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旋盤加工における「偏心(エキセントリック)」の完全攻略:振動と遠心力を制する治具設計と超精密・異形状旋削の理論

治具
NC旋盤加工
2026.01.09

目次

◆回転体の常識を覆す「中心なき旋削」の難しさ

旋盤(Lathe)という工作機械は、原則として「ワークの幾何学的中心」と「主軸の回転中心」を一致させて加工を行うものです。しかし、エンジンのクランクシャフト、偏心カム、ポンプの駆動軸など、世の中の重要な機械要素には、回転中心から意図的に軸をずらした「偏心軸(Eccentric Shaft)」が無数に存在します。

これらを旋盤で加工しようとした瞬間、現場の景色は一変します。
数ミリ、あるいは数十ミリずれた位置でワークを高速回転させれば、猛烈な遠心力()が発生し、機械全体を揺るがす振動が襲います。通常の三爪チャックではワークを把握することさえできず、無理に回せばワークが弾き飛ばされ、凶器となって飛び出す危険すらあります。
さらに、偏心加工は刃物が空転時間を含む「断続切削」となるケースが多く、凄まじい衝撃が刃先とワーク、そして治具を襲います。

この「暴れようとするワーク」を、いかにして静寂の中でサブミクロンの精度に収めるか。その答えの全ては、「偏心治具(Eccentric Jig)」の設計にあります。
横浜市を拠点とする株式会社関東精密は、単なる部品加工メーカーではありません。物理法則に基づいたカウンターウェイトの設計、剛性と把持力を両立する特殊クランプ機構、そして熟練の芯出し技術を融合させ、難度の高い偏心加工を「日常業務」としてこなす技術者集団です。本稿では、一般的には避けられがちな「偏心旋削」に特化し、その治具設計の極意と加工ノウハウを、R&Dエンジニアおよび生産技術者の皆様へ体系的に解説します。


 

 

◆偏心加工で株式会社関東精密が選ばれる「5つの工学的優位性」

偏心加工は、汎用旋盤で職人が四爪チャックを駆使して行うことも可能ですが、量産性やミクロン単位の再現性を求めた場合、専用の「偏心治具」が不可欠です。私たちが提供する偏心加工ソリューションが、なぜ他社と一線を画すのか、その技術的根拠を詳述します。

 

1. 動的バランス(ダイナミックバランス)を完全制御するカウンターウェイト設計

偏心加工における最大の敵は「アンバランス」です。回転中心から質量が偏った状態で主軸を回すと、回転数の二乗に比例した遠心力が働き、びびり(自励振動)が発生します。これは加工面の品位を悪化させるだけでなく、真円度や円筒度を崩壊させます。
株式会社関東精密の偏心治具設計は、静的なバランス取りだけでなく、高速回転時の「動的バランス」を計算し尽くしています。3D CAD上でワークと治具の質量特性(重心位置、慣性モーメント)を解析し、偏心量(ストローク)に応じて最適な位置と重量の「カウンターウェイト(釣り合い重り)」を配置します。これにより、偏心加工であっても主軸負荷を最小限に抑え、通常の旋削と変わらない高回転・高送りでの加工を実現します。

 

2. 「断続切削」に打ち勝つ高剛性クランプ機構

偏心部は、その形状ゆえに「断続切削(Interrupted Cutting)」となることが一般的です。工具がワークに当たる瞬間と離れる瞬間、強烈な衝撃荷重が繰り返されます。通常の油圧チャックやスクロールチャックの把握力だけでは、この衝撃に耐えきれず、加工中にワークが微動(ズレ)して寸法が出ない、あるいは脱落事故につながります。
私たちは、ワークの形状に合わせて接触面積を最大化する「包絡クランプ」や、テコの原理を応用して把握力を倍増させる「トグル機構付き治具」を開発しています。衝撃を「点」ではなく「面」で受け止めることで、断続切削特有の衝撃音を消し去り、鏡面に近い仕上げ面を実現します。

 

3. 多段偏心・位相制御におけるインデックス精度

クランクシャフトのように、0度、90度、180度と、位相を変えて複数の偏心軸を持つ部品の場合、「偏心量」の精度だけでなく、「角度(位相)」の精度が命となります。
株式会社関東精密では、治具自体に高精度なインデックス(割り出し)機構を組み込みます。サービックカップリングや高精度ノックピンを用いた位置決め構造により、一度のチャッキングの中で位相変更を可能にする、あるいは段取り替え時の再現性を±0.005mm以内に収める治具を製作します。「角度が何度ずれているかわからない」という現場の悩みを、治具の機械的精度で完全に解決します。

