手作業に頼る時代は終わった?
【5軸マシニングによる“段取りレス”化で変わる切削加工の現場】
目次
なぜ今、加工現場は“段取り時間”に注目するのか?
製造業の現場では「設備を止めないこと」が最大の効率化とされてきました。しかし、実際の加工現場では、【設備が止まっている“段取り中”の時間】が少なくないことに、多くの現場担当者が頭を悩ませています。
・「図面通りに加工するために何度もセッティングを変えている」
・「加工のたびにワークを付け替えて位置を合わせている」
・「機械が空いていても、段取りのために動かせない」
こうした問題を放置すると、納期遅延や生産性の低下につながるだけでなく、現場の人手不足とも相まって工数過多に陥ります。
そのような背景から、【“段取りの削減”=段取りレス化】が重要視されるようになりました。そして、まさにその課題解決の鍵を握るのが【5軸マシニング】なのです。
5軸マシニングが変える、段取りと切削加工の常識
■ 従来の3軸加工では、なぜ段取りが多くなるのか?
従来の3軸マシニングセンタでは、X・Y・Zの直線移動で加工を行うため、ワークを斜めに削ったり、背面や側面を加工したりするには、【都度、ワークを外して再度固定(再チャック)】する必要があります。
この「付け替え→位置出し→工具交換→検査」の流れが段取り作業の正体であり、【1つの製品に対して2~5回の段取り】が必要になることも少なくありません。
そのたびに位置ズレや加工ミスのリスクも生じます。
■ 5軸マシニングは“ワークを動かさない”
【5軸マシニング】では、工作機械の方で工具の角度やワークの向きを変えられるため、【一度の段取りで多面加工が完結】します。
・斜め穴や傾斜面の加工も、ワークを傾けずに対応可能
・ワークを再固定しないため、位置ズレが起きにくい
・面同士の相対精度が保たれやすく、後工程の調整が不要
つまり、「人の手で段取りしていた工程」を、【機械が自動的に行ってくれる】のが5軸加工の大きな特徴です。
ケーススタディ:段取りレス化がもたらした効果
ここで、ある機械部品メーカーでの事例をご紹介します。
● 加工対象:アルミ製の精密筐体部品(側面×5、底面×1の6面加工)
● 旧工程:3軸加工+ワーク再固定を3回(段取り時間 合計90分)
● 5軸導入後:一回の段取りで全6面加工(段取り時間 合計25分)
結果的に、【段取り時間は65分短縮、工程全体の工数は約40%削減】されました。さらに、ワークの取付誤差による不良率が下がり、品質も安定。
このように、段取りが多かった案件ほど、【5軸マシニングによる“切削加工の効率化”】が目に見える成果として表れやすいのです。
なぜ今、“段取り削減”が重要なのか?
日本の製造業は今、大きな構造変化に直面しています。
・技能継承が難しく、段取りできるベテランが減少
・多品種少量生産が加速し、段取り頻度が増加
・顧客の納期短縮要望に追われ、現場が疲弊
こうした状況の中で、「段取りのうまさ」に依存した加工体制は限界を迎えつつあります。
【段取り時間を削減し、少人数でも対応可能な工程に変えること。】
それこそが、これからの中小製造業が競争力を維持していくための要諦です。
まとめ:まずは、段取り工数の「見える化」から
段取りは製品価格に含まれにくく、管理コストの中で見落とされがちです。しかし、それが【積もれば大きな時間と工数のロス】につながります。
まずは社内で、「どの加工にどれくらい段取りがかかっているか?」を洗い出してみましょう。その上で、「5軸で一括加工できないか?」「加工順序の見直しが可能か?」といった視点で改善策を検討することで、大きな効率化が見込めます。
特に【5軸マシニング】を導入・活用している加工会社では、【段取り削減の実績やノウハウを持つパートナー企業】が多く、現場目線での提案も受けやすいのが利点です。
【「段取りで一日が終わる…」そんな悩みを抱えている現場ほど、一度“5軸という選択肢”を検討してみてはいかがでしょうか?】