『作れない』を『作れる』に変えるVA/VE提案の思考法:設計者のためのコスト削減と性能向上を実現する加工パートナーの選び方
本記事は、常に「性能向上」と「コスト削減」という二律背反の課題に挑む研究開発リーダーや設計技術者の皆様へ向けて執筆しました。
設計段階で抱える「この形状は加工できるのか?」「コストが高すぎる」「もっと良い材質はないか?」といった悩みを解決する強力な手法がVA/VE(価値分析/価値工学)提案です。
この記事では、VA/VEの基本的な考え方から、材質変更、工法転換、設計変更といった具体的なコストダウン事例、そして真に価値ある提案を引き出すための加工パートナー選びのポイントまでを、加工現場の視点から徹底解説します。
目次
1. 「良い設計」が「作れない設計」に? 設計者が直面する加工の壁
優れたアイデアや革新的な設計も、製造の壁を越えられなければ製品にはなりません。多くの設計者が、開発プロセスにおいて以下のような壁に直面しています。
・コストの壁:要求性能を満たすために高性能な材料や複雑な形状を採用した結果、部品コストが見積もりで跳ね上がり、プロジェクトが暗礁に乗り上げる。
・加工性の壁:理想の形状を追求したものの、「そんな加工はできない」と複数の業者に断られてしまう。特に難削材や複雑な5軸加工でこの問題は顕在化する。
・知識の壁:最新の加工技術や材料に関する知識が不足しており、より効率的で安価な代替案に気づくことができない。設計担当者のノウハウが不足している、あるいは蓄積・整理するリソースがない。
・コミュニケーションの壁:加工業者に設計意図が正確に伝わらず、オーバースペックな(過剰品質な)加工や、逆に要求を満たさない加工が行われてしまう。
これらの壁を乗り越える鍵は、設計段階から製造のプロフェッショナルを巻き込み、協力して価値を最大化する「VA/VE」のアプローチにあります。
2. VA/VEとは何か?- 単なるコストダウンではない「価値向上」のアプローチ
VA/VE(Value Analysis / Value Engineering)は、製品やサービスの「価値」を最大化するための体系的な手法です。その核心は、以下のシンプルな式で表されます。
◆価値 (Value) = 機能 (Function) / コスト (Cost)
VA/VEの目的は、単にコストを削ることではありません。「必要な機能を、最低限のコストで実現する」ことです。時には、コストを上げてでも機能を大幅に向上させ、結果として価値を高めることも含まれます。
・VA (Value Analysis:価値分析):既存の製品に対して行われ、機能を見直すことで価値向上を図ります。
・VE (Value Engineering:価値工学):設計・開発段階の製品に対して行われ、最初から高い価値を持つ製品を生み出すことを目指します。
このVA/VEの視点を設計に取り入れることで、これまで「トレードオフ」の関係にあると思われていた性能とコストを、同時に改善する道が開かれます。
3. 【事例で学ぶ】コストと性能を劇的に変えるVA/VE提案の3つの切り口
VA/VE提案は、具体的にどのような形でコスト削減や性能向上に繋がるのでしょうか。ここでは、加工現場で日々実践されている3つの代表的なアプローチを、具体的な事例とともに紹介します。
★切り口1:【材質変更】によるブレークスルー
「この部品はSUS304でなければならない」という固定観念を疑うことから、大きなコストダウンが生まれることがあります。
◆事例:SUS材からアルミ・樹脂への変更
・Before:ある装置の取り付けプレート。周辺部品に合わせてSUS材で設計されていたが、切削性が悪く加工コストが高かった。
・After:部品にかかる荷重を分析したところ、摺動部ではなく強度もそれほど要求されないことが判明。材質をアルミ(A5052)に変更することを提案。これにより、材料費が削減されただけでなく、切削性が大幅に向上し、加工時間が短縮。トータルコストを40%削減した。さらに、軽量化という付加価値も生まれた。
◆事例:一般材から高機能材への変更によるトータルコスト削減
・Before:摩耗が激しい摺動部品。安価な鉄系材料を使用していたが、頻繁な交換が必要で、メンテナンスコストとダウンタイムが課題だった。
・After:初期コストは上がるものの、耐摩耗性に優れた特殊コーティングやセラミックスへの材質変更を提案。部品寿命が5倍に延び、交換頻度が激減。部品代は上がったが、トータルでのライフサイクルコストを大幅に削減した。
★切り口2:【工法転換】によるパラダイムシフト
「この部品は切削で作るもの」という常識を覆すことで、桁違いのコスト削減が可能になる場合があります。
◆事例:切削加工から鍛造への転換
・Before:つば状の金属部品を丸棒から削り出していた。材料の大部分が切り屑となり、材料ロスと加工時間が膨大だった。
・After:ニアネットシェイプ(最終形状に近い形)を鍛造で成形し、必要な部分のみを切削で仕上げる工法を提案。これにより、材料費を20%、製造コストを30%削減することに成功した。