 

4. 薄肉リング・パイプ形状の偏心加工と歪み対策

偏心加工が必要なのは、無垢のシャフトだけではありません。自動車のオイルポンプやコンプレッサー部品に見られる「薄肉偏心リング」は、強く掴めばおむすび型に歪み、弱く掴めば飛び出すというジレンマがあります。
私たちは、薄肉ワークの内径から均等に拡径して保持する「偏心マンドレル(Expansion Mandrel)」や、ワークの外周を低融点合金や特殊樹脂(ピッチ等)で固めて剛性を付加する「ポッティング治具」を駆使します。旋盤の回転力に耐えつつ、ワークを変形させない「柔と剛」を兼ね備えた固定技術は、私たちの真骨頂です。

 

5. 試作1個から量産まで対応するフレキシブルな治具戦略

「試作だから高価な専用治具は作れない」というお客様には、既存のチャックに取り付け可能な「簡易偏心アダプタ」や、汎用性の高い「調整式偏心フェイスプレート」を用いた低コストな工法を提案します。一方で、月産数千個の量産案件に対しては、ロボットローディングに対応した「自動偏心チャック」を治具メーカーと共同開発することも可能です。
横浜・川崎エリアの試作開発案件から、全国規模の量産立ち上げまで、フェーズに合わせた最適な治具コストと品質バランスを提示します。


 

 

◆【技術事例】「回らないもの」を回して削る。偏心加工の極致

ここでは、企業が実際に手掛けた、高難易度の偏心加工事例を紹介します。既製品のチャックでは不可能な加工を、特注治具がいかに可能にしたか、そのプロセスをご覧ください。

 ※守秘義務およびプライバシー保護のため、内容は一部変更しています

 

事例1:医療用小型ポンプ クランクシャフト(SUS630 H900)

【課題】
人工透析装置や血液ポンプに使用される、全長50mm、軸径φ4mmの極小クランクシャフト。偏心量は1.5mm。材質は高硬度なSUS630(H900処理済)。最大の課題は、ワークが細すぎて旋削の負荷で曲がってしまうことと、偏心軸(ピン部)と主軸(ジャーナル部)の平行度が0.005mm以内で求められていることでした。

【解決プロセス】

1. 両センター基準の偏心治具: 通常の片持ちチャッキングでは剛性が足りないため、両端にセンター穴を設け、両側から押し支える「両センター加工」を採用。ただし、偏心軸を加工する際はセンター位置も1.5mmずらす必要があります。そこで、両端のセンター位置をダイヤル操作で微調整できる「可変偏心センター治具」を自社開発しました。
2. カウンターウェイト一体型ドライバ: ワークを回転させるための「ケレ(ドライバ)」に、偏心量1.5mmを相殺するカウンターウェイト機能を一体化させました。これにより、細長いワークでも振動ゼロで高速回転(4,000min-1)させることに成功しました。
3. 研磨レス仕上げ: 治具の剛性を高めたことで、切削のみで研磨並みの面粗度(Ra0.2μm)と寸法公差(h6)を達成。コストのかかる円筒研削工程を廃止しました。

【結果】
平行度0.003mmを実現。振動によるビビリ目も皆無で、ポンプの静音性と長寿命化に貢献しました。

 

事例2:産業用ロボット 偏心カムフランジ(SCM440 調質材)

【課題】
ロボットの関節部に使われるφ150mmのフランジ部品。中心穴に対して、外周の一部だけが偏心したカム形状になっており、断続切削が避けられない形状でした。さらに、カム面には高い耐摩耗性が求められるため、高周波焼き入れ後の「ハードターニング(高硬度材旋削)」が必要でした。断続かつ高硬度という、工具にとって最悪の条件でした。

