旋盤加工で「うまくいかない」理由とは?~精度トラブルの本当の原因と対策~
「図面通りに作っても、組み立てで合わない」
こうした経験、ありませんか?
実際、図面に書かれた公差を満たしているのに「使えない部品」ができてしまうケースは、旋盤加工の現場では少なくありません。
本記事では、そうした“見えにくい問題”を掘り下げ、旋盤加工でありがちな精度トラブルの原因と、その解決策を中級者目線で解説します。
目次
■ よくある精度トラブルの事例
例えばこんな事例があります。
・シャフトとベアリングが“入りすぎる”または“入らない”
・面粗度は満たしているのに動きが渋い
・φ公差はOKでも芯がズレて回転がブレる
こうした問題は、実は「旋盤加工そのものの精度」だけではなく、「前後工程」や「設計との意図ずれ」からも生じていることが多いのです。
■ 図面公差が“正しくても失敗する”理由
たとえば、φ20±0.01のシャフト。
図面上はこの寸法でよいように見えても、実際の組み合わせ部品が樹脂ブッシュか焼入れベアリングかによって「最適な実寸」が異なります。
これは、公差だけでは吸収できない「使用環境・相手部品との相性」に起因します。
現場ではこの“相性”に関する情報が不十分なまま加工依頼が来ることがあり、仕上がってから問題になるケースもあります。
■ 対策1:加工前の「確認すべき情報」
加工を依頼する際に、以下の情報も共有するだけで精度トラブルの回避率は格段に上がります。
・組み立て相手部品の材質・寸法公差
・使用環境(温度変化、潤滑、振動など)
・優先順位(寸法より同心度が大事など)
・過去の不具合情報
このような情報をあらかじめ共有できると、加工側も“意図”を汲んだ工程設計が可能になります。
■ 対策2:旋盤加工側での工夫
一方、加工現場でも以下のような工夫が効果的です。
・センタードリルやチャック圧の管理で芯ズレを防ぐ
・仕上げ切削と中ぐりを同一セッティングで行い一体性を高める
・旋削→測定→補正のスピードサイクルを工夫して安定化
ただし、こうした技術対応には「現場での判断力」が必要であり、汎用的な図面指示ではカバーしきれません。
■ まとめ:図面の裏にある“使われ方”まで見据える
旋盤加工では、図面の公差や寸法だけでなく、その背後にある「使われ方」「組まれ方」まで読み解く力が求められます。
加工を外注する際にも、“図面+目的”を伝えることが、結果的に時間やコストの削減につながることが少なくありません。