BLOG
ブログ
  • TOP
  • 切削加工ブログ
  • 「とりあえずSUS304」で損していませんか? 加工屋が教える、性能を変えずにコストを3割下げる「材料選定」の裏技

「とりあえずSUS304」で損していませんか? 加工屋が教える、性能を変えずにコストを3割下げる「材料選定」の裏技

開発、設計
2026.02.12

▼ こんな方に読んでほしい
・ 過去の図面を流用して、思考停止で「SUS304」や「SS400」を指定し続けている機械設計者
・ 「材料費は安い鉄板を選んだのに、なぜか加工見積もりが高い」と疑問に思っている購買・調達担当者
・ 試作品のコストダウンを求められているが、どこを削ればいいか分からず、強度や耐食性のスペックダウンを検討している開発エンジニア

 

 

序論:材料費が安くても、見積もりが高い理由

「鉄(SS400)を指定したのに、S45Cよりも高い見積もりが来た」
「ステンレス(SUS304)の材料費なんてたかが知れているのに、なぜこんなに加工費がかかるのか」

見積書を見て、そう感じたことはありませんか。
ここには、設計者が見落としがちな「加工性(被削性)」という隠れたコストドライバーが存在します。

材料カタログに載っているのは「キロ単価(材料費)」だけです。
しかし、私たち加工業者が計算するのは、「その材料を削るのに何分かかるか」「工具が何本ダメになるか」という「加工コスト」です。
粘り気が強く、切り屑が絡みつく材料。硬さにムラがあり、刃物が欠けやすい材料。
これらは、材料費そのものが安くても、加工費が跳ね上がり、トータルコストでは高くなってしまいます。

「機能上、どうしてもその材料でなければならない」のなら、私たちは全力で削ります。
しかし、「なんとなく錆びなければいい」「とりあえず鉄ならいい」というレベルであれば、材料を変えるだけで、コストと納期劇的に改善できる可能性があります。
本記事では、代表的な「損する材料選び」と、その「解決策」をご紹介します。

 

ステンレスの罠。「SUS304」と「SUS303」

ステンレスと言えば、最もポピュラーなのが「SUS304(18-8ステンレス)」です。耐食性が高く、溶接性も良い、素晴らしい材料です。
しかし、切削加工屋にとっては、あまり歓迎したくない相手です。
SUS304は非常に「粘り気」が強く、削るとお餅のように刃物にまとわりつき、加工硬化(削った面が硬くなる現象)を起こしやすいからです。

【プロの提案:SUS303(快削ステンレス)】
もし、その部品が「溶接しない」ものであり、「過酷な腐食環境(海水など)で使わない」のであれば、迷わず「SUS303」への変更をご検討ください。
SUS303は、成分に少量の硫黄やリンを添加することで、切り屑がパラパラと細かく砕けるように改良された材料です。
・ 加工時間はSUS304の約半分〜2/3。
・ 工具寿命は2倍以上。
・ 寸法精度も出しやすい。

材料単価はSUS303の方が若干高いですが、加工費が激減するため、トータルコストは間違いなく安くなります。ネジ、シャフト、ボルトなど、多くの部品で代替可能です。

 

鉄の罠。「SS400」と「S45C」

「一番安い鉄」として親しまれている「SS400(一般構造用圧延鋼材)」。
確かにキロ単価は最安クラスですが、実は「炭素量の規定がない」というアバウトな材料であることをご存知でしょうか。
ロットによって硬かったり柔らかかったり、不純物が多かったりと、品質が安定しません。
柔らかすぎて、むしれたような汚い仕上がりになったり、バリが盛大に出たりするため、仕上げ加工に意外と手間取ります。

【プロの提案:S45C(機械構造用炭素鋼)】

SS400よりも少しだけグレードの高い「S45C」。
こちらは炭素量が0.45%前後と厳密に管理されており、適度な硬さと粘りがあります。
サクサクと気持ちよく削れ、表面も光沢のある美しい仕上がりになります。
「SS400だとバリ取りに時間がかかるが、S45Cなら機械加工だけでバリが出にくい」
この差が、加工チャージの逆転現象を生むことがあります。
精度が必要な部品、美観が重要な部品には、迷わずS45Cを選んでください。

 

アルミの罠。「A5052」と「A2017/A7075」

アルミ合金の代表格「A5052」。耐食性が良く、溶接もできる万能選手です。
しかし、切削屋からすると「少し柔らかすぎて、溶着しやすい」材料です。
薄い板加工や、深い穴あけでは、切り屑が詰まりやすく、トラブルの原因になります。

【プロの提案:A2017(ジュラルミン)】

もし、強度が求められる部品や、精密なギヤ、ネジ加工が必要な場合は、「A2017(ジュラルミン)」を検討してみてください。
銅を含んでいるため硬度が高く、カリカリと非常に切れ味良く削れます。
材料費は高くなりますが、バリが出にくく、寸法もビシッと決まるため、複雑形状の部品ではトータルコストが逆転することもあります。
さらに強度が必要なら「A7075(超々ジュラルミン)」もあります。航空機グレードの強度と、最高レベルの被削性を兼ね備えています。

 

樹脂の罠。「POM」と「ナイロン」

プラスチック部品でよく使われる「MCナイロン」や「6ナイロン」。
耐摩耗性に優れていますが、「吸水性」が高いという弱点があります。
加工直後は寸法通りでも、梅雨時などは空気中の水分を吸って膨張し、穴が小さくなったり、全体が反ったりします。

【プロの提案:POM(ポリアセタール/ジュラコン)】

吸水による寸法変化を嫌うなら、「POM(ポリアセタール)」が鉄板の選択肢です。
吸水性がほぼゼロで、寸法安定性が抜群に良く、切削性も樹脂の中でトップクラスに良好です。
「ナイロンでなければならない理由(耐衝撃性など)」がない限り、精密部品にはPOMをお勧めします。

 

結論:図面を書き換える前に、一本電話をください

「材料選定」は、設計者の特権であり、責任でもあります。
しかし、すべての材料の「削りやすさ」や「最新の市場価格」まで把握するのは不可能です。

だからこそ、私たち加工屋を使ってください。
「この部品、SUS304になっているけど、溶接しないなら303にしませんか? 安くなりますよ」
「精度が必要なら、SS400はやめてS45C調質材にしましょう。歪みませんよ」

私たちは、図面を受け取った時、必ず材料欄を見ます。そして、もっと良い選択肢があれば、必ずVA/VE提案(代案提示)を行います。
それは、お客様に「無駄なコスト」を払ってほしくないからです。

「いつもの材料」を書く前に。
もしコストや品質で迷ったら、設計段階でご相談ください。
株式会社関東精密は、材料選びから始まる「製造の最適化」をサポートします。

 

    • 1.入力
    • 2.確認
    • 3.完了
    • 1.入力
    • 2.確認
    • 3.完了
    必須お問合せ項目
    必須応募職種
    任意会社名
    必須住所
    必須名前
    必須メールアドレス
    必須電話番号※ハイフン不要
    任意添付ファイル

    ※一度に送信できる画像ファイルの容量上限は5MBです。
    ※添付可能なファイル形式は、.jpg、.png、.jpeg、.gif、.xlsx、.docx、.xls、.doc、.ppt、.tif、.tiff、.pdfです。

    任意お問い合わせ内容

    個人情報の取り扱いについては
    プライバシーポリシー」ををお読みいただき、
    同意のうえ「確認画面へ」を押してください。