」の一つとされています。
本記事では、神奈川県横浜市を拠点に、難削材・複雑形状の精密加工を手掛ける株式会社関東精密が、なぜこのスパイラル流路加工において選ばれ続けるのか、その技術的背景を、材料工学、切削理論、そして計測技術の観点から徹底的に解剖します。
目次
- 1 1. 押出成形金型における「流路」の物理的機能と加工への要求
- 2 2. 難形状を攻略する5軸加工ストラテジー
- 3 3. 株式会社関東精密の加工事例:医療用多層チューブ用スパイラルダイ
- 4 4. なぜ、関東精密の技術が必要とされるのか(専門性と権威性)
- 5 5. 技術詳細:高精度金型加工を実現する要素技術一覧
- 6 6. よくあるご質問(Technical Q&A)
- 6.1 Q. 3Dモデルがなく、2D図面だけでもスパイラル形状の加工は可能ですか?
- 6.2 Q. 焼入れ後のSKD11(HRC60)への追加工はできますか?
- 6.3 Q. 既存の金型が摩耗したので、同じ形状で材質を変えて作り直したいのですが。
- 6.4 Q. 試作1個からでも対応してもらえますか?
- 6.5 Q. 表面処理(コーティングや窒化)まで一括でお願いできますか?
- 6.6 Q. 遠方(関東以外)からの依頼ですが、打ち合わせはどうなりますか?
- 6.7 Q. 航空宇宙部品のような複雑なインペラー形状も加工できますか?
- 6.8 Q. 納期はどのくらい見ておけば良いですか?
- 6.9 Q. 検査データはもらえますか?
- 7 7. 株式会社関東精密が選ばれる5つの理由
- 8 8. 技術相談・お問い合わせ
1. 押出成形金型における「流路」の物理的機能と加工への要求
押出成形において、溶融した樹脂(ポリマー)を均一に押し出し、偏肉や残留応力のないチューブやパイプを成形するためには、金型内部での樹脂流動が完全に制御されていなければなりません。ここで重要となるのが、金型コア部品に刻まれた「流路(チャンネル)」の設計と、それを忠実に再現する加工技術です。
1-1. スパイラルマンドレルの役割と幾何学的複雑性
ご提示いただいた画像のような、円錐状(テーパー)の側面に螺旋状(スパイラル)の溝が切られた形状は、一般的に「スパイラルマンドレルダイ」の心臓部に見られる形状です。この形状には明確な工学的意図があります。
・ウェルドラインの消失: 樹脂を螺旋状に回転させながら流すことで、合流部で発生しやすいウェルドライン(融着線)を分散・消失させ、製品の機械的強度を向上させる。
・円周方向の均一化: 樹脂の圧力と速度を円周方向で均一化し、チューブの偏肉を防ぐ。
・せん断発熱の制御: 適切な溝深さとピッチの変化により、樹脂へのせん断履歴をコントロールする。
この「テーパー面上の螺旋溝」は、3軸加工機では工具の干渉やアンダーカットの問題で加工が極めて困難、あるいは不可能です。さらに、溝の深さが入口から出口に向かって徐々に浅くなる(あるいは深くなる)「可変深度」のデザインが採用されることも多く、これは同時5軸制御加工機でなければ実現不可能な領域です。
1-2. 流体力学が求める「表面粗さ」の限界値
溶融樹脂は、高粘度の流体です。金型表面の微細な凹凸は、流動抵抗(圧力損失)となり、最悪の場合、樹脂の滞留(Dead Spot)を引き起こします。滞留した樹脂は炭化し、異物として製品に混入(ゲル化、焼け)する原因となります。
したがって、スパイラル溝の底面および側面には、単なる寸法精度だけでなく、Ra 0.1μm〜0.4μmといった鏡面に近い表面粗さが要求されます。これを手仕上げ(磨き)に頼ると、鋭敏なエッジがダレてしまい、流動解析通りの性能が発揮できなくなります。「機械加工のみでいかに磨きレスに近い面を出すか」が、関東精密の技術の見せ所です。
2. 難形状を攻略する5軸加工ストラテジー
