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「精度を求めるなら知っておきたい!ワイヤーカット加工の限界と可能性」

ワイヤーカット放電加工
2025.07.25

はじめに:「図面通りに仕上げたい」が一番難しい

「寸法公差±0.01mmでお願いしたいんだけど、大丈夫かな?」
「焼入れ材なんだけど、R0.1以下でしっかり角出しできる?」

製造現場では日常的に聞かれるこんな声。
高精度化・軽量化・小型化が進む中で、【寸法精度や形状再現性が“当たり前に高く求められる”時代】になっています。

そんなとき、頼りになるのが【ワイヤーカット加工】。
ただし、「高精度=ワイヤーカットなら何でもできる」というわけではありません。

 

この記事では、【どこまでできるのか(限界)と、どう使えば最大の性能を発揮できるのか(可能性)】について、具体的に解説します。

 

 

ワイヤーカット加工の“基本的な精度性能”

ワイヤーカット加工でよく出せる精度の目安は以下の通りです:

| 加工条件     | 一般的な精度                         | 高精度時(仕上げ回数調整時) |
| 寸法精度  | ±0.01〜0.005mm               | ±0.003mm程度も可能              |
| 面粗度      | Ra1.5〜3.2μm                   | Ra0.8μm以下も対応可               |
| 直角度      | 0.01/100mm以内                 | 高精度保持治具使用で更に精密 |
| コーナーR  | ワイヤー径依存(R=0.05~)| 特殊ワイヤーでR0.03も可能      |

 

つまり、【一般のフライス加工では難しいような“μm単位”の精度が出せる加工法】だということが分かります。

 

 

その“高精度”を支えるのは4つの条件

ただし、ただワイヤーカット機を使えば上記の精度が出るわけではありません。
【実際の精度を左右する要素】は大きく分けて以下の4点です。

 

✅ 1. 機械精度(加工機の性能と年式)

・最新の高剛性機種(例:FANUC α-Cシリーズなど)であれば、【常温でも安定した加工が可能】。
・逆に、古い機種では±0.02mm以下の再現性が難しいことも。

 

✅ 2. 環境と保守管理

・加工室の温度変化、冷却水の汚れ、ワイヤー送り装置の摩耗など、【加工環境が精度に直結】します。
・メーカー指定通りに日常保守されていることが大前提です。

 

✅ 3. 加工条件の最適化

・荒加工→中仕上げ→仕上げ…と【複数回の条件を切り替える】ことで、寸法精度や面粗度が向上。
・特に【高精度が求められる場合、3~4回の仕上げ加工が必要】になることも。

 

✅ 4. クランプ・治具の工夫

・ワークの固定が甘いと、【加工中にわずかなズレや反りが発生】。
・特に薄物プレートなどは【吸着台やバキュームチャックなどの専用治具】が不可欠です。

 

 

限界を感じるのは、どんな条件か?

ワイヤーカットにも限界はあります。代表的なものを挙げると:

・非常に厚い材料(t150以上)での精度保持が難しい
 →加工時間が長くなり、ワイヤーの熱変形や偏磨耗が影響する
・複雑な三次元形状(曲面など)は不向き
 →ワイヤーカットは基本的に2D軌道の加工
・極薄・柔らかい素材(銅箔、アルミ0.1tなど)は保持が難しい
 →加工中に変形するため、保持工夫が必要

したがって、【「どこまでがワイヤーカットの範囲で、どこからは別工法に任せるべきか」を見極める判断力が重要】です。

 

 

それでも可能性はまだまだある!使い方次第で大化けする技術

ワイヤーカット加工は、使い方によって【“最終工程”にも“補助加工”にもなる柔軟性】を持っています。

 

✅ 例:難削材(インコネル・超硬)への応用

・他の加工では切れない材質でも、【寸法を壊さずに切断・加工が可能】

 

✅ 例:高精度穴あけの“位置決め加工”

・あえてワイヤーカットで位置決め穴を加工し、後工程で組立精度を高める使い方も

 

✅ 例:量産部品のマスター金型製作

・金型の元となる「ベースプレート」や「トリム刃型」を、【μmレベルで整形する用途】

「どうしてもこの形状を、±0.005で仕上げたい…」という相談に、【現場経験のある加工業者なら解決策を一緒に考えてくれる】はずです。

 

 

まとめ:「高精度」は機械よりも“使い方”で決まる

ワイヤーカット加工の精度は、確かに高い。
でもそれは、【機械と人、段取り、環境、そして知識が揃って初めて引き出せる性能】です。

・図面精度がμm単位で必要な部品
・焼入れ材や難削材への対応
・最終寸法を“確実に出す”必要がある工程

 

こういったシビアな条件において、【「どこに頼むか」が成果を大きく左右します。】
高精度を求めるなら、ぜひワイヤーカット加工の“可能性”を見直してみてください。