旋盤加工だけじゃ足りない?研磨工程が必要になる“判断基準”と加工現場のリアル
「これ、旋盤で仕上げると思ってたけど…結局、研磨が必要だったんだ」
そんなケース、設計現場では意外と多くありませんか?
本記事では、旋盤加工では対応しきれない精度や仕上がりが求められるとき、【なぜ・どこまで研磨加工が必要になるのか?】という疑問に対して、具体的な視点と判断基準を交えて解説します。
目次
■ 旋盤加工では「限界」がある?〜現実的な精度と面粗度のライン~
旋盤加工でも0.01mm以下の寸法公差は実現可能です。
しかし実際には次のような制約があります:
ワークのたわみ(細長い軸など)は削り中に変形する
バイトの摩耗や振動で仕上がり面が荒れやすい
段取り変え後の再チャックで真円度・同心度に差異が出る
とくに「軸受け部の仕上げ」や「密着性の高い嵌合面」では、旋盤仕上げのままではNGとされる場面もあります。
■ 研磨が必要になる判断基準:現場の“あるある”判断5選
研磨工程を追加するかどうかを決めるのは、下記のような状況が多いです:
・はめあい面のすり合わせがうまくいかない
→ 回転側・受け側どちらにも引っかかりやガタがある
・回転ブレ(振れ)が図面値に収まらない
→ 真円度や円筒度が10μm以下を求められると研磨が登場
・摺動部がかじる・焼きつく
→ 表面粗さがRa0.4以下を求められる場合は、旋盤だけでは限界
・密着性が悪く、オイルリークや圧漏れが発生
→ Oリング座などには面粗度と平面度の両立が必要
・部品の外観が評価対象
→ 量産品や可視部品では、旋盤バイト痕がNGになるケースも
■ 研磨を入れるメリットとコスト感
研磨加工を追加することで得られる効果は多いですが、コストアップ要因にもなるため、本当に必要な箇所を見極めることが重要です。
項目 旋盤加工 研磨加工(円筒・平面)
寸法公差 ~±0.01mm ~±0.001mmも可能
面粗度 Ra1.6~0.8 Ra0.4~0.05も対応可
真円度 20μm前後 3~5μm以下も実現可能
外観性 工具痕が残る 鏡面仕上げも可
コスト 低 工程・段取り分加算あり
対話なしで研磨を入れると、時間もコストも跳ね上がります。
だからこそ、“旋盤でどこまで追い込むか?”と“研磨でどこを任せるか?”の切り分けがカギとなります。
■ ケーススタディ:研磨を加えることで不具合を解決できた実例
・ ケース①:φ12シャフトでベアリングがすぐ摩耗
旋盤でRa1.6まで仕上げていたが、摺動部の摩耗が早かった。
→ 円筒研磨でRa0.2に仕上げ直したところ、摺動摩耗が3倍改善。
・ ケース②:Oリング座からの漏れ
旋盤仕上げ面に“筋”が残っていたため、シール性不良が発生。
→ 平面研削でオイルシール座をミクロン単位で平坦化し、漏れが解消。
・ ケース③:外観検査で落とされる部品
バイト痕や回転ムラで“見た目が悪い”と評価されていた。
→ 仕上げ研磨で鏡面近くまで向上し、再検査クリア。
■ まとめ:旋盤と研磨、どちらが主役かではなく“組み合わせ”が重要
旋盤加工と研磨加工は、どちらか一方で全てを解決するものではなく、適材適所で使い分けるものです。
とくに中小製造業や少量多品種では、「加工できる設備」「求められる精度」「納期と予算」を加味しながら、最短距離で“使える部品”を作る判断力が求められます。