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部品は完璧なのに、なぜ製品は不良になるのか? 組立工程の「人によるバラつき」を物理的に封じ込める、高精度組立治具の設計論

治具
開発、設計
2025.12.24

▼ こんな方に読んでほしい

・ 切削部品の精度は出ているのに、組立後の製品検査で「動作不良」や「異音」が発生し、歩留まりの悪さに悩んでいる品質保証担当者
・ ベアリングの圧入や、接着剤の塗布、カシメ作業などが「熟練工の勘」頼みになっており、技術伝承と自動化の狭間で揺れている生産技術者
・ 巨額の自動組立ラインを導入する予算はないが、手作業の治具を工夫することで「半自動化(LCA)」を実現したいと考えている工場長

 

◆魔の工程、「組立」に潜む罠

マシニングセンタで1000分の1ミリまで追い込んで加工したシャフト。
研削盤で鏡のように仕上げたプレート。
検査成績書には、全ての寸法に「合格」の印が押されています。

しかし、それらを組み立てて、スイッチを入れた瞬間。
「ジージー」という異音が鳴る。動きが渋い。あるいは、防水検査で漏れが発生する。

なぜでしょうか。部品は完璧だったはずです。
答えは残酷なほどシンプルです。
「まっすぐ入れたつもり」「適量を塗ったつもり」「しっかり締めたつもり」。
この、組立工程に介在する無数の「つもり」こそが、品質を破壊する真犯人だからです。

切削加工は、機械(NC)が数値制御で動くため、再現性が保証されます。
一方で、組立(アッセンブリー)工程は、いまだに多くの部分を「人の手」と「感覚」に依存しています。
ハンマーで叩いて入れるベアリング。目分量で塗布される接着剤。トルクレンチを使わないネジ締め。
これでは、どんなに高精度な部品を作っても、最終製品の品質は、その日の作業者の体調やスキルによって左右されてしまいます。

私たち関東精密工業所が提案するのは、この不確実な「人の感覚」を、治具という物理的な機構によって完全に「代替」し、「封じ込める」アプローチです。
「誰が、いつ、どんな状態で作業しても、必ず同じ結果になる」。
それを実現するための、組立治具設計の神髄を解説します。

 

◆「圧入」を制する者は、寿命を制する

組立トラブルで最も多いのが、ピンやベアリングの「圧入(プレスフィット)」です。
「ハンマーで叩き込む」という作業は、現代の精密機器においては論外ですが、ハンドプレスを使っていたとしても、以下のような問題が頻発します。

・ナナメ入り(カジリ):
垂直に入らず、わずかに傾いたまま押し込まれることで、穴の内面を削り取り(カジリ)、保持力が低下する。あるいは軸が曲がる。
・押し込み不足/押し込みすぎ:
所定の位置まで達していない、あるいは奥まで入れすぎて機能を阻害する。

 

 

【私たちの解決策:高剛性ガイドとフローティング機構】

私たちは、圧入治具を設計する際、決して「作業者の真っ直ぐ押す力」を信用しません。
設計するのは、以下の2つの機能です。

 

(1) ワークを入れる前の「完全ガイド」
圧入が始まる数ミリ手前で、ピンやベアリングの外周を、ミクロン単位のクリアランスで拘束する「ガイドブッシュ」を治具に設けます。これにより、プレス機が降下してきたときには、部品は物理的に「垂直にしか動けない」状態になります。

 

(2) 倣い(ならい)機構
プレス機のラム(押し棒)と、治具の中心が完全に一致しているとは限りません。無理に固定すると、そのズレが部品へのストレスになります。
そこで、治具側、あるいは押し棒側に、水平方向にわずかに動く「フローティング機構」を持たせます。これにより、部品が相手の穴に吸い込まれるように、自然に中心調芯(セルフアライメント)されながら圧入されます。

結果として、ベアリングは傷一つなく所定の位置に収まり、製品寿命は理論値通りに最大化されます。

 

◆「接着」を制する者は、信頼性を制する

近年、ネジ止めに代わって増えているのが「構造用接着剤」による接合です。
しかし、接着ほど管理が難しい工程はありません。
「はみ出した」「足りない」「厚みがバラバラ」。これらは全て、製品の強度不足や外観不良に直結します。

 

