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初めての「図面なし部品製作」依頼ガイド|リバースエンジニアリングの依頼前に準備すべき5つのこと

リバースエンジニアリング
2025.08.03

【こんなお悩みありませんか?】
・「生産設備の重要部品が壊れた!でも、図面がどこにもない…」

・「メーカーが製造を終了してしまい、交換部品が手に入らない…」
・「海外製の装置で、図面の取り寄せや部品の調達が困難…」

 

製造現場の担当者や経営者の皆様にとって、図面のない部品の調達は、頭を抱える大きな問題ではないでしょうか。生産ラインが止まるリスクを前に、焦りを感じていらっしゃるかもしれません。

しかし、ご安心ください。その問題、『リバースエンジニアリング』という技術で解決できます。

 

リバースエンジニアリングとは、現物(部品)を3Dスキャナなどで精密に測定し、そのデータからCADデータ(デジタル図面)を起こして、全く同じもの、あるいは改良したものを製作する技術です。

「専門家に相談したいけど、何から伝えればいいか分からない…」
そんな不安を解消するために、この記事では、リバースエンジニアリングを依頼する前に、お客様側でご準備いただくとスムーズに進む5つのポイントを、製造のプロである我々の視点から、具体的に解説します。

少し準備をしておくだけで、見積もりの精度が格段に上がり、納期短縮やコスト削減にも繋がります。ぜひ、お手元に問題の部品をご用意しながら読み進めてみてください。

 

 

準備1:現物の「状態」を正確に把握する

まず、すべての基本となる「現物」の状態を詳しく確認しましょう。

・破損・摩耗はありますか?
 もし破損している場合、どの部分が、どのように壊れていますか? 欠けた破片は残っていますか?(実は、バラバラの破片からでもデジタル上で復元できる場合があります)
・長年の使用で摩耗している場合、再現したいのは「摩耗した今の状態」ですか?それとも「新品だった頃の本来の形状」ですか?
・写真で記録を残しましょう
・スマートフォンで構いませんので、部品の全体像がわかる写真、特徴的な部分のアップ写真、破損箇所の写真など、複数の角度から撮影しておくと、問い合わせ時に非常に役立ちます。

 

※プロの視点
破損や摩耗がある場合、「本来の形」を推測しながらデータを修正していく作業が不可欠です。どこまでが本来の形状で、どこからがダメージなのか。この情報があるだけで、我々技術者は、より正確な復元データを作成できます。

 

 

準備2:部品の「素性」と「役割」を明らかにする

その部品が「何者」で「どんな仕事をしているか」を教えていただくことは、形状をコピーする以上に重要です。

・どの装置の、どの部分で使われていますか?
(例:「〇〇社のプレス機の、金型を固定するクランプ部分の部品」など)
・その部品の具体的な役割は何ですか?
・力を伝える(動力伝達)、何かを支える(支持)、位置を決める(位置決め)、液体や気体を送る(流路)など。
・隣接する部品(相手部品)はありますか?
・はめ合い(勘合)の関係にある部品の情報は、公差(許容される寸法の誤差)を決定する上で極めて重要です。

 

※プロの視点
単に形をスキャンしてコピーするだけでは、本当に機能する部品は作れません。例えば、モーターの軸を受け止める部品なら、軸と接する内径の精度が最も重要になります。部品の役割を理解することで、我々は「どこが性能の肝となる寸法なのか」を判断し、メリハリのついた、コスト的にも最適な設計・製造が可能になるのです。

 

 

準備3:求める「精度」と「品質」の基準を伝える

「とにかく高精度で!」というご要望は、時にオーバースペックとなり、不要なコストアップに繋がることがあります。

・特に重要な部分はどこですか?
・部品の全面を$ \pm 0.01\text{mm} $といった高精度で仕上げる必要はありますか? 摺動部や、はめ合い部など、機能的に重要な箇所はどこでしょうか。
・表面の仕上がり(表面粗さ)に要望はありますか?
・見た目の美しさが必要ですか? それとも、オイルシールの相手など、機能的に滑らかさが必要ですか? 機械加工の跡が残っていても問題ない部分ですか?
・もし公差の指示があればご提示ください
もし既存の資料などで公差の指示があれば、ぜひご提示ください。不明な場合でも、前述の「役割」を教えていただければ、最適な公差をこちらからご提案します。

