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“後戻りゼロ”を設計する 検査・品質保証・トレーサビリティから逆算するリバースエンジニアリング

開発、設計
リバースエンジニアリング
2025.11.11

◆品質は最後に作るものではない

図面のない部品を現物から再製作するリバースエンジニアリングでは 多くの現場で「作ってから測る」「不具合が出てから直す」が常態化しています。しかし、後工程での修正はコストも納期も跳ね上がります。

本稿では 品質を最後に“検査で取りに行く”のではなく 最初から“設計する”方法を解説します。

検査計画 品質保証体制 トレーサビリティを起点にプロジェクトを組み立てることで 後戻りゼロに近づけます。

 

 

◆品質の起点はCTQの定義から

CTQ【※Critical To Quality】重要品質特性 を最初に定義します。

ここが曖昧なままモデリングや加工に入ると 高精度で“どうでもいい寸法”を作る一方で 本当に効く寸法を外す事態が起こります。

一、 機能連鎖を洗い出す 回転 同軸 嵌め合い 位置度 面圧など
二、 CTQを三から五個に絞る 公差と測定方法を紐づける
三、 CTQ以外は意識的に緩める 面粗さや外観も要否を判断

CTQは設計 加工 検査の共通言語です ここで合意を作るのが取り纏めの最初の仕事です

 

 

◆検査は工程設計の一部である

測るための面や基準が設計されていなければ 正しい測定はできません。

検査は後付けではなく 工程設計の一部として組み込みます。

一、 検査基準面と加工基準面を一致させる 治具の拘束条件も同一に
二、 仕上げ代と測定点をあらかじめモデルにPMIとして付与
三、 CMM 三次元測定 の測定順序を工程表に記載 温度条件も明示

検査のしやすさは そのまま品質の作りやすさに直結します

 

 

◆トレーサビリティは“記録の設計”で決まる

図面レス案件は 後から原因を辿れないことが最大のリスクです。トレーサビリティはシステムではなく運用設計で決まります。

一、 ロット概念を定義する 試作 初回改修 量産移管 などの版を明確化
二、 写真と寸法統計のセット保管 測定票はXbar Rやヒストグラムで俯瞰
三、 変更理由と影響範囲をECR ECOで記録 口頭決定は禁止

この三点が守られるだけで 問題解析と再現実験の速度が段違いに上がります

 

 

◆モデリングは検査と加工の“翻訳”である

3Dモデルは見た目の形状データではなく 加工と検査が解釈できる翻訳媒体であるべきです。

一、 一次 二次 三次基準をモデル空間で明示 由来を注記
二、 GD T 幾何公差 をPMIで付与 2D図面は参照にまわす運用も選択肢
三、 摩耗補正前後の二モデルを管理 意図が混ざらないよう版を分ける

モデルが“読むだけで意図が分かる”状態だと 手戻りが劇的に減ります。

 

 

◆加工で品質を作る 荒 中 仕上の品質ゲート

加工の各段階に品質ゲートを設定し 次工程へ不良を流さない仕掛けを作ります。

一、 荒取りゲート 取りしろ均一 応力解放前提 基準面の平面度を確認
二、 中仕上げゲート 基準再作成後にCTQの一次評価 CMMで傾向を把握
三、 仕上げゲート 検査基準と同一拘束で最終仕上げ 面粗さと形状精度を同時に

ゲートでの合否と是正アクションは 作業票ではなく“品質票”として記録します。

 

 

◆検査治具と作業治具の分離設計

検査と加工を同じ治具で行うと観察者バイアスが入りやすく不具合を見逃します。

一、 検査専用治具を設計し 拘束条件を図示する
二、 ゴー ノーゴーで現場判定を素早く CTQはCMMで裏取り
三、 温度安定のルールを作る 入室後何分で測るかを標準化

検査の再現性が上がると 議論は感覚からデータに移ります。

 

 

◆品質コストの見える化 不良を早期発見する仕掛け

品質不良のコストは 時間が経つほど指数関数的に増加します。早期発見のための指標と仕掛けを用意します。

一、 先行指標 ファーストピース合格率 中仕上げ時点のCTQ合格率
二、 遅行指標 最終合格率 再加工率 返品 クレーム件数
三、 しきい値でアラートを出す 品質レビュー会議は週次で実施

指標は三つ程度に絞り 現場で見える位置に掲示します。

 

 

◆サプライヤと“品質の約束”を交わす

図面レスの再製作では 外注や協力工場との品質のすり合わせが肝です。契約書より先に合意すべきは実務の約束事です。

一、 CTQの定義と測定方法 検査票のフォーマットを共有
二、 不適合時の是正フロー 費用負担とリードタイムの扱い
三、 データの所有権と秘匿範囲 図面 モデル 検査票 写真の扱い

品質の約束が明確だと トラブルは起きても揉めません。

 

 

◆ケーススタディ 検査を先に設計して後戻りをなくす

背景:古い搬送ユニットのシャフトを現物から再製作 図面と材質情報は無し 初回は寸法ばらつきで嵌合不良が多発

対策:CTQを嵌合径 同軸度 端面の直角度に絞り 検査基準と拘束を統一 中仕上げでCMM評価をゲート化 検査専用治具を新規設計 変更はECR ECOで文書化

結果:二回目の製作で最終合格率は九十二パーセントに改善 再加工率は三分の一に低減 納期遅延ゼロで量産復帰。

 

 

◆導入の手順 まずは一案件で試す

一 CTQ三から五個を定義する A3の品質仕様書を作る
二 検査基準と拘束条件を図示する 検査専用治具を簡易でも用意
三 中仕上げゲートを設け CMMで傾向を確認する
四 変更履歴をECR ECOで残す 写真と統計をセットで

この四点を一案件で回すだけで 後戻りは確実に減り 品質会議の質が変わります。

 

 

◆品質は“構造”で作る

リバースエンジニアリングは 技術の足し算ではなく 構造の設計です。検査計画 品質保証 トレーサビリティを最初に決め 取り纏めがその運用を守ることで 後戻りは限りなくゼロに近づきます。図面がなくても 問題は構造で解けます 次の案件で 今日から始めてみてください。

お問い合わせは写真一枚 現物一点からで構いません。品質仕様書の雛形と検査治具案をご提案いたします。

 

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