「この材料で大丈夫?」と悩む前に!精密部品の品質を決める金属材料の選び方
目次
◆ 精密部品の設計・開発において、頭を悩ませる課題の一つが「材料選定」ではないでしょうか。
「コストを抑えたいけど、品質は落とせない…」 「本当にこの材料がベストなのだろうか?」 「オーバースペックで、無駄なコストをかけていないだろうか?」
こうしたお悩みは、多くの設計開発者様や購買担当者様が抱えていらっしゃいます。材料の選定を一つ間違えるだけで、加工コストが跳ね上がったり、製品の耐久性に問題が生じたりと、後工程で大きなトラブルに繋がりかねません。 この記事では、精密部品の品質を左右する「金属材料の選び方」について、よくある失敗例とその原因、そしてプロの視点からの解決策を分かりやすく解説します。
◆「安さ」だけで選んでない?材料選定でよくある2つの失敗例
コスト意識は非常に重要ですが、材料費の安さだけで選んでしまうと、かえって高くつくケースがあります。まずは、私たちが現場でよく目にする失敗例を2つご紹介します。
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・失敗例1:加工段階でトラブル発生! 安価な材料を選んだ結果、いざ加工を始めたら「硬すぎて削れない」「加工中に割れや歪みが発生する」といったトラブルが起こるケースです。結局、加工に時間がかかって納期が遅れたり、特殊な工具が必要になって追加コストが発生したりします。
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・失敗例2:完成品に思わぬ不具合が… 製品として組み上がった後に「想定していた強度が出ない」「すぐに錆びてしまった」といった問題が発覚するケースです。製品のリコールや信頼性の低下に直結する、最も避けたい事態と言えるでしょう。
◆なぜ失敗は起きるのか?その原因は「思い込み」と「視野の狭さ」
では、なぜこのような失敗が起きてしまうのでしょうか。主な原因は2つ考えられます。
・原因①:材料特性の「なんとなく」な理解
例えば、同じステンレス鋼でも「SUS304」と「SUS303」では、成分がわずかに違うだけで加工性が大きく異なります。耐食性に優れるSUS304に対し、SUS303は快削鋼と呼ばれ、切削加工がしやすいのが特徴です。 このように、カタログスペックの数値だけを見て「強そうだから」「錆びないから」といった、漠然としたイメージだけで材料を選んでしまうと、その材料が持つ本来の特性(特に加工性)を見落としてしまいがちです。
・原因②:「材料費=コスト」という偏った視点
製品にかかるコストは、材料費だけではありません。加工費、熱処理や表面処理などの後工程費、そして製品の寿命やメンテナンス性まで含めた「トータルコスト」で考える必要があります。 目先の材料費(イニシャルコスト)だけを追求するあまり、加工性が悪く加工費(ランニングコスト)がかさんでしまっては、本末転倒です。
◆失敗しないための解決策!プロが実践する2つのアプローチ
材料選定の失敗を防ぎ、品質とコストを両立させるためには、どのような視点が必要なのでしょうか。
・解決策①:スペック表(ミルシート)の「行間」を読む
ミルシート(鋼材検査証明書)には、化学成分や機械的性質など、その材料の品質を証明する重要な情報が記載されています。ただ数値を眺めるだけでなく、
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・化学成分: どのような元素がどれくらい含まれているか?(→耐食性や加工性に影響)
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・機械的性質: 硬さ、引張強さ、伸びは十分か?(→製品の耐久性や強度に影響)
といった項目に注目し、「この材料はどのような特性を持ち、どんな加工に向いているのか」を読み解くことが重要です。
・解決策②:「加工のプロ」をパートナーにする
最も確実で効果的な方法は、私たちのような「加工のプロ」に相談していただくことです。 関東精密では、お客様の図面や要求仕様を拝見した上で、品質、コスト、納期といった様々な観点から最適な材料をご提案する**「VA/VE提案」**を得意としています。
例えば、「オーバースペックな材料を、より安価で加工性の良い材料に変更してコストダウンを実現する」「加工方法を工夫することで、従来は難しかった材料での加工を可能にする」といったご提案が可能です。
◆材料選定は「ものづくりの入り口」。お悩みがあればご相談ください。
精密部品の品質は、材料を選んだ時点でその大部分が決まると言っても過言ではありません。最適な材料を選ぶことは、高品質な製品を安定して、かつ適正なコストで製造するための第一歩です。
「この図面に最適な材料はなんだろう?」 「コストダウンしたいけど、どこから手をつければいいか分からない」
そんな時は、ぜひ一度、私たち関東精密にお声がけください。長年の経験と知識を活かし、お客様にとって最善の材料選定をサポートいたします。