このような複雑なスパイラル形状を加工するためには、最新鋭の5軸マシニングセンタがあれば良いというわけではありません。機械のポテンシャルを100%引き出すための「CAM戦略」と「工具選定」、そして「熱変位対策」が不可欠です。
2-1. 同時5軸制御による工具姿勢の最適化
画像のような部品を加工する際、最も重要なのが工具のベクトル制御(Tool Vector Control)です。
・周速の一定化: テーパー形状では、大径側と小径側で周速が異なります。5軸制御により、工具とワークの接触点を常に最適な切削速度が得られる位置に保ちます。
・工具有効長の短縮: ヘッドやテーブルを傾斜させることで、突き出しの短い(剛性の高い)エンドミルを使用可能にします。これにより、高硬度材の加工においても「びびり振動」を抑制し、高品位な面を実現します。
・ボールエンドミルの特異点回避: ボールエンドミルの先端(中心点)は周速がゼロであり、切削能力が著しく低くなります。5軸制御で工具を傾けることで、切れ味の良いR部分を常に加工点に当て続け、むしれのない光沢面を生成します。
2-2. スパイラル溝加工におけるCAMパスの設計思想
我々が採用しているCAM戦略の一例を技術的に解説します。
| 加工工程 | 戦略的ポイント | 目的と効果 |
| 荒加工 (Roughing) | トロコイド加工および高送り加工 | 工具負荷を一定に保ち、熱の蓄積を防ぎつつ、最大効率で体積を除去する。歪みの原因となる残留応力を最小限に抑える。 |
| 中仕上げ (Semi-Finish) | 等高線加工 + 削り代の均一化 | 仕上げ加工時の工具たわみを予測し、仕上げ代(stock)を0.05mm〜0.1mmレベルで均一に残す。 |
| 仕上げ加工 (Finishing) | スパイラルモーフィング加工 | 溝の始点から終点まで、ツールマーク(カッターパスの跡)がつなぎ目なく連続するように、一筆書きのパスを生成する。アプローチ/リトラクト痕を製品面に残さない。 |
2-3. 素材(マテリアル)に応じた切削条件のチューニング
押出金型には、耐食性と耐摩耗性が求められます。一般的には以下のような材料が使用されますが、それぞれの特性に合わせた加工条件のデータベースが当社には蓄積されています。
・SUS630 (析出硬化系ステンレス): 錆に強く、寸法変化が少ないが、粘り気が強く構成刃先ができやすい。→ コーティング超硬工具と油性クーラントの選定が鍵。
・SKD11 / SKD61 (ダイス鋼): 焼入れ後の加工(ハードミーリング)が求められるケースが多い。→ 高硬度材用CBN工具や、ナノレベルの構成刃先抑制コーティングを使用。
・ハステロイ / インコネル (耐食超合金): 特殊な薬液やスーパーエンプラ用。→ 極低速・高トルク加工と、徹底した工具摩耗管理が必要。
3. 株式会社関東精密の加工事例:医療用多層チューブ用スパイラルダイ
ここで、実際に当社が手掛けた類似案件の加工事例をご紹介します。これは、当社の「経験(Experience)」と「問題解決能力」を示すものです。
※守秘義務およびプライバシー保護のため、内容は一部変更しています
【事例】医療用カテーテル製造ライン向け 3種3層用分配マンドレル
・クライアント: 精密射出成型メーカー(東京都)
・素材: SUS316L(耐食性を最優先)
・製品サイズ: φ80 × L150mm
・形状特徴: テーパー角15°の側面に、深さが徐々に変化する3本の独立したスパイラル流路が存在。流路断面は半円ではなく、特殊な放物線形状。
直面した課題:工具の「逃げ」による形状精度の悪化
SUS316Lは加工硬化しやすく、粘り強い難削材です。当初の試作(他社加工)では、スパイラル溝の深さが深くなるにつれて工具が逃げてしまい(たわんでしまい)、設計値に対して最大0.05mmの浅い加工となってしまいました。また、溝の底面にびびりマークが発生し、樹脂の流れを阻害していました。
