「コストを抑えたい?それならワイヤーカットを“部分活用”する発想」
目次
「高精度=高コスト」になっていませんか?
製品や部品の精度要求が高くなるにつれて、自然と加工費も上がってしまう。
特に、試作や小ロット部品においては、「もう少しコストを抑えたい…」と感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。
そんなときに考えてほしいのが、“ワイヤーカット加工の部分活用”という考え方。
「すべてをワイヤーカットにする」のではなく、「必要なところだけにワイヤーカットを使う」ことで、コストを抑えつつ、高精度を担保できるのです。
ワイヤーカット加工のコストの特徴
まずは前提として、ワイヤーカット加工は以下のようなコスト構造を持ちます:
項目 | 内容 |
---|---|
設備稼働コスト | 長時間かかる場合、加工時間に比例してコストが増加 |
消耗品コスト | ワイヤー線、イオン交換樹脂、フィルターなどの消耗品が常に発生 |
プログラム作成 | 複雑形状や仕上げ指示のある場合は、CAM作業の負担が大きくなることも |
荒加工+仕上げ | 高精度加工ほど仕上げ回数が増える=時間もコストも増える |
つまり、「精度が必要な箇所だけをワイヤーカットに絞る」ことで、全体の加工コストを抑える余地が生まれるのです。
「部分活用」の具体的なアイデア3選
1. 寸法・精度が必要な一部だけをワイヤーカットで加工
たとえば、あるプレート部品の一辺だけ「±0.005mm」が必要なケース。
通常であれば全体を高精度に加工してしまいがちですが、その面だけをワイヤーカットで仕上げ、残りは切削加工にすることで大幅にコストを下げられます。
実際に、「一辺だけワイヤーで落としてくれればOK」という相談はよくあります。
2. 切削では難しい微細な抜き形状だけをワイヤーカット
たとえば:
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内部の角Rができるだけ小さくしたい
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スリット幅が0.3mm以下
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極細の中抜き形状が必要
といった場合は、その部分だけワイヤーカットに任せ、それ以外は通常切削やレーザーで対応することで、費用対効果が大きくなります。
3. 後工程のための“基準加工”だけワイヤーカット
ワイヤーカットは真直度・平行度が非常に高いため、「この面を基準にしておけば、他の加工がやりやすい」という使い方ができます。
実際には、
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後工程での基準面を精度良く加工
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位置決め穴・ピン穴を高精度で加工
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精密組立の位置合わせ用の目印加工
といった用途で、「全体ではなく、一部の寸法・位置精度だけを確保したい」というケースに重宝されています。
コストダウン例紹介
ある装置メーカーからの依頼で、「t16のステンレスプレート、全体は±0.1mmでOKだが、内側のスリットだけ±0.005mmで仕上げたい」との要望がありました。
従来は全体をマシニング加工し、その後研磨して仕上げていたため、リードタイムもコストも高止まり。
そこで提案したのが、
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・外形はレーザー加工(安価で高速)
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・スリット部分のみワイヤーカット(高精度でバリなし)
・結果、加工費は約30%削減、納期も2日短縮されました。
発注側の工夫で、さらにコストを抑えられる
ワイヤーカット加工の部分活用を最大限活かすには、設計や発注時点での“工夫”が鍵になります。
・図面に優先順位を明記する
→ どこを「ワイヤーカット前提」とするかが明確になれば、加工側でも工程最適化が可能になります。
・加工面を分離可能な設計にする
→ 外注先でレーザーとワイヤーを別工程で処理できるようにしておくと、コストダウンが現実的に。
・加工工程を相談ベースにする
→ 「この精度、ワイヤーじゃないと無理かな?」「ここだけ切ってもらえる?」という相談からベストな工程を一緒に組み立てるスタイルがおすすめです。
まとめ:コストを下げたいなら“ワイヤーで全部”ではなく“賢く使う”
ワイヤーカットは高精度な反面、加工時間がかかるため「コストが高い」という印象を持たれがちです。
しかし実際は、必要な箇所だけにピンポイントで使うことで、
「高精度 × 低コスト」の両立が可能な加工法でもあります。
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微細部のみ
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基準面だけ
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組立精度確保のための一部加工
このような発想で、ワイヤーカットを“賢く使う”ことが、製造現場にとっての新しいコストダウンの切り札となるかもしれません。