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量産用治具と試作治具、何が違う?目的別に見る最適な治具選び

治具
2025.06.17

 一口に「加工治具」と言っても、その使われ方や求められる特性は、生産のステージによって大きく異なります。特に、「量産ラインで使う治具」と「新製品開発の試作段階で使う治具」では、設計思想からコスト感まで、全く別物と言えるでしょう。今回は、それぞれの治具の特徴と、目的に合わせた最適な治具選びのポイントについて解説します。

 

・量産用治具に求められるもの:耐久性・スピード・繰り返し精度

 量産ラインで使用される治具は、何千、何万回という繰り返しの使用に耐えうる「耐久性」と、常に一定の高い加工精度を維持し続ける「繰り返し精度」が最も重要です 7。また、サイクルタイムの短縮が至上命題であるため、ワークの取り付け・取り外しが迅速かつ容易に行える「作業効率(スピード)」も厳しく求められます。そのため、堅牢な構造、摩耗しにくい材質、効率的なクランプ機構(エアシリンダーや油圧クランプなど)が採用されることが多く、初期コストは比較的高くなる傾向があります。

 

・試作・開発用治具に求められるもの:柔軟性・スピード・コスト

 一方、新製品の開発段階や試作品製作の過程で使われる治具は、設計変更への「柔軟性」が何よりも優先されます 7。試作段階では、ワークの形状や仕様が頻繁に変わる可能性があるため、治具自体も容易に改造・調整できるような構造や、比較的安価で短納期に製作できることが重視されます。耐久性よりも、変化への対応力とスピード感が求められるため、材質も加工しやすいものが選ばれたり、構造もシンプルなものが採用されたりすることがあります。

 

・設計思想の違い:作り込み vs 変更対応力

 量産用治具は、一度設計が決まれば長期間安定して使用されることを前提に、徹底的に作り込まれます。誤組付けを防ぐ「ポカヨケ」機構などが組み込まれることもあります。対して試作治具は、変更が前提となるため、モジュール構造にしたり、調整可能な部分を多く設けたりするなど、変化に素早く対応できるような設計思想が取り入れられます。

 

・コスト感の違いと投資対効果の考え方

 量産用治具は初期コストが高いものの、大量生産によるスケールメリットで部品1個あたりの治具コストは低減され、長期的なトータルコスト削減に貢献します。試作治具は、初期コストを抑えることが優先され、治具そのものの寿命が短い、あるいは一度きりの使用となるケースも少なくありません。

 

・まとめ:目的に合わせた治具選びが成功の秘訣

このように、量産用治具と試作治具では、求められる特性や設計のポイントが大きく異なります。それぞれの目的や状況を正しく理解し、最適な治具を選定・活用することが、開発期間の短縮、生産性の向上、そしてコスト効率の最大化に繋がるのです。