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図面がない部品を復元!リバースエンジニアリングのプロセス解説

リバースエンジニアリング
2025.06.03

「古い機械の部品が壊れたが、図面がなくて困っている」「現物はあるが、データ化して再製作したい」といったニーズに応えるのが、リバースエンジニアリングによる部品復元です。ここでは、図面がない状態から部品を復元する際の、一般的なリバースエンジニアリングのプロセスをステップごとに解説します。

 

ステップ1

対象部品の受領と事前調査

まず、復元対象となる現物部品をお預かり(または現地で確認)し、その状態(破損状況、摩耗度など)、材質、おおよその寸法、求められる機能や精度などをヒアリングします。この段階で、リバースエンジニアリングの目的(完全な複製か、一部改良かなど)を明確に共有することが重要です。

 

ステップ2

3D形状測定・データ取得

部品の形状をデジタルデータとして取り込みます。主な手法は以下の通りです。

 

  • 3Dスキャニング:
    • ・ハンディタイプ3Dスキャナ: 複雑な自由曲面を持つ部品や、大型で移動が困難な部品の測定に適しています。レーザー光やパターン光を対象物に照射し、その反射を捉えて三次元座標の点群データを取得します。
    • ・据え置き型3Dスキャナ(三次元測定機連動型など):
    • より高精度な測定が可能です。対象物を回転テーブルに乗せて自動でスキャンしたり、プローブで接触測定したりするタイプもあります。
  • ・精密寸法測定:
  • ノギス、マイクロメータ、ハイトゲージ、シリンダーゲージ、三次元測定機(CMM)などを用いて、重要な箇所の寸法を精密に測定します。3Dスキャンデータだけでは捉えきれない微細な寸法や幾何公差の情報を補完します。

 

ステップ33D CADモデリング

取得した点群データや測定値を基に、3D CADソフトウェア上で部品の三次元モデルを作成します。

  • ・データ処理: 3Dスキャンで得られた点群データは、ノイズ除去や位置合わせなどの前処理を経て、メッシュデータ(ポリゴンデータ)に変換されます。
  • ・モデリング: メッシュデータを参照しながら、CAD上でソリッドモデルやサーフェスモデルを構築していきます。単にスキャンデータをなぞるだけでなく、設計意図を汲み取り、幾何学的に整合性の取れた「きれいな」データを作成することが重要です。摩耗している部分は元の形状を推測して復元したり、破損箇所は修復したりします。
  • ・図面化(必要な場合): 作成した3Dモデルから、製造に必要な2D図面(寸法、公差、材質、表面処理などを記載)を作成することも可能です。

ステップ4:材質分析・特定(必要な場合)

部品の材質が不明な場合や、同等以上の性能を持つ材料で代替したい場合は、材質分析を行います。蛍光X線分析(XRF)、発光分光分析(OES)、硬度試験などにより、化学成分や機械的特性を特定し、適切な材料を選定します。

 

ステップ5:試作・検証

作成した3Dデータや図面に基づき、まずは試作品を製作します(3Dプリンタによる形状確認モデルや、実材での切削加工など)。試作品で寸法精度、嵌合状態、機能などを検証し、問題があれば設計データにフィードバックして修正を行います。この検証プロセスを繰り返すことで、最終製品の完成度を高めます。

 

ステップ6:本製作・納品

検証済みのデータを基に、最終的な部品を製作し、必要な検査を経て納品となります。

 

 

リバースエンジニアリングのプロセスは、対象部品の複雑さ、要求される精度、材質などによって、各ステップの内容や期間が変動します。信頼できる専門業者と密にコミュニケーションを取りながら進めることが、部品復元プロジェクト成功の鍵となります。