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旋盤加工における材料選定:コストと性能の最適なバランスを見極める
NC旋盤加工
2025.06.26
旋盤加工で部品を製作する際、適切な材料を選ぶことは、完成品の性能、耐久性、そして製造コスト全体に大きな影響を与える極めて重要な工程です。「どの材料が最適か」「コストを抑えつつ必要な性能を確保するにはどうすれば良いか」といった課題は、多くの設計者や購買担当者が直面するものです。
旋盤加工で一般的に使用される材料とその特徴
- 鉄鋼材料:
- ・炭素鋼(S45C、S50Cなど): 汎用性が高く、強度とコストのバランスに優れています。熱処理によって硬度を調整できるため、幅広い用途に使用されます。
- ・合金鋼(SCM435、SCM440、SNCM材など): 炭素鋼にクロム、モリブデン、ニッケルなどを添加し、強度、靭性、耐摩耗性などを向上させた材料です。高負荷がかかる重要部品に適しています。
- ・ステンレス鋼(SUS304、SUS316、SUS303など): 耐食性に優れているのが最大の特徴です。SUS304は最も一般的ですが、加工硬化しやすい性質があります。SUS316はより高い耐食性を持ち、SUS303は硫黄を添加して被削性を向上させた快削ステンレス鋼です。
- ・快削鋼(SUM材など): リン、硫黄、鉛などを添加して被削性を大幅に向上させた鋼材で、大量生産部品の加工効率向上に貢献します。
- 非鉄金属:
- ・アルミニウム合金(A5052、A2017、A6061、A7075など): 軽量で加工性が良く、熱伝導性や導電性にも優れています。合金の種類によって強度や耐食性が大きく異なります。
- ・銅・銅合金(純銅、真鍮C3604、リン青銅など): 非常に優れた導電性と熱伝導性を持ちます。特に真鍮(快削黄銅C3604)は被削性が極めて良好で、精密部品に多用されます。
- ・チタン・チタン合金: 軽量でありながら高強度、そして優れた耐食性(特に海水に対して)を持ちますが、加工が難しく高価な材料です。
- 樹脂材料(プラスチック):
- ・POM(ポリアセタール)、MCナイロン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)など: 金属代替として、軽量化、絶縁性、自己潤滑性、耐薬品性などの特性を活かして使用されます。種類によって機械的強度や耐熱性が大きく異なります。
材料選定における比較検討ポイント
- ・要求される機械的・物理的特性の充足: 部品が使用される環境や目的(荷重、温度、湿度、接触する物質など)を考慮し、必要な強度、硬度、耐食性、耐熱性などを満たす材料を選びます。
- ・加工性(被削性)と加工コスト: 材料の加工のしやすさは、加工時間や工具寿命に直結し、結果として加工コストに大きく影響します。難削材は特殊な工具や加工ノウハウが必要となるため、コストが上昇する傾向にあります。
- ・材料コストと入手性(サプライチェーン): 材料自体の価格はもちろんのこと、安定して入手可能か、納期に影響はないかといった点も重要です。特殊な材料や特定のサイズは調達に時間がかかる場合があります。
- ・後工程(熱処理・表面処理)との適合性: 部品に熱処理やめっき、塗装などの後工程が必要な場合、それらの処理に適した材料を選定する必要があります。
- ・トータルコストパフォーマンス: 単に材料費が安いというだけでなく、加工費、工具費、後処理費、そして部品の寿命やメンテナンス性まで含めたトータルでのコストパフォーマンスを考慮することが肝要です。
例えば、「この部品はSUS304で設計されているが、使用環境と要求強度を考慮すると、より被削性の良いSUS303に変更することで加工コストを大幅に削減できる可能性がある」といった具体的なアドバイスは、経験豊富な加工業者だからこそできるものです。
材料選定は、製品の品質とコストを大きく左右する重要な決断です。部品の用途や要求性能を明確にし、加工業者の専門的な知見も活用しながら、最適な材料を選定することが、プロジェクト成功の鍵となります。