 

※プロの視点
精度とコストはトレードオフの関係にあります。重要でない部分の精度を緩和することで、加工時間や検査コストを大幅に削減できるケースは少なくありません。我々は、お客様の予算内で最高のパフォーマンスを発揮する部品を作るため、こうした「勘所」を大切にしています。お客様の製品価値を損なわないコストダウン提案も、我々の重要な役割です。

 

 

準備4:「材質」と「熱処理・表面処理」の情報を集める

部品の強度や耐久性を決めるのが、材質と各種処理です。

・材質は分かりますか?
・鉄、ステンレス、アルミ、銅、樹脂など、大まかな種類でも構いません。(例:図面の材質欄に「S45C」「A5052」といった記号があれば、それが材質名です)
・不明な場合のヒント
・磁石はつきますか?
・見た目の色は何色ですか?(銀色、金色、赤みがかった色など)
・重いですか?軽いですか?
・熱処理や表面処理はされていますか?
・表面だけが硬くなっている(焼入れ)、錆びないようにメッキが施されている(クロムめっき、ニッケルめっき)、色がつけられている(アルマイト、塗装)などの情報があれば教えてください。

 

※プロの視点
もし材質が全くの不明でも、専門の分析装置(XRF分析計など)で特定することも可能です(別途費用がかかります)。しかし、お客様から頂く「磁石がつく」「アルミよりは重い」といった少しの情報が、材質を特定する大きなヒントになり、余計な分析コストを削減できます。また、現状の材質よりも、さらに高耐久なものや、軽量なもの、コストの安いものなど、より良い材質を提案できる場合もあります。

 

 

準備5:必要な「数量」と「希望納期」を整理する

最後に、ビジネスとしてのご要望をお聞かせください。

・必要な数量はいくつですか?・
・まずは試作として1個だけ必要ですか? それとも、予備を含めて複数個必要ですか?
・今後、定期的にリピート発注する可能性はありますか?
・希望する納期はいつですか?
・「〇月〇日までに、必ず必要」という絶対的な期限はありますか?
・もし納期に余裕があれば、コストを抑えた製造方法を選択できる可能性があります。

 

※プロの視点
1個だけ作るのか、100個作るのかによって、最適な加工方法や材料の仕入れ方が全く異なります。数量は、単価を決定する非常に大きな要素です。また、納期についても、正直にお伝えいただけると大変助かります。特急対応も可能ですが、その分コストが上昇する場合があります。お客様の状況に合わせて、複数の選択肢をご提案することも可能です。

 

 

まとめ:準備が成功の鍵。さあ、次のステップへ

ここまでお疲れ様でした。
図面のない部品製作をリバースエンジニアリングで依頼する前に準備すべき5つのポイントを、もう一度おさらいしましょう。

 

1. 現物の状態:破損・摩耗の状況を把握し、写真で記録する。
2. 部品の素性:装置の中での役割、相手部品の情報を明らかにする。
3. 求める精度:重要な部分とそうでない部分を切り分け、品質基準を伝える。
4. 材質・処理:分かる範囲で材質や表面処理の情報を集める。
5. 数量・納期:ビジネスとしての要求を整理する。

 

いかがでしょうか。これだけの情報が揃えば、専門業者とのコミュニケーションは驚くほどスムーズになり、精度の高い見積もりを迅速に得られるはずです。

 

【次のステップ】
上記の5つのポイントをメモにまとめて、まずは専門家に相談してみましょう。
もちろん、すべての情報が完璧に揃っている必要はありません。

「情報が断片的で申し訳ないんだけど…」
「この部品、そもそも作れるかだけでも知りたい」

そんな段階でも全く問題ありません。私たち関東精密は、そうしたお客様の「困った」に寄り添い、お持ちいただいた情報から最善の解決策を導き出すプロフェッショナル集団です。

 

お手元の部品と集めた情報を手に、まずはお気軽に下記よりお問い合わせください。経験豊富な技術者が、あなたの会社の課題解決を全力でサポートします。