平面研削と他加工法(フライス加工・研磨)との比較と使い分け
部品の平面を作り出す加工方法には、平面研削加工の他にも、フライス加工(ミーリング)や研磨加工(ラッピング、ポリッシングなど)があります。それぞれに特徴があり、要求される精度、表面粗さ、加工能率、コスト、そして加工対象の材質などに応じて、最適な方法を選択し、あるいは組み合わせて使用することが重要です。
1. フライス加工(ミーリング)との比較・使い分け
• フライス加工(平面フライス):
・特徴: 回転する複数の切れ刃を持つフライス工具を使用し、比較的大きな取り代(削り代)を効率よく除去して平面を創成します。NCフライス盤やマシニングセンタが用いられます。
・メリット: 加工速度が速く、研削に比べて能率が高い。比較的柔らかい材料からある程度の硬さの材料まで対応可能。
・デメリット: 研削ほどの高い寸法精度や滑らかな表面粗さは得にくい。工具の切れ刃によるカッターマーク(切削痕)が残りやすい。焼入れ後の高硬度材の加工は困難。
使い分け:
平面研削の前工程として: 大まかな形状出しや、研削代を均一にするための下加工として。
精度要求が比較的緩やかな部品の平面仕上げ: 一般的な機械部品の取り付け面など。
軟質材~中硬度材で、高い面粗度を必要としない場合。
• 平面研削加工:
・特徴: 回転する砥石を使用し、微細な砥粒で表面を削り取るため、高精度な寸法と滑らかな表面粗さを実現します。
・メリット: 高い平面度、平行度、寸法精度が得られる。優れた表面粗さが得られる。焼入れ鋼などの高硬度材の精密加工が可能。
・デメリット: フライス加工に比べて加工能率は低い(一度に削れる量が少ない)。
使い分け:
高精度な平面仕上げ、鏡面に近い仕上げが要求される場合。
焼入れ鋼など、フライス加工が困難な硬質材料の仕上げ。
薄物部品の精密な厚みだし。
ゲージや精密機械部品の基準面加工。
2. 研磨加工(ラッピング、ポリッシング)との比較・使い分け
• 研磨加工(ラッピング、ポリッシングなど自由砥粒加工):
・特徴: ラップ盤(定盤)と工作物の間に、砥粒(ダイヤモンド、アルミナなど)と加工液(ラップ液)を介在させ、相対運動させることで表面を極めて滑らかに仕上げる方法(ラッピング)。または、布や革などでできたバフに研磨剤を付けて表面を磨き上げる方法(ポリッシング)。
・メリット: 平面研削よりもさらに高精度な平面度(λ/10レベルも可能)や、極めて滑らかな鏡面仕上げ(Ra数nmレベル)が得られる。加工変質層が少ない。
・デメリット: 加工能率が非常に低い。除去できる量はごく僅か。高度な技術と専用設備が必要。
・使い分け:
平面研削の後工程として、さらに高度な平面度や表面粗さが要求される場合。
光学部品(レンズ、プリズム、ミラー)、半導体ウェハー、水晶振動子、精密ゲージなどの超精密仕上げ。
極めて高いシール性や摺動性が求められる部品。
• 平面研削加工:
・特徴・メリット・デメリット: 上述の通り。
・使い分け:
ラッピングやポリッシングの前工程として、ある程度の平面度と表面粗さを確保する。
一般的な精密部品で、ラッピングほどの超高精度は不要だが、フライス加工では不十分な場合の仕上げ。
適切な加工方法の選択
部品に求められる最終的な品質(寸法精度、形状精度、表面粗さ)、コスト、納期、そして材質の特性などを総合的に考慮し、これらの加工方法を単独で用いるか、あるいは複数の方法を組み合わせて工程設計を行うかを決定します。例えば、「フライス加工(荒加工)→平面研削加工(中仕上げ・仕上げ)→ラッピング(超仕上げ)」といった工程フローが考えられます。
加工方法の選定に迷う場合は、それぞれの技術に精通した専門業者に相談し、部品の要求仕様を伝えることで、最適な加工プロセスの提案を受けることが重要です。