◆事例:複数部品の溶接組立から一体加工への転換
・Before:3つの板金部品を溶接し、その後、精度を出すために切削加工を行っていた。溶接による歪みが発生し、品質が安定しなかった。
・After:5軸マシニングセンタを活用し、ブロック材から一体で削り出すことを提案。溶接工程とそれに伴う歪み取りの工程が不要になり、組立工数もゼロに。品質が安定し、リードタイムも半減した。
★切り口3:【設計変更】による隠れたコストの削減
図面にほんの少し手を加えるだけで、製造工程が劇的に簡素化されることがあります。
◆事例:逃げ溝の追加による研削工程の撤廃
・Before:シャフトの段付き部の隅にシャープなエッジが要求されており、旋盤加工後に高コストな隅R研削工程が必要だった。
・After:設計者に機能を確認したところ、隅にシャープなエッジは不要と判明。段付き部の根元に「逃げ溝」を設ける設計変更を提案。これにより、旋盤加工のみで形状を完結でき、研削工程を丸ごと撤廃することに成功した。
◆事例:位置決め構造の追加による組立精度の向上
・Before:2つの大きな板金部品を位置合わせしてボルトで固定する際、作業者の勘に頼っており、組立に時間がかかり、精度もばらついていた。
・After:一方の部品に小さな「切り欠き(または凸部)」を、もう一方にそれと嵌合する「ポンチ(または凹部)」を追加する設計変更を提案。これにより、誰が作業しても一瞬で正確な位置決めが可能になり、組立時間が70%短縮され、品質も安定した。
【専門家の視点:関東精密のVA/VEプロセス】
私たちはお客様から図面をいただくと、まず「この部品の本当に重要な機能は何か?」を考えます。そして、公差、材質、形状のすべてに対して「なぜこの仕様なのか?」と問いかけます。長年の加工経験から、「この公差は緩められるかもしれない」「この形状なら別の工法が使える」といった改善の種を見つけ出し、お客様の設計意図を尊重しながら、複数の選択肢をご提案することを信条としています。
4. 真のVA/VE提案を引き出すためのパートナー選び 3つのポイント
価値あるVA/VE提案は、どんな加工業者でもできるわけではありません。設計者の良きパートナーとなり得る業者を見極めるには、以下の3つのポイントが重要です。
①多様な加工技術と材質への深い知見を持っているか
切削加工しかできない業者からは、鍛造や板金への工法転換の提案は出てきません。同様に、金属しか扱わない業者から樹脂化の提案は期待できません。5軸加工、リバースエンジニアリング、各種材質の加工実績など、引き出しの多さが提案の幅を決めます。
②設計から検査までの一貫生産体制(ワンストップ)を持っているか
製造プロセス全体を俯瞰できる業者でなければ、全体最適の視点からの提案は困難です。設計者の意図を汲み取り、加工の都合だけでなく、組立や検査のしやすさまで考慮した提案ができるのは、一貫生産体制を持つ業者の強みです。
③「なぜ?」を問いかけ、具体的な改善事例を提示できるか
ただ言われた通りに作るだけでなく、「この公差はなぜ必要ですか?」と積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢があるか。そして、過去のVA/VE提案によって「何を」「どのように」「どれだけ」改善したのか、具体的な実績を示せるかどうかが、提案能力を見極める試金石となります。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 開発の初期段階で、まだ正式な図面がないのですが、相談は可能ですか?
A1. はい、もちろんです。むしろ、構想段階やラフスケッチの段階でご相談いただく方が、より大胆で効果的なVE提案が可能です 。アイデアを形にするプロセスから伴走させてください。
Q2. 既存の量産部品について、VA提案をお願いしたいのですが。
A2. 可能です。現物の部品や図面をお預かりし、機能や現在の課題などをヒアリングさせていただいた上で、コストダウンや品質向上に繋がる改善案をご提案します。リバースエンジニアリングによる図面化からの対応も得意としています [8]。
Q3. VA/VE提案を依頼すると、追加で費用が発生しますか?
A3. ご相談やお見積りの段階でのVA/VE提案に、追加費用が掛かる場合があります。私たちは、お客様の製品価値を最大化することが、私たちの存在価値だと考えているからです。提案内容にご納得いただき、実際に加工をご依頼いただく、ここに私たちのノウハウが詰まっており費用が発生すると考えております。
その設計図、もっと価値ある製品にしませんか?
「コストが合わない」「加工が難しい」と諦める前に、ぜひ一度、関東精密にご相談ください。長年の経験と幅広い技術力で、貴社の設計に隠された価値向上の可能性を見つけ出します。
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