【私たちの解決策:ギャップ(隙間)の強制管理】

接着強度は、「接着剤の層の厚み(ボンドライン)」で決まります。厚すぎても薄すぎてもいけません。
作業者が手で押し付けて「いい感じのところ」で止めるのではなく、治具によって「それ以上絶対に押し込めない位置」を機械的に作ります。

 

(1) 塗布治具(ディスペンサーガイド)
接着剤を塗る際、ノズルの先端をフリーハンドで動かすのではなく、治具に設けた「溝(ガイド)」に沿って動かすだけで、常に一定の軌跡、一定の高さから塗布できるようにします。

 

(2) 貼り合わせ治具
部品Aと部品Bを貼り合わせる際、治具自体に「0.1mmのスペーサー」機能を組み込みます。どれだけ強い力で押し付けても、部品同士の間には必ず設計通りの0.1mmの隙間が残り、そこに均一な接着層が形成されます。

これにより、接着工程は「職人技」から「単純作業」へと変わり、強度のバラつきは消滅します。

 

 

◆ 「半自動化(LCA)」への展開:コストを抑えて効率を倍増させる

ここまでの治具は、手作業を補助するものでした。
しかし、生産数が増えてくると、「もっと速く」「もっと楽に」という要求が出てきます。
ここで登場するのが、大掛かりなロボットラインではなく、治具に電気や空気の力を少しだけ借りる「LCA(ローコストオートメーション)」の考え方です。

【事例:エアシリンダーによる簡易カシメ機】

あるお客様から、「金属ピンの先端を潰して固定するカシメ作業を、手動のプレス機でやっているが、作業者の腕が疲れて生産数が上がらない」という相談を受けました。
自動機メーカーに見積もると数百万。そこまでの予算はありません。

私たちは、既存の作業台の上に置ける、A3サイズ程度の「卓上カシメ治具」を開発しました。
・動力:工場にあるエア(圧縮空気)のみ。
・機構:エアシリンダーとトグル機構(倍力機構)を組み合わせ、小さなシリンダーで数トンの推力を発生させる。
・安全:両手押しボタン式にし、指挟み事故を防止。
・品質:カシメ高さ(潰し量)をマイクロメーターヘッドで0.01mm単位で調整可能にし、ストッパーに当たるまで押し切れば完了。

 

費用は自動機の10分の1以下。しかし、生産能力は3倍になり、作業者の疲労はゼロになりました。
これが、私たちが得意とする「現場直結型の自動化」です。

 

 

◆ 治具屋の視点:図面に描かれない「余白」を設計する

組立治具の設計において最も難しいのは、実は「精度を出すこと」ではありません。
「入れやすさ」と「外しやすさ」のバランスです。

ガタつきを無くそうとして、治具の穴を部品サイズギリギリ(隙間ゼロ)に作るとどうなるでしょうか。
精度は出ますが、今度は部品が治具に入らなくなります。あるいは、組立終わった製品が治具から抜けなくなります。これでは生産になりません。

私たちは、ここに「逃げ」と「ガイド」のノウハウを詰め込みます。
・入口は広く、奥に行くと狭くなる「テーパーガイド」。
・位置決めに重要な2箇所だけを精密に押さえ、他はあえて0.5mm逃がす「自由度拘束の理論」。
・組立後の製品を、テコの原理やエアの力でポンと押し出す「エジェクター機構」。

図面上の寸法だけでなく、作業者が部品を手に取り、治具にセットし、加工し、取り出すまでの「時間の流れ」と「手の動き」を全てシミュレーションし、その動線の中にストレスがないように設計する。
それが、本当に「使える治具」です。

 

 

◆ 結論:良い製品は、良い「プロセス」から生まれる

最終製品の品質トラブル。その原因の多くは、設計ミスでも部品加工ミスでもなく、「組立プロセス」の曖昧さにあります。

「気をつけて作業する」という精神論で品質は守れません。
物理的に「正しくしか組めない」「ミスしようがない」環境を用意すること。それこそが、製造業における誠実さであり、技術力です。

 

もし貴社の工場で、組立工程の歩留まりに悩んでいるなら、あるいは、ベテラン作業者の引退に危機感を感じているなら、その作業風景を私たちに見せてください。

 

そこにある「曖昧さ」を発見し、カチリと噛み合う「確実性」へと変換する。
株式会社関東精密は、削るだけでなく、繋ぎ合わせる技術においても、貴社の最強のパートナーとなります。

 

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