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もはや「勘」ではない。平面研削の薄物加工で「反り」を防ぐ、冶具設計と段取りの論理

平面研削加工
2025.10.22

「削るたびに反ってしまう」「公差内できれいに面が出ない」

板厚3mm以下、特に1mmを切るような薄物ワークの平面研削は、何度やっても頭を悩ませる加工の一つではないでしょうか。SUS304の薄板、SK材の熱処理後のプレートなど、材質を問わず「反り」との戦いになります。

 

平面研削盤における薄物加工は、精度管理と段取り技術の“真価”が問われる領域です。

本記事では、関東精密が長年培ってきたノウハウに基づき、薄物ワークの反り・浮き・研削焼けを防ぐための「冶具設計」「加工段取り」の工夫を、現場の視点で論理的に整理していきます。

 

 

◆なぜ「薄物」は反ってしまうのか? 3つの根本原因

薄物ワークが反ってしまう根本的な原因は、大きく分けて3つあります。

  • ① 研削熱による熱変形:

    砥石とワークの摩擦熱により、ワークが局所的に膨張・収縮することで発生します。

  • ② 材料の内部応力の解放:

    ワークが持つ元々の残留応力が、片面を削られることでバランスを失い、反りとして現れます。

  • ③ チャックによるクランプ歪み:

    最も多い原因の一つです。マグネットチャックで「無理やり」平面に吸着させると、ワークが歪んだまま加工され、チャックを外した瞬間に元の形に戻ろうとして反りが発生します。

 

 

◆ 【当社の工夫】反りを制御する「冶具設計」の原則

薄物加工の成否は、加工前の「冶具設計」で8割決まると言っても過言ではありません。当社の原則は「力で押さえつけず、逃げ場を作る」ことです。

・原則①:「全面吸着」ではなく「多点支持」で受ける

強力なマグネットチャックでの全面吸着は、③のクランプ歪みを引き起こす最たる原因です。

当社では、ワークの形状や材質に応じ、あえて吸着力を弱めたり、マグネットチャックを直接使わない方法を採用します。

  • ・当社の冶具事例1:ワックス固定(仮止め)

    熱に弱いですが、クランプ歪みを一切与えない最も有効な方法の一つです。

  • ・当社の冶具事例2:多点支持冶具

    ワークが安定する最低限のポイント(3点支持が基本)で受け、反りを逃がすスペースを意図的に作ります。

  • ・当社の冶具事例3:低吸着力設定

    吸着力を調整できるチャックを使用し、ワークがギリギリ動かない程度の弱い力で保持します。

・原則②:熱伝導率を考慮する

例えば、アルミワークを鋳鉄ベースに固定すると、研削熱の逃げ方に差が出て片側だけが伸び、反りの原因になります。ワーク材と近い素材で冶具ベースを作る、または断熱スペーサーを活用する工夫が必要です。

 

 

◆ 【当社の工夫】応力を逃がす「加工段取り」の技術

優れた冶具があっても、加工の段取り(工程順序や条件)を間違えれば反りは発生します。

・技術①:「片面ずつ」ではなく「裏表交互」で応力を相殺

薄物加工の鉄則は「一度に片面を仕上げない」ことです。

※例えば、t=3.0mmをt=2.0mmに仕上げる場合、

(NG例)

  1. 表面を 3.0 → 2.0 に一気に研削

  2. 裏返して仕上げ → この時点で大きく反っている

 

(OK例:当社の場合)

  1. 1.表面を研削 (3.0 → 2.8) →この時は磁力をきかせずに固定する。

  2. 2.裏返して研削 (→ 2.6) →上に同じく、磁力をきかせずに固定する。

  3. 3.再度、表面を研削 (→ 2.3) →ここでもまだ磁力はきかせない。

  4. 4.再度、裏面を研削 (→ 2.1) →ここで初めて磁力をきかせて固定させる。

  5. 5.両面を慎重に仕上げ (→ 2.0) →磁力をきかせる。

このように、裏表交互に少しずつ削ることで、研削によって発生する「圧縮応力」を両面で相殺させ、反りを最小限に抑え込みます。

・技術②:クーラントの徹底(熱対策)

加工前にワークを冷却タンクに仮置きし、“温度慣らし”をしておくだけでも精度は変わります。クーラントは研削点に正確に、かつ十分な量を供給します。

・技術③:砥石と切り込み量の最適化

反りを恐れるあまり切り込み量を少なくしすぎると、かえって砥石の「目」が潰れ、摩擦熱が増大して反りや「研削焼け」の原因になります。

材質(SUSか、SK材か)や熱処理の有無に合わせ、砥石の粒度と切り込み量を最適化し、「スッと切れる」状態を維持するノウハウが求められます。

 

◆ 失敗事例から学ぶ「やってはいけない段取り」

(※元の記事の表は非常に分かりやすいので、そのまま使用します)

NG事例 なぜダメか 改善ポイント
全面吸着で強制固定 応力が歪んだまま固定→研削後に反り戻り 支持点分散+低吸着力に切り替え
熱いまま裏面加工 熱膨張+冷却収縮で変形 必ず冷却後に反対面を研削
高速送り+深切削 熱が逃げず焼けやすい 低速・微切削・冷却強化

 

 

◆ まとめ:薄物研削は「段取りのロジック化」が鍵

かつては「職人の経験とカン」で対応していた薄物ワークの研削加工ですが、関東精密では、ここまでご紹介したような「なぜ反るのか」という原因に対し、「論理的な対策(ロジック)」を積み重ねることで品質を安定させています。

  • ・治具設計(クランプ歪みを防ぐ)

  • ・加工工程(応力を相殺する)

  • ・熱管理(熱変形を防ぐ)

 

これらの段取りをロジカルに設計することで、ミクロン単位の平面度を実現します。

関東精密では、図面通りの加工はもちろん、「反りが出てしまって困っている」といった加工上の課題解決(VA/VE提案)も得意としております。難易度の高い平面研削、薄物加工でお困りの際は、ぜひ一度当社にご相談ください。

 

 

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