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「なぜ納期が短くなる?ワイヤーカット加工のリードタイムを最適化する5つの視点」

ワイヤーカット放電加工
2025.07.11

はじめに:短納期の要望が増えていませんか?

製造現場では「急ぎで仕上げてほしい」「今週中に間に合わせたい」といった『短納期対応の依頼』が増えています。
特に試作やトラブル対応など、“予定外の案件”が発生したときは、『加工スピードが命綱』になります。

そんな中で注目されるのが「ワイヤーカット加工のスピード感」。
一見するとゆっくりに見えるこの放電加工が、【実は“リードタイムを短縮できる手段”】である理由をご説明します。

 

 

なぜワイヤーカット加工は短納期に強いのか?

 

✅ 1. 前加工が不要な場合が多い

フライスやマシニング加工では、切削量の調整や取り代設計が必要ですが、
『ワイヤーカットは「最終形状を一発で仕上げる」ことが可能』です。

たとえば…

・肉抜き形状を1工程で抜く
・焼入れ済の部品をそのまま仕上げる
・同時に複数個のプレートをスタック加工

など、『複数工程を“すっ飛ばせる”ことで、実質の納期が短くなる』のです。

 

 

✅ 2. セットアップ時間が短い

マシニングや旋盤などに比べて、『ワイヤーカットの段取り(治具設置・工具交換など)は非常にシンプル』です。

・工具の摩耗を気にせず連続運転可能
・CAMのパス設計も直線と曲線が中心で比較的早い
・板材や焼入れ部品を“そのまま加工台に乗せるだけ”というケースも多い

このように、『段取りの手軽さ=納期の短縮』につながります。

 

 

✅ 3. 「後回しにされにくい」加工法

ワイヤーカットは、加工の『プログラムがシンプル』で、『工程の合間に“すき間時間”で処理されやすい』特性があります。

つまり、工場側も「今のうちにこれ流しておこうか」と手配しやすく、
『“突発案件”でもラインに組み込みやすい=納期対応力が高い』のです。

 

 

✅ 4. 同時加工が可能

たとえばt10の板材を4枚積み重ねて、『t40相当の厚みとして加工』すれば、1回で4枚分が完成。

この「スタック加工」は、プレート形状や同一形状が多い案件において、『工数を1/4に抑える非常に効果的な手法』です。

もちろん条件次第ですが、事前に「積層OKか?」と相談すれば、『リードタイムを劇的に短縮する手段にもなります』。

※ただし、厚みが増えれば加工スピードは落ちるので、加工時間は長くなります。

 

 

✅ 5. バリや仕上げ処理が不要なケースが多い

切削加工では、バリ取りや2次加工(仕上げ研磨など)が必要になる場合が多いですが、
『ワイヤーカットは“非常に滑らかな切断面”が得られる』ため、『そのまま使えるケースも少なくありません。』

これも、『後工程が減る=納期が短縮される』ポイントの一つです。

 

 

納期をさらに短縮するための“事前準備”

短納期に応えるためには、『お客様側の協力も大きな力』になります。
以下のような準備があると、さらに加工スピードが上がります:

・DXFやSTEPなどの加工用データを用意する
・加工の目的(位置決め用?通し穴?)を明確に伝える
・材質・板厚・焼入れ有無を明記する
・希望納期と優先度を伝える(代替納期があるかも含め)

特に【図面では分からない仕様をあらかじめ共有いただく】ことで、確認作業が減り、現場で即スタートが切れるようになります。

 

 

ケーススタディ:部品製作を3日で納品できた理由

ある製造業の購買担当者様から「トラブル対応で図面通りに部品がどうしても今週中に必要」という連絡がありました。

ご支給いただいたのはPDF図面と、寸法のラフスケッチ。
すぐにワイヤーカット用データをこちらで作成し、『翌日午前中に加工スタート→翌日夕方に検査・梱包→3日目に出荷完了』。

従来であれば切削+研磨で1週間はかかるところ、【半分以下の納期で収められた事例】です。

 

 

まとめ:スピードは“工程数と段取り”で決まる

ワイヤーカット加工は、「切るスピード」自体は決して速くありません。
しかし、『前後工程を減らす工夫と、現場に馴染みやすい柔軟性』によって、『実質納期を短縮できる加工法』なのです。

短納期に困ったとき、最後の1工程で時間が足りないとき・・・
そんな“困った”を解決する手段として、【ワイヤーカット加工を戦略的に使う価値】は非常に高いと言えるでしょう。