関東精密のソリューション
1. 工具剛性の見直し: 標準的なロングネックボールエンドミルから、テーパーネック形状の高剛性エンドミルへ変更。
2. ネガティブオフセット加工: 工具の逃げ量をあらかじめ予測し、CAMデータ上で0.01mm単位の補正(食い込み方向へのオフセット)をかける「予測補正加工」を実施。
3. 仕上げパスの分割: 通常1回で行う仕上げを、「底面」と「側面」に分割。それぞれの切削抵抗のベクトルを計算し、工具が最も安定する角度(リード角・チルト角)を再設定。
結果
幾何公差(輪郭度)0.005mm以内を達成。表面粗さは手磨きなしでRa 0.2μmを実現しました。クライアントの流動試験において、「理論値通りの吐出バランスが得られた」と極めて高い評価をいただき、その後の量産金型もすべて受注いたしました。
4. なぜ、関東精密の技術が必要とされるのか(専門性と権威性)
神奈川県・横浜エリアには多くの加工会社が存在しますが、なぜ「難易度の高い金型部品」において当社が指名されるのか。その理由は、設備だけでなく「計測」と「品質保証」への執念にあります。
4-1. 「削れる」だけでなく「測れる」という強み
「加工できているつもり」が最も危険です。特に3次元曲面を持つスパイラル形状は、ノギスやマイクロメーターでは測定できません。
株式会社関東精密では、以下の体制で精度を保証します。
・最新鋭三次元測定機(CMM): 倣い測定により、スパイラル溝の断面形状を連続的にスキャン。設計3Dモデルとの誤差をカラーマップで可視化します。
・機上計測システム: 加工機の中でワークを外さずに計測を行うことで、チャッキング誤差を排除した追い込み加工(補正加工)を可能にします。
・非接触画像測定: 接触式プローブが入らない微細な溝や、傷つきやすい鏡面部分の測定に対応。
4-2. 熱変位を制する温度管理された工場環境
金属は温度変化により伸縮します。例えば、100mmの鉄は1℃の温度変化で約1μm伸びます。ミクロンオーダーの精度を保証するため、当社の工場は、徹底した空調管理下にあります。
機械本体の温度、クーラントの温度、そして素材の温度を同調させることで、熱変位による加工誤差を物理的限界まで排除しています。
4-3. 設計者の意図を汲み取る「リバースエンジニアリング」と提案力
図面が存在しない古い金型の更新や、海外製金型の国産化(デッドコピー)の依頼も増えています。
当社では、現物を高精度3Dスキャンし、点群データからCADモデルを復元するリバースエンジニアリングに対応しています。単に形状をコピーするだけでなく、「ここは摩耗しているから修正する」「ここは加工上の逃げが必要」といった、製造のプロとしての知見を盛り込んだ「最適化リバース」を提供できる点が、設計開発担当者様から信頼を得ている理由です。
5. 技術詳細:高精度金型加工を実現する要素技術一覧
読者の皆様が抱える具体的な課題に対し、当社がどのような技術的アプローチを持っているか、整理いたしました。
| 技術要素 | 具体的な課題 | 当社のソリューション |
| 超硬・特殊鋼加工 | 硬度HRC60以上で工具が持たない | CBN工具の適正使用と、高剛性マシニングセンタによる低振動加工。 |
| 薄肉・変形形状 | クランプすると歪む、削ると反る | 独自の「応力解放パス」と、特殊治具(真空チャックや低融点合金固定)の活用。 |
| 深穴・細穴加工 | 冷却水管の加工でドリルが折れる | 高圧クーラントシステム(7MPa〜)とガンドリル/BTA加工のノウハウ。 |
| 鏡面切削 | 磨き工程を短縮したい | 単結晶ダイヤモンド工具(MCD)やPCD工具を用いた、ナノレベルの切削仕上げ。 |
| 幾何公差保証 | 同軸度、真円度が出ない | ワンチャッキング多面加工による積み上げ公差の排除。 |
6. よくあるご質問(Technical Q&A)
