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ワイヤーカット加工とは?―他の加工方法との違いと導入のメリットを徹底解説

ワイヤーカット放電加工
2025.06.21

はじめに:そもそも“ワイヤーカット加工”ってなに?
金属加工の現場で「複雑な形状」や「高精度な仕上げ」が求められるとき、頼りにされる加工方法の一つが「ワイヤーカット加工」です。

とはいえ、まだまだ一般的には馴染みが薄く、「どんなときに使えばいいの?」「フライスやレーザーと何が違うの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、ワイヤーカット加工の基礎知識と他の加工法との違い、どんな場面で使えるのかをわかりやすくご紹介します。

 

【ワイヤーカット加工の仕組み:金属を“電気で切る”】
・ワイヤーカット加工(放電加工の一種)は、細い金属線(ワイヤー)に電気を流し、その放電で金属を溶かしながら切断する技術です。

・ワイヤーの直径は主に0.1~0.3mm程度。

・工具となるワイヤーは消耗品で、常に巻き取りながら使用。

・切削ではなく「放電」なので、刃物が当たらない=材料に力が加わらないのが最大の特徴です。

つまり、非常に薄いもの・細いもの・壊れやすい材料でも変形なく加工できるというわけです。

 

【他の加工法との違い:比較してわかる“適材適所”】
・加工方法 主な原理 特徴 向いているもの
・フライス加工 刃物で削る 汎用性が高いが力が加わる 平面、段差、ポケット形状
・旋盤加工 回転して削る 円筒形状に特化 シャフト、軸、パイプ状の部品
・レーザー加工 熱で溶かす スピード重視。バリが出やすいことも 板金の切断、大量生産
・ワイヤーカット 放電で溶かす 力が加わらず高精度。切削できない材料にも対応 超硬・焼入れ鋼・複雑形状・細かい切断

 

たとえば、「すでに焼き入れされた金型部品」や「±2μmの精度が必要な精密部品」など、他の加工法では難しいケースで“最後の切り札”として選ばれることも少なくありません。

 

どんな素材・形状に向いているのか?
・ワイヤーカット加工は、以下のような場面で特に強みを発揮します:

・高硬度材(SKD、超硬、焼入れ済のSUSなど)

・厚みのあるプレート(t10〜t100など)

・コーナー部が鋭角な形状(R0.1以下)

・穴抜き加工(コアが残らない)

・バリや熱変形を避けたい場面

 

また、工具が接触しないため、極薄の精密部品や微細なスリット加工など、変形が許されない部品にも最適です。

 

現場での“あるある”失敗例とその防止策
現場でよくあるのが、他の加工法で仕上げた後に「最後の1工程だけワイヤーカットで処理したい」というケースです。

しかし、最初の設計段階で「ワイヤーカット前提」になっていないと…

・ワイヤーが通らない

・加工スタート位置がない

・コアが落ちてしまう

といった設計ミスが起きがちです。

そのため、「どう加工するか」を最初の段階で業者とすり合わせておくことが成功のカギとなります。

 

まとめ:どこに頼むかが仕上がりを左右する
ワイヤーカット加工は万能ではありませんが、条件がハマれば他の加工法では代替できない唯一無二の力を発揮します。

特にこんな方におすすめです:

・他の加工では精度や形状に限界を感じている方

・焼入れ済部品や超硬などの加工に悩んでいる方

・複雑形状を図面通りに、変形なしで仕上げたい方

 

技術そのものを理解することで、「どんな場面で活用すべきか」が見えてきます。
ぜひ、今後の部品設計・外注選定にお役立てください。