同心度が狂うのはなぜか?~旋盤加工で発生する“芯ズレ”の原因と防ぎ方~
「公差内に入っているのに、組んだらブレる」
これは、旋盤加工でよくあるトラブルの一つです。
見た目には完璧でも、回転させたとたんに「ブレ」が生じる。
精密な装置であればあるほど、この“同心度”の狂いが性能を左右します。今回は、旋盤加工における同心度の不良原因と、現場での具体的な防止策を解説します。
目次
★ よくある症状と発見タイミング
・組立後に軸がぶれる、モーターが異音を出す
・回転体の振れが発生し、バランスが取れない
・センサー誤作動や製品の異常停止が起きる
多くの場合、これらは「加工精度不足」ではなく、「チャッキングや芯出し時のクセ」が原因であることがほとんどです。
★ 原因① センタリングミス
旋盤加工では、材料をチャックで掴んで回転させる際に“芯”を合わせる必要がありますが、
・六爪チャックでの締めすぎ
・剛性の低い材料に過大な把握力をかけた
・センタードリルがズレた位置に打たれた
といった小さなミスが積み重なり、加工後の部品に“微妙な芯ズレ”が発生してしまいます。
★ 原因② 段取り替えによるズレ
片側加工 → 反転 → 反対側加工
この段取り変更のタイミングで、芯が合わなくなるケースもよくあります。
特に多いのが、
・把握面に異物が噛んでいた
・バックフェース基準が安定していない
・振れ調整が十分でなかった
といった要素が重なると、「一方は真円・反対側は偏心」という状況になりがちです。
★ 対策① 同一チャック内で完結できる設計提案
理想的には、1チャッキングで加工が完了する設計が望ましいです。
外注先と連携して、加工工程を減らすような“図面改善”を検討するのも有効です。
・センタ穴使用 → 両端加工を同芯で行う
・フェイスドリル → センタ基準の精度UP
・芯押し台の活用 → 加工中のたわみ抑制
など、機械側で安定性を確保する方法は多くあります。
★ 対策② 加工現場での対応力
加工者の判断力が問われる場面もあります。
・チャックするたびにダイヤルゲージで芯ブレ確認
・測定後の「補正切削」で軸精度を追い込む
・シムや段差を使った手動調整で芯を揃える
これらは熟練工でなければ判断が難しい領域ですが、旋盤加工における「芯ブレ対策の肝」です。
★ まとめ:図面には書けない“芯合わせ”の世界
同心度のズレは、寸法公差とは異なる【動的な精度】です。
現場での段取り・把握・判断ミスによって大きな差が生まれるため、依頼側としても
・「この部品は回転体である」
・「この軸はセンサー読み取り対象である」
といった使用意図を伝えることで、加工側がより慎重な工程設計を行うことができます。