設計者、購買担当者の皆様から、現場レベルでよくいただくご質問とその回答をまとめました。
Q. 3Dモデルがなく、2D図面だけでもスパイラル形状の加工は可能ですか?
A. はい、可能です。2D図面に記載された断面形状、ピッチ、リード角などのパラメータから、当社内で3Dモデルを構築し、加工プログラムを作成いたします。流路計算に必要な容積計算などもサポート可能です。
Q. 焼入れ後のSKD11(HRC60)への追加工はできますか?
A. 可能です。放電加工(EDM)だけでなく、CBN工具を用いた直彫り切削加工により、放電変質層のない高精度な面を短納期で仕上げることができます。
Q. 既存の金型が摩耗したので、同じ形状で材質を変えて作り直したいのですが。
A. リバースエンジニアリングにて対応いたします。例えば、現状の材質よりも耐摩耗性の高い粉末ハイス鋼や、耐食性の高い特殊ステンレスへの材質変更(VA/VE提案)も行っています。
Q. 試作1個からでも対応してもらえますか?
A. もちろんです。株式会社関東精密は、研究開発用の試作1個から量産まで、柔軟に対応いたします。特に開発段階の「加工可否の相談」から参画させていただくケースが多いです。
Q. 表面処理(コーティングや窒化)まで一括でお願いできますか?
A. はい、協力工場ネットワークを通じ、TiN、TiCN、DLC、クロムメッキ、窒化処理など、金型の用途に最適な表面処理を含めて完品納入いたします。
Q. 遠方(関東以外)からの依頼ですが、打ち合わせはどうなりますか?
A. ZoomやTeamsを用いたオンラインミーティングで、画面共有を行いながら3Dモデルを確認し、詳細な打ち合わせが可能です。現物は宅配便にて全国対応しております。
Q. 航空宇宙部品のような複雑なインペラー形状も加工できますか?
A. はい、5軸加工機の性能をフルに活かせる分野です。ブレードの薄肉加工やアンダーカット部も、シミュレーションソフト(VERICUT等)で安全性を確認した上で加工します。
Q. 納期はどのくらい見ておけば良いですか?
A. 形状と材質によりますが、材料在庫がある場合、通常2週間〜3週間程度です。特急対応が必要な場合は、機械の稼働状況を調整して可能な限り対応いたしますので、まずはご相談ください。
Q. 検査データはもらえますか?
A. はい、必要であれば三次元測定機による測定レポート、材料証明書(ミルシート)、熱処理証明書など、ご指定の品質管理書類を提出いたします。
7. 株式会社関東精密が選ばれる5つの理由
最後に、改めて当社が多くのプロフェッショナルに選ばれている理由をまとめます。
1. 横浜・川崎エリア屈指の5軸加工設備群: 最新のマシニングセンタを複数台保有し、複雑形状の量産にも対応できるキャパシティを持っています。
2. 熟練の「匠」とデジタルの融合: ベテラン職人の切削音を聞き分ける感性と、若手エンジニアの最新CAD/CAM技術が融合し、常に技術革新を続けています。
3. 設計から治具製作までの一貫対応: 製品を加工するための「治具」自体を社内設計・製作できるため、特殊形状のワークでもクランプ方法を考案し、加工を実現します。
4. 難削材へのあくなき挑戦: 「他社で断られた」という案件こそ、我々の燃える領域です。チタン、インコネル、ハステロイ、セラミックスなど、あらゆる素材に挑戦してきました。
5. 徹底した顧客伴走型スタイル: ただ図面通りに作るだけでなく、「ここのRを大きくすればコストが下がる」「この公差は機能上必要か?」といった、製造視点でのフィードバックを行い、お客様と共に製品価値を高めます。
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8. 技術相談・お問い合わせ
押出成形金型のスパイラル流路加工、難削材の超精密加工、リバースエンジニアリングなど、製造上の課題解決は、株式会社関東精密にお任せください。
「図面がない構想段階でのご相談」も歓迎します。製造のプロフェッショナルとして、貴社のプロジェクトを成功に導くための最適な工法と品質をご提案いたします。
難削材の加工限界でお困りの際は、ぜひ株式会社関東精密へお問い合わせください。












