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品質保証の最前線 – 【5軸マシニング】で加工した製品の三次元測定とトレーサビリティ確保

5軸マシニング加工
2025.08.02

 「5軸マシニングセンタを使えば、複雑な形状でも高精度に加工できる」―これは事実です。しかし、本当に重要なのは「加工した製品の精度を、いかにして正確に測定し、保証するか」です。特に、航空宇宙部品や医療機器など、わずかな誤差も許されない重要保安部品においては、品質保証体制の構築が企業の信頼そのものを左右します。本記事では、5軸マシニングで加工された複雑形状部品の品質を保証するための最先端技術、「三次元測定」と「トレーサビリティ」について、その重要性と具体的な方法を解説します。

 

なぜ従来の測定方法では不十分なのか?
 ノギスやマイクロメータ、ハイトゲージといった従来の測定器具は、平面や円筒といった単純な形状の寸法を測るのには適しています。しかし、5軸マシニングが得意とする、自由曲面や傾斜した面、複雑に配置された穴などの評価には限界があります。

 

・測定できない箇所がある: 複雑な形状の内部や、深い溝の底などは、測定器が届かず測定不可能です。

・幾何公差の評価が困難: 位置度、輪郭度、同軸度といった、複数の要素の関係性で定義される「幾何公差」を正確に測定することは極めて難しいです。

・測定者による誤差: 測定者のスキルや、測定器の当て方によって測定値にばらつきが生じやすい(人的誤差)。

これらの課題を解決するのが、三次元測定機です。

 

 

三次元測定機が実現する高精度な品質保証
 三次元測定機は、プローブ(探針)を製品の表面に接触させ、その三次元座標(X, Y, Z)を読み取ることで、複雑な形状をデジタルデータとして正確に捉える装置です。

 

1. 複雑形状・幾何公差の完全な評価
 三次元測定機は、3D CADデータと、実際に切削加工された製品の測定データをPC上で比較照合します。これにより、以下が可能になります。

・設計値との誤差を可視化: 製品のどの部分が、設計値に対してどれだけずれているのかを、カラーマップなどで直感的に表示できます。これにより、問題箇所が一目瞭然となります。

・あらゆる幾何公差の評価: 従来の測定器では困難だった輪郭度や位置度なども、プログラムに基づいて自動で、かつ高精度に測定・評価します。

・人的誤差の排除: 一度測定プログラムを作成すれば、誰が測定しても同じ結果が得られるため、客観的で信頼性の高い検査が実現します。

 

2. 【5軸マシニング】との連携による工程内測定
 最近では、工作機械の機内に測定用のプローブを取り付け、加工の合間や加工後に自動で測定を行う「機上測定」も進化しています。これにより、ワークを機械から降ろす前に寸法を確認し、ズレがあれば自動で補正加工を行うといった、より高度な品質管理が可能になります。

 

品質を支えるもう一つの柱「トレーサビリティ」
 高精度な測定体制があっても、それだけでは万全ではありません。「その製品が、いつ、誰が、どの材料を、どの機械で、どのような条件で加工し、どのように検査されたか」という履歴を追跡できる仕組み、すなわち「トレーサビリティ」の確保が不可欠です。

トレーサビリティ確保の具体策

・材料管理: 材料受け入れ時にミルシート(材料証明書)を確認し、材料に管理番号を刻印・付与する。

・工程管理: 各工程で「作業者」「使用機械」「加工日時」「プログラム番号」などを記録した作業指示書や管理システムを用いる。

・検査記録の紐付け: 三次元測定機で出力した検査成績書を、製品の個体識別番号と紐付けて保管する。

 

QRコードやICタグの活用: 製品自体や現品票にQRコードなどを付与し、スマートフォンやリーダーで読み取るだけで、その製品の製造履歴に瞬時にアクセスできる仕組みを構築する。

 

トレーサビリティが確保されていれば、万が一市場で不具合が発生した際にも、影響範囲を迅速に特定し、原因究明と再発防止策を的確に行うことができます。これは、顧客からの信頼を維持する上で極めて重要です。

 

まとめ:次の行動へ
 【5軸マシニング】による高度な切削加工技術は、高精度な測定技術と、盤石なトレーサビリティ体制があって初めて、真の価値を発揮します。言い換えれば、品質保証への投資は、企業の技術力を顧客に示す最も有効な手段なのです。

もし貴社が、より高いレベルの品質を求められる業界への参入を目指しているなら、まずは自社の測定体制とトレーサビリティの仕組みを再点検してみてください。そして、最新の三次元測定機がどのような評価を可能にするのか、メーカーのデモンストレーションなどを活用して確かめてみることをお勧めします。確固たる品質保証体制が、貴社の未来を切り拓く礎となるでしょう。