【解決プロセス】

1. 高剛性・油圧連動偏心チャック: 既存の油圧シリンダーの引き力を利用し、強力にクランプできる専用の生爪(ソフトジョー)を製作。爪の形状をワークの非偏心部分(捨てボス)に完全に合致させ、回転方向のズレを物理的にロックする構造としました。
2. 衝撃吸収型ツールホルダー: 断続切削時の衝撃を逃がさないよう、旋盤の刃物台(タレット)の剛性を強化するとともに、ダンピング能の高い超硬シャンクのボーリングバーを外径加工に転用する独自のセットアップを行いました。
3. バランス修正: 治具単体で動的バランスを測定・修正し、偏心回転時でも旋盤の主軸負荷メーターが振れないレベルまで調整を行いました。

【結果】
断続切削でありながら、CBN工具の寿命を従来の3倍に延長。加工時間もマシニングセンタでの切削に比べて1/5に短縮し、大幅なコストダウンを実現しました。

 

事例3:航空機エンジン用 試作偏心スリーブ(インコネル718)

【課題】

耐熱超合金インコネル718製の薄肉スリーブ。内径φ80mmに対し、外径φ85mm(肉厚2.5mm)で、外径中心が内径中心から0.5mm偏心している形状。通常の三爪チャックで掴むと、瞬時におむすび型に変形してしまい、真円度が出ない状態でした。

【解決プロセス】

1. 内径基準・偏心膨張マンドレル: ワークの内径を利用して固定する「マンドレル」を製作。ただし、通常のマンドレルではなく、スリーブ(中子)自体が0.5mm偏心して膨らむ特殊構造としました。
2. 全面当たりによる真円度確保: マンドレルの接触面をワーク内径の90%以上確保することで、チャッキング圧力を分散。薄肉インコネル材を変形させずに強力に固定しました。
3. 低温切削: 熱伝導率の悪いインコネルに対し、変形を防ぐために高圧クーラントを用いた低温加工を実施。

【結果】
真円度0.005mm以下を達成。薄肉偏心部品における「変形させずに掴む」技術の確立により、航空宇宙分野のお客様から高い評価をいただきました。


 

 

◆偏心治具設計の「理論」と「実践」

なぜ株式会社関東精密の偏心治具は精度が出るのか。そこには、物理学に基づいた理論と、現場叩き上げのノウハウがあります。

 

1. 遠心力計算とカウンターウェイトの配置理論

偏心加工における遠心力 は以下の式で表されます。

ここで、は偏心部分の質量、は偏心量、は角速度です。回転数が2倍になれば、遠心力は4倍になります。
私たちはこの計算に基づき、治具の反対側に「」が等しくなるようなカウンターウェイトを配置します。しかし、単に重さが釣り合えば良いわけではありません。主軸方向(Z軸方向)のモーメントバランスも考慮しなければ、首振り運動(コニカルモーション)が発生し、テーパー状の加工誤差を生みます。関東精密では、Z軸方向の重心位置まで計算に入れた「完全バランス設計」を行います。

 

2. 生爪(ソフトジョー)成形の特殊ノウハウ

偏心治具の要となるのが、ワークを直接掴む「生爪」の成形技術です。

偏心成形: 治具上で生爪を成形する際、あらかじめ目的の偏心量分だけ「ずらした状態」で爪を削ります。これには「成形用リング」と「スペーサー」を駆使した高度なテクニックが必要です。
逃げの確保: 偏心回転時、爪の角がワークに干渉しないよう、絶妙な「逃げ(リリーフ)」を設けます。これはCADだけでは設計しきれない、職人の感性が生きる領域です。
グリップ力強化: 把持面にタングステンカーバイドを溶射する、あるいはセレーション(ギザギザ)加工を追加することで、低いクランプ力でも滑らない爪を作ります。

 

3. マシニングセンタ(複合加工機)との使い分け

最近は、ターニング機能付きのマシニングセンタ(複合加工機)で、ワークを回転させずに工具を回して偏心部を削ることも可能です。しかし、旋盤加工(ワーク回転)には絶対的なメリットがあります。

加工速度: 連続切削が可能であり、圧倒的に早い。
面品位: 一定の周速で削り続けるため、挽き目が美しく、シール面などに適している。

工具剛性: 旋盤のバイトはマシニングの細いエンドミルに比べて圧倒的に剛性が高く、難削材加工に有利。
私たちは、ロット数、形状、材質、要求精度を総合的に判断し、「あえて旋盤で偏心させる」か「複合機で削る」かの最適解を提示します。

 

4. 測定と品質保証:偏心量の可視化

加工後の偏心量が正しいかどうか、通常の測定器では判定が難しい場合があります。

三次元測定機: 基準軸となる円筒と、偏心軸となる円筒をそれぞれ測定し、その中心間距離(ピッチ)と平行度を算出します。
真円度測定機: 偏心軸を中心として回転させ、幾何学的な真円度や円筒度をナノレベルで評価します。
機上計測: 5軸加工機や複合旋盤の機上にタッチプローブを搭載し、加工直後に偏心量を計測。誤差があれば即座に補正加工を行うフィードバックループを構築しています。


 

 

◆現場技術者が答える「偏心加工・治具」よくあるご質問 (Q&A)

難易度の高い偏心加工について、お客様から寄せられる疑問にお答えします。

 

Q. 偏心量(オフセット)は最大何ミリまで対応できますか?

A. ワークサイズと旋盤の振り(干渉域)によりますが、φ300mm程度のワークであれば、50mm以上の偏心量でも対応実績があります。ただし、偏心量が大きいほど巨大なカウンターウェイトが必要となるため、回転数の制限が生じます。詳細はお問い合わせください。

 

Q. 四角いブロック材から偏心した軸を削り出すことはできますか?

A. 可能です。四角材を把握するための特殊な「異形ワーク用偏心治具」を設計・製作します。インデックス(割り出し)治具を用いれば、ブロックの4面にそれぞれ異なる偏心軸を加工することも可能です。

 

Q. 偏心加工専用の治具を作ると高くなりませんか?

A. 専用治具はイニシャルコストがかかりますが、段取り時間の短縮、加工ミスの撲滅、加工速度の向上により、トータルコスト(ランニングコスト)は大幅に下がります。特にリピート品や数十個以上のロットであれば、治具製作を強く推奨します。数個の試作であれば、簡易治具で対応するプランも提案可能です。

 

Q. 鋳造品(鋳肌)の偏心クランプは可能ですか?

A. 可能です。鋳肌は表面が凸凹しているため、通常の爪では安定しません。私たちは、鋳肌の形状に追従する「フローティングパッド」や「スパイク爪」を用いた治具を製作し、黒皮のままでも強固に偏心クランプできる技術を持っています。

 

Q. 長尺シャフト(2m以上)の中間部分に偏心加工を行いたいのですが。

A. 長尺旋盤と「偏心振れ止め(ステディレスト)」を組み合わせることで対応可能です。振れ止め自体を偏心回転に追従させる特殊な技術、あるいはクランクシャフト加工機のような専用セットアップにて対応を検討します。

 

Q. バランス取りだけ(ダイナミックバランス修正)の依頼はできますか?

A. 申し訳ございませんが、バランシングのみの受託は行っておりません。あくまで「偏心加工を行うためのバランス設計」として、部品製作の一環で対応させていただきます。

 

Q. 偏心加工の図面公差が厳しすぎて、他社で断られました。相談に乗ってもらえますか?

A. ぜひご相談ください。「幾何公差の矛盾」や「加工不可能な形状」が含まれている場合でも、設計意図を汲み取った上で、実現可能な公差設計(VA/VE)を提案させていただきます。

 

Q. 遠方からの依頼ですが、治具設計の打ち合わせはどうなりますか?

A. ZoomやTeamsを用いたWeb会議にて、3Dモデルを共有しながら詳細な治具構想を説明いたします。神奈川県外のお客様とも多数の取引実績がございますので、距離を気にせずお問い合わせください。


 

 

◆困難な「回転」を制するものが、精密加工を制する

「中心を削る」ことは誰にでもできます。しかし、「中心を外して、正確に、美しく削る」ことができる企業は、日本国内でも限られています。
偏心加工は、遠心力という自然の力との戦いです。その戦いに勝つための武器が、株式会社関東精密の「偏心治具設計力」です。

クランクシャフト、カム、偏心軸。
「回すと振れる」その部品を、あたかも静止しているかのようにコントロールし、ミクロン単位で仕上げる。その驚きと感動を、貴社の製品に提供します。

設計段階でのご相談から、難削材の偏心試作、そして量産治具の製作まで。
「回らないもの」を回したいときは、ぜひ株式会社関東精密へお問い合わせください